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初指名依頼終りょ・・・12

「私からもひとつ宜しいでしょうか?」


話の切れ間を見計らって飲み物を出していた爺が、一通りの給仕を終え口を開く。


三人の前には湯気の立つ飲み物。


小次郎の前には平皿に注がれたミルクが。


勿論鮮魚は出ていない。


爺の手際の良さに顔を顰めるコウスケ。


しかし、そんな事には慣れているハインツ国王とエドは


「何かあるのかい、爺?」


「遠慮は要らんぞ?」


そう答えた。


二人の言葉に浅く頭を下げた爺は


「では。私が‘坊っちゃま’と入城し最初に感じたのは違和感で御座いました」


そう話し始めた。


それを聞いた本来の主であるエドは


「ぼ、坊っちゃま?それってコウスケの事?・・・坊っちゃま・・・」


そう呟き、顔を歪めるコウスケへと半笑いの瞳を向ける。


そんな視線を向けられたコウスケは大袈裟に舌を打って返す。


しかし、一人真剣なハインツ国王は


「違和感?具体的には?」


と、話を進める質問を爺へと返していた。


ハインツ国王の質問に頭を下げた爺は


「クーデターが起きたにしては城外、城内いずれも余りに静かで御座いました。それは平穏と呼べる程に」


頭を下げたままの体勢で答える。


「そうか?俺は追い回されたり、牢にぶち込まれたり、色々物騒な目にあったぞ?」


エドの視線から逃れようとしたのか、爺の話を聞いていたコウスケがそう口を挟んだ。


「へぇ?コウスケ捕まったんだ?その話、後でゆっくり聞かせてもらうよ?」


エドの視線から逃れようと口を出したコウスケだったが、今度はその言葉がエドに捕まる。


コウスケへと笑顔を向けたエドは続けて


「まぁでも、計画的に事を成したと考えれば、早々に混乱が収まったとしても不思議は無いんじゃない?」


と、爺への答えを口にした。


エドの意見を聞いて、ハインツ国王は口元を押さえ考え込む。


コウスケはそれどころでは無かった。


誰も口を開かないのを確認するように少し間を開けた爺は、エド以外の二人へと視線を向けた後で


「そうで御座いましょうか?どんなに迅速に事を収めたとしても、陛下に忠誠を尽くし一人になろうとも抵抗を図った者も居る筈。それが一人や二人の筈はありません。その者達は抗議の声を上げ、集い、最後には武力を持って抵抗した筈です。当然、それを鎮圧するには武力が必要。私の経験では、どんな僅かな武力同士であってもひと度衝突が起これば、どの様な形であれ痕跡が残るもの。破壊の跡、人が傷付いた跡、何よりその場の空気が変わります。しかし、私が訪れた城には、そのどれもが感じられなかったので御座います」


そんな説明をした。


それを聞いたエドは難しい顔をする。


コウスケに至っては、天井へと向けて煙の輪を吐いていた。


すると、考え込んでいたハインツ国王が顔を上げた。


そして、爺へと目を向けると


「まるで、誰も抵抗しなかった様にか?」


そんな問いを口にした。


爺は浅く頭を下げると


「左様で御座います」


そう返す。


「オッサン、人望無かったんだな?」


煙の輪を作りながら、軽い調子でコウスケが言うと


「そんな訳無いだろッ!陛下は国民からも貴族からも信頼が厚かった筈。賢王とも呼ばれていましたよね?」


そうコウスケへと言い返した後で、ハインツ国王へもそう尋ねるエド。


しかし、ハインツ国王が口を開く前に


「でも実際、抵抗の跡は無かった。そうだろ?」


と、コウスケが言った。


コウスケの言葉に


「そんな事・・・あり得ないじゃないか・・・」


そう言ってうつ向くエド。


すると


「そのあり得ない事態が起こったとしたら如何でしょう」


静かにそう言ったのは爺だった。


三人の視線が一斉が爺へと向く。


しかし、その三人の表情にはいずれも疑問符が張り付いていた。


「あり得ねぇのに起こるのか?」


代表する様にコウスケが尋ねる。


爺は三人を見渡すと


「スワン家にお仕えする以前、この様な話を耳に挟んだ覚えが御座います。・・・他国で数千人を対象に精神を操作する魔法が使われた。と」


そんな話をした。


それを聞いたエドは眉間のシワを更に深くして首を傾げるが、コウスケとハインツ国王は何かを考える様な表情に変わる。


「その話は私もどこかで聞いた覚えがあるな?」


そう呟くハインツ国王。


どうやら記憶を探っていた様だ。


残ったコウスケはしばらく考え


「闇属性上級の【籠絡】か?」


そう爺へと尋ねた。


コウスケの言葉を聞いた爺は


「流石で御座います。坊っちゃま」


ニヤリとしてそう答えた。


全ての魔法が使えるコウスケは、頭の中で検索をかけた様だ。


しかし、同時にその効果も調べたコウスケは


「それこそあり得ねぇよ。【籠絡】は単体を対象とする魔法だ。つまりは一度に一人にしか使えねぇ。数千人を一度に操るなんて無理だろ?それじゃ籠絡じゃなくて扇動だろ?」


そう言って爺の言葉を否定した。


しかし爺は


「その通りで御座います。しかし、それを行った魔導師は【籠絡】の魔法を魔方陣に組み直したのです。魔方陣に組み直す事で効果や対象数を変更した。そう考えられております。ただし、後に再現を試みた様ですが成功した者は居ないとか」


そう答えた。


それを聞いたコウスケは視線を落とすと


「成る程・・・複合か多重を使ったのか?」


そう呟く。


そんな様子のコウスケを見た爺は


「おや?坊っちゃまにはお心当たりがお有りの様子」


そう目を細めた。


二人のやり取りを聞いていたハインツ国王は


「・・・可能なのか?」


そうコウスケを見る。


ひとつ頷いたコウスケは


「特殊な方法を使えば出来そう・・・かな?」


と、最後は首を捻る。


ハインツ国王は再び口元に手をやると


「・・・魔法の調子はどうだ?・・・約束は忘れるな」


そう呟いた。


その呟きに、エドは付いて行けずに目を彷徨わせる。


爺は誰にも気付かれぬ程度に笑みを浮かべる。


そしてコウスケは


「一応つながりはするな?」


そう言ってタバコを咥える。


コウスケの言葉に頷いたハインツ国王は


「仮にそのような魔方陣が城の敷地内に設置されていたとしたら、抵抗した跡が見られない説明も付く。実に上手い手だ」


そう言って、最後は感心した様に息をついた。


「そうなりゃ、後はその魔方陣を止めて、目が覚めた奴らの前にオッサンが現れりゃ形勢逆転だな?」


後頭部に手を回したコウスケは、ソファーの背もたれに体を預ける様に倒れるとそう言った。


「しかし一つ問題がある。その魔方陣を見付ける事が出来ても、こちらに魔方陣に詳しい者がいない。魔方陣は下手に触ると暴発すると聞いた事がある。魔方陣学者か・・・誰か当ては無いか?」


難しい顔でそう言ったハインツ国王は、三人へとそう問い掛けた。


ハインツ国王の言葉に、背もたれを利用して腰を伸ばす様な仕草を取っていたコウスケの動きが止まる。


「・・・」


コウスケが黙っていると


「当ては御座いますが遠方故に承知して頂けるか・・・坊っちゃまの転移があるとは言え、先方にも都合があるやもしれません」


一番にそう口にしたのは爺だった。


「そうか・・・」


爺の答えにそう呟くハインツ国王。


「私にはそもそも、魔方陣学者の知り合いは・・・済みません陛下」


そう言って肩を落とすエド。


「いや。気にする事は無い」


そう答えるハインツ国王。


そして、最後にコウスケへと目を向けたハインツ国王は


「・・・どうした、コウスケ?そんな体勢で固まって」


そんな言葉を掛ける。


ゆっくりと体勢を戻したコウスケは


「別に・・・俺もちょっと・・・」


そう言い掛ける。


しかし


「貴様がやれば良いだろう?魔方陣を弄るのは得意じゃろうからな?ワシを呼び出した時のように、な?」


そう小次郎が、惚けようとしていたコウスケへとニヤけながら言った。


ローテーブルの上の小次郎を睨み付けたコウスケは


「リリィちゃん?少し黙ろうか?」


そう凄むが


「何ッ!?コウスケは魔方陣に明るいのか?・・・ひとつ頼まれてくれないだろうか?」


ハインツ国王がそう言って身を乗り出した。


体を引いたコウスケは


「あぁ~あ・・・」


そう呟くのだった。


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