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何故か英雄

地上に戻った三人は目の前の光景に唖然とする。


夥しい数の魔物の死体、冒険者の亡骸、壊れた内壁、疲れた表情で座り込む大勢の冒険者。


「な、何ッ!?これっ!どうなってんのっ?」


「この数・・・外から、とは考えづらいだろう」


「って事は例のダンジョンから溢れるってヤツか?」


コウスケがロイドに確認を取ろうとしたところで


「誰か出てきたぞッッ!!」


魔方陣から出現し、辺りを窺っていた三人を見つけた冒険者が叫んだ。


その声でこの場にいた全員の視線がコウスケ達三人に集まる。


「ッ!私達?何かしちゃったっ?」


「そりゃあ終わった後にノコノコ出て来たんだ!何を言われるか・・・」


「そうはならないと思うが・・・まぁ、彼が何か教えてくれるだろう」


コウスケとエルネはビビっていたが、ロイドはそれを否定した。


そして、彼が教えてくれると視線を何処かへ向けた。


その視線の先を辿るコウスケとエルネ。


そこには冒険者の群れを割り、こちらに歩いてくる男が一人。


明るい金髪に緩いカール、真っ白な全身鎧に幅の広い両刃剣、背中には鎧と同じ真っ白な大盾を背負っている。


今は全身に返り血を浴び真っ赤に染まってはいるが、強者の雰囲気は感じて取れる。


最早、冒険者なのか騎士なのか怪しい男はコウスケ達の前まで来ると立ち止まる。


それを見たコウスケは話し掛けようと一歩前に出た。


しかし、その男に手で制され話し掛けるのを止める。


男はそのまま何やら魔法を発動した。


身構えそうになったコウスケだったが、それが体に付いた血をキレイにする魔法だと気付きホッとする。


キレイに返り血を落とした男は眩しいほどの白だった。


「私はシャズナブル・F・ホワイト。Sランク冒険者だ。まぁ、Sランクと言っても昇格したばかりだがな。それで・・・君達がこのプレーヌスを攻略した、でいいのかい?」


そう言った。


(シャズナブルって・・・いいのか?ツッコんでいいのかっ?お前は白じゃ無くて赤だろッ!ってツッコんでいいのかッッ!)


思う事は他にも色々あったが、取り敢えず心の中でそう叫ぶコウスケ。


中々答えないコウスケに不思議な顔をするシャズナブル。


その表情に気付いたコウスケは


「あ、はい。そうです」


そう答えた。


「やはりそうか。君達のおかげでこの街は救われた。君達はこの街を救った英雄だ!ここにいる者達を代表して礼を言う」


そう言って頭を下げた。


「・・・あの~、それはどういう・・・」


ダンジョンは攻略したが、地上での戦いには一切参加していないコウスケ達。


そんなコウスケ達が、何故英雄などと持ち上げられているのか分からないコウスケ。


「そうか、地上での事は知らないのだな?私達は溢れ出る大量の魔物にもうダメだと諦めかけていた。その時、突然ダンジョンが消えたのだ。そのおかげで辛くも勝利する事が出来た。君達がダンジョンを消してくれなければ今頃どうなっていたか・・・本当に感謝している」


その説明で合点がいったコウスケ。


「そうだったんですか。攻略は俺達が勝手にやった事ですけど、それが役にたったなら良かったです」


「・・・ところで名前を聞いても?」


「あっ、すいません!俺はコウスケ、こっちがエルネで、こっちがロイドです」


「コウスケ、エルネ、ロイド・・・聞かないな?この国の高ランクは大体知っているが・・・もしかして他国の冒険者なのか?」


コウスケ達を高ランク冒険者と思っているのかシャズナブルはそう聞いた。


その質問に困ったコウスケはエルネとロイドを見る。


しかし、エルネもロイドも、任せたッ!と言わんばかりに遠くを見ている。


(マジかよッ!・・・どうなっても知らねぇぞ?)


そしてコウスケは


「いや~・・・実は、あのぉ~・・・Eランクなんですよねぇ~」


言いにくそうに答えた。


「・・・ハッハッハッ!コウスケ君は面白いな?このプレーヌスがEランクでも攻略出来るのなら、ここに街は出来ていないさっ!・・・それで?本当はどうなんだい?」


笑顔で話していたシャズナブルだったが、後半の質問で表情を険しくさせた。


高ランク冒険者に凄まれ、肩を竦めるコウスケ。


しかし、コウスケの答えは変わらない。


「Eランクです。本当です」


シャンッ ガンッ


シャズナブルは幅広の両刃剣を抜き放ち、地面に突き立てた。


その表情からは怒りが見て取れる。


「同じ冗談では二度は笑えんぞ?これ以上誤魔化すのなら、その実力この身で推し量るまでッ!」


これには流石のコウスケも焦る。


何か証明する方法は無いかと考え


「こ、これならどうですか?」


そう言って魔法鞄からギルドカードを出した。


ギルドカードは偽造不可能の身分証明だ。


「・・・にわかには信じられんが、コレを見てはな・・・疑って悪かった」


絶対の身分証明の威力は抜群だった。


コウスケの言葉を信じたシャズナブルは素直に謝る。


丁度その時だった。


斥候姿の男がシャズナブルに駆け寄ると、耳元で何やら囁きシャズナブルが頷くと駆け戻って行った。


「どうやら今回の戦いでの一番の功労者に、街から褒美が出る様だ。間違いなくそれは君達だろう。私が案内する。行こうか?」


「ちょ、ちょっと待って下さい。それはシャズナブルさんでいいんじゃないですか?俺達はそういうのいいですよ!」


「私が譲られて受けると思うか?」


その言葉にシャズナブルが堅物だと言う事を理解するコウスケ。


(無理!無理っ!俺だけで偉い人の前に出るなんて・・・何とかシャズナブルさんを引きずり込もう!この手のタイプは・・・)


「えぇ~・・・あっ!じゃあ、同じ位の功績って事で一緒に、じゃダメですか?」


姑息な手に打って出るコウスケ。


「・・・コウスケ君は口が上手いな。私も欲しく無い訳では無いからな。いいだろう」


見事釣れた様だ。


「コウスケでいいですよ!にしてもよかったぁ~、俺偉い人の前でどう喋っていいか分かんないんですよ。シャズナブルさんの真似すれば大丈夫ですよね?」


「・・・まさかそれが理由では無いだろうな?」


「まさかっ!それ‘も’理由ですよ」


「やはりコウスケは口が上手いな。」


「それが取り柄みたいなモンですからね。さっ、行きましょう!」


こうして、この街のトップの元へと向かうコウスケ達とシャズナブルだった。


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