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固唾を飲んでハインツ国王の言葉を待つコウスケとエド。


すると、ハインツ国王はコウスケへと目を向け


「コウスケ。お前がちょっと行って収めて来てはくれんか?」


真面目な顔で静かに言った。


それをコウスケの隣で聞いていたエドは、目を見開いて驚くが


「・・・知るか。自分で行け」


ハインツ国王の目を真っ直ぐに見返しながらのコウスケのその言葉に、更に目を見開いた。


驚愕するエドをよそに、しばらく睨み合う二人。


すると


「・・・やはり断られたか」


ため息と共に体をソファーの背もたれへと沈ませたハインツ国王がそう漏らした。


予想はしていた様だ。


「何で俺がそんな面倒な事に首を突っ込まにゃいかんのだ」


そう言い放ったコウスケは、眉を寄せて取り出したタバコを咥える。


「おいおい。一応はコウスケもこの国の貴族であろう?」


そう言って眉を困らせるハインツ国王。


しかし続けて


「まぁ爵位を受ける時の条件を聞いた時から、頼み事は聞いてはくれぬだろうと思ってはいたがな」


そう言って、あっさりと諦めるハインツ国王。


「まさかそれが‘考え’なんて言わねぇだろうな?」


鼻から煙を吹き出したコウスケが、嫌味たらしくそう言えば


「当然だ。単に、コウスケが首を縦に振ってくれれば楽だろう。程度に期待して聞いてみただけだ」


小次郎の首元をムニムニと揉みながら、そちらに目を落としそう言うハインツ国王。


「お聞かせ願えますか?」


エドがそう尋ねる。


エドの言葉に顔を上げたハインツ国王は


「なに、コウスケには断られてしまったが、この国には他にも力を持った者達がいる。その者達の中には国の為に働こうと言う者もいるだろう。その者達に依頼を出そうと思う」


そうコウスケを見ながら答えた。


「こっち見んな!」


そう顔を顰めるコウスケに、僅かに口角を上げた表情を向けるハインツ国王。


「それはつまり、冒険者という事ですか?」


真面目に聞いているエドは、そんな質問をする。


「そうだ。取り分け高ランクと呼ばれる者達にな。私は魔獣の件でのコウスケを見てつくづく思い知った。鍛練を積んだ軍でも敵わぬ相手を、一人で倒してしまう様な者達が居る事をな」


そう言って天を仰ぐハインツ国王。


「その様な力を持つ者ならば、今回の様な事も容易に解決してくれよう。罪の無い国民や、従っているだけの軍人を極力傷つけるな。等という無茶も聞いてくれるかもしれん。国から出している指名依頼を積極的に受けてくれる冒険者の名は、ある程度頭に入っているからな?」


ハインツ国王は更に、頷きながらそう続けた。


「と言う事は、陛下はその依頼を出すために、引き返す事無くこちらへ?」


そう問うエド。


すると、ハインツ国王は


「いや、依頼を出すだけならば途中のギルドで良かったのだがな・・・」


そう言葉を濁した。


その言葉に首を傾げたエドは


「では・・・どの様な理由で?」


そう尋ねる。


その言葉に、頬を指で掻いたハインツ国王は


「・・・セレーナもノーブもこの日を楽しみにしていたのでな?」


そう答えた。


それを聞いたエドは、僅かに表情をピク付かせるに留めたが、その隣のコウスケは


「ただの親バカじゃねぇか」


と、遠慮無く呟いていた。


「コウスケには親の気持ちなど分かるまい」


コウスケの呟きに、そう反論するハインツ国王。


エドはただ苦笑いを浮かべている。


「まっ、解決出来るヤツに丸投げして解決すんならそれで良いんじゃね?」


コウスケは隣のエドを横目で見ながらそう言った。


コウスケの言葉に、引き吊った笑みを浮かべるエド。


「さっさと依頼書出しちまえば、後はこの街で遊んで待ってるだけだからな?」


そう言葉を続けるコウスケ。


その言葉にハインツ国王は


「流石に遊んで待っている訳には行かないが、態々ここまで来たのだ。確りと視察はしていくつもりだ」


そう答えた。


「‘視察’ねぇ・・・」


含みを持たせた言葉を呟くコウスケ。




一通りの話を終えたハインツ国王は、二人の前で紙にペンを走らせる。


依頼書を書いているのだ。


書き終えた依頼書を折り畳み、封筒へと仕舞ったハインツ国王は


「ひとつコウスケに頼みがあるのだが?」


依頼書を仕舞った封筒に蝋を垂らしながらそう言った。


ハインツ国王の行動を興味深げに眺めていたコウスケは、その言葉に顔を顰める。


「そんな顔をするな。面倒事では無いさ」


コウスケの表情を見たハインツ国王はそう言って笑う。


「何だよ?」


苦い顔をしたコウスケは、渋々といった様子でそう尋ねた。


ハインツ国王は、垂らした蝋に懐から取り出した物を押し付けると、その封筒を持ち上げて


「これをギルドまで届けてくれ」


そう言って、コウスケへと依頼書が入った封筒を差し出した。


その封筒を見下ろすコウスケ。


そこには、コウスケも見た覚えのある封蝋が。


しばらくその封筒をじっと見ていたコウスケだったが


「まぁ、それくらいなら?」


そう答え、封筒を仕舞う。


コウスケの言葉で一旦の終わりを見たのか、場の雰囲気は和やかになり雑談が始まる。


プレーヌスの様子や首都の様子、冒険者の話等をして、その流れでハインツ国王がコウスケへ


「指名依頼はどうだ?冒険者としては活動をしていないと言う事だったが・・・慣れたか?」


そんな質問を投げた。


コウスケは


「たまに確認してっけど、まだ一回も受けた事ねぇよ?だって来ねぇもん」


二本目のタバコの煙を吐き出しながら、気だるげに答える。


「そうなのか?あれから随分と経つ。そろそろ依頼が来てもおかしくは無いぞ?」


ハインツ国王は、未だ膝の上に乗せたままの小次郎を撫でながらそう言った。


「今首都は大変な事になってんだろ?来る訳ねぇよ」


そう言って肩を竦めるコウスケだったが


「いや。国の機能を止める程馬鹿では無いだろう。その辺は維持している筈だ」


小次郎から目を離さずに答えるハインツ国王。


「マジかよ・・・」


そう呟いて、一度天を仰いだコウスケは腰を上げた。


そんなコウスケを目で追うハインツ国王、エド、小次郎。


そんな六つの目を見渡したコウスケは


「どうせコレもあるし、ちょっと行ってくるわ。ついでに指名依頼の確認も」


ハインツ国王から預かった依頼書をヒラヒラと振りそう言う。


コウスケの言葉に答える者はいなかったが、動きを見せた者が。


「そ、そうか!貴様が行くのならワシも行かねばなッ!使い魔じゃからのう」


そう言って、ハインツ国王の手から逃れる様に飛び出した小次郎だった。


小次郎は、立ち上がったコウスケの背中をよじ登ると、定位置の肩へと腰を下ろし


「よくもワシを差し出してくれたな?覚えておれよ?」


そうコウスケの耳元で低く唸った。


それを聞いたコウスケは、しばらく突っ立っていたが


「・・・ギルドはどっちだったっけか?」


そう惚ける様な言葉を呟き、部屋を出るのだった。


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