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クーデターの詳細

愛くるしい姿の黒猫が、自然の摂理に反して喋り出すと皆同じ反応を見せる。


例えそれが、酷く横柄な言葉であっても。


一国の王であってもそれは変わらない様で、言葉を発した小次郎へハインツ国王は目的を忘れたかの様に熱い視線を送っていた。


「おぉ・・・おぉぉ!」


そんな言葉を溢しながら、小次郎へと手を伸ばすハインツ国王。


しかし、その手は


「何じゃ?この気持ちの悪い男は?」


そんな言葉と共に、可愛らしい肉球に叩き落とされる。


小次郎の言動は不敬極まるものだったが、ハインツ国王は機嫌を損ねるどころか、叩かれた手を嬉しそうに見詰めると再び小次郎へと伸ばす。


そんな事が数度繰り返され、いよいよコウスケが


「もぐら叩きかッ!」


そんなツッコみを入れたそう表情を見せた。


もしかするとワニの方だったかもしれないが。


しかし、コウスケが口を開く前に、隣のエドが肘でコウスケを小突く。


じゃれ合うおっさんと黒猫から目を離したコウスケは、隣に腰を下ろすエドへと目を移した。


エドへと顔を向けたコウスケは、そのエドの言葉を待つが


「・・・」


予想に反して、エドは口を開かない。


そんなエドに眉を寄せるコウスケ。


エドは黙ったまま、何かを伝える様に目や顔を僅かに動かしていた。


それに気づいたコウスケは、エドの動きの意味を読み解く。


直ぐ様エドの‘提案’を読み取ったコウスケは、確認する様に同じく動きだけで答えた。


コウスケの確認で動きを止めるエド。


無言で視線を合わせた二人は、何らかの合意に至ったのかひとつ頷き合う。


早くこの場から解放されたいコウスケと、ハインツ国王から詳しく話を聞きたいエド。


目的は違えど、話が進まない事にはどちらも叶わない。


早く話を進めたいという点で一致した二人は、まるで魔法の様に意思疏通を計ったのだ。


因みに、念話の魔道具は使ってはいない。




「うむ。クーデターの話は本当だ」


正気に戻ったハインツ国王がそう答えた。


苦渋の決断をしたコウスケとエドだったが、ハインツ国王が本題に戻った事に胸を撫で下ろす。


しかし、二人は話を進める事に成功したにも関わらず苦笑いを浮かべていた。


何故ならば、正気へと戻ったハインツ国王の膝の上から、二人へと恨めしい視線が注がれているからだ。


その視線の主は、背中をハインツ国王に撫で回されている。


((ゴメン。小次郎・・・))


そう内心で手を合わせる二人。


しかし、突き刺さる様な視線は止む事は無かった。


「お戻りになられなくて良かったのですか?早急に解決しなければ、内戦に発展しかねないのでは?」


一旦生け贄の事は忘れる事にしたのか、切り替えた様に口を開いたエド。


「そうしたいのは山々なのだがな。今回のプレーヌス訪問は私が急遽言い出した事なのだ。軍からの護衛の用意が間に合わないと騒ぐ臣下を押し切って、近衛隊の半数だけを護衛に付け首都を出たのだが・・・それが仇になった」


そう答えたハインツ国王は、ため息をつく。


「首都を取り戻すには兵力が足りないと言う事ですか?」


深刻な表情で小次郎を撫で回すハインツ国王へ、そう尋ねるエド。


ハインツ国王はエドの言葉を肯定する様に頷いた。


そんなハインツ国王へ


「城ほっぽり出して遊びに出るからだろ?」


そんな言葉を、呆れた表情を作ったコウスケが漏らす。


その言葉に、エドは目をつり上げ、小次郎は頷いていたが、ハインツ国王は苦笑いを浮かべ


「返す言葉も無いな」


そう答えた。


「それにしても、誰がそんなバカ仕出かしたんだ?俺は腹違いの兄弟か、頭の悪い貴族共に賭けてんだが?」


冗談めかして言うコウスケ。


「コ、コウスケッ!?」


コウスケの言葉を聞いたエドは、焦った様にそう声を上げる。


しかしハインツ国王は


「ふん。中々に鋭いな?賭けはコウスケの勝ちだろう」


そう答えるハインツ国王。


その言葉に、驚いた様にハインツ国王へと目を向けたエドは


「エッ・・・と言う事は・・・」


そう呟く。


「うむ。腹違いでは無いが、私の弟グテイを一部の貴族達が担ぎ上げた様だな?」


ハインツ国王はそう答えた。


(ウワァ・・・適当に言っただけだったんだけど・・・ってかグテイって。もうちょっと名前選べよ)


顔を引き吊らせるコウスケ。


「ただ、解せぬ事もある」


顔を顰めるコウスケを見たハインツ国王は、そう言って顎を撫でた。


「解せぬ事、ですか?」


ハインツ国王の言葉に眉を寄せたエドは、そう聞き返す。


「うむ。一部の貴族達が私に不満を持っていた事は以前から知って居った。其奴等がグテイを担ぎ出すのも分かる。私の弟であるからな?私以外で王位を主張出来る者はグテイしかおらん」


そんな説明をするハインツ国王へ


「どこが解せないんだ?よくあるクーデターの流れだろ?」


分からないという顔で尋ねるコウスケ。


するとハインツ国王は


「私の弟グテイは、王族には珍しく王位への野心や欲という物が全く無いヤツでな。日がな一日花を眺めたり読書をしたりと、良く言えば穏やかな悪く言えば男らしく無いヤツなのだ。しかしそれ故に、グテイに限っては私に反旗を翻す心配は無いと思っておったのだが・・・」


そう言って視線を落とす。


それを聞いたコウスケは


「クソッ!金持ちニートかッ!!・・・んでも、それのどこが分かんねぇんだ?どっちかってぇと分かり易いだろ?気弱な弟にある事無い事吹き込んで、貴族共が丸め込んだんだろ?そんなヤツなら後で操り人形にするのも楽そうだしな?」


悪態を呟いた後、そう言葉を続けた。


しかしハインツ国王は


「確かにグテイは担ぎ上げてしまえばその後は楽だろうが・・・そもそも王族以外と関わらずに暮らしていたグテイは、貴族達とは全くと言っていい程関わりが無い。確かにグテイは穏やかな性格だが、面識の無い者の言葉に丸め込まれる程迂闊でも無いのだ。のらりくらりとしていたいだけでその実、頭は悪くないと私は睨んでいるのだがな」


そう言って表情を曇らせた。


(引きこもりか?・・・いや、最早これは幻の‘高等遊民’ってやつか?しかも血統まで折り紙付きかよ)


そんな事を考えたコウスケは、呆れ半分羨ましさ半分といった心境になった。


「成る程。では陛下は、そんな弟君がクーデターの旗頭になっている事に何か理由があると?」


不思議な表情をしているコウスケの隣で、エドがそんな質問を投げ掛ける。


ハインツ国王はエドの言葉に、眉を寄せて頷いた。


「王族以外と関わりが無いって言ってたけど、王族となら普通に関わってたのか?」


表情を戻したコウスケが、今度は質問を投げた。


その問いに


「うむ。私は当然だが、今日連れて来ている三女のセレーナと末っ子のノーブ、それから今は城にいる私の妻アリシアとは普通に関わっておる。使用人すら寄せ付けないグテイだが、子供達には勉強を教えてみたり、読書に熱中して部屋から出てこないと使用人が困っていてもアリシアが呼びに行けば出てきたりと、一様家族という者には想いがある様に見える」


そう言って頷くハインツ国王。


その言葉に、エドも理解を示す様に何度も頷いていた。


しかし


「でもそれって・・・家族の言葉なら聞くって事にもなるよな?頭は悪くねぇって話だから、無茶苦茶な話なら乗らねぇかもだけど、そのグテイって弟が納得出来る様な話だったら・・・」


そう言って、エドとハインツ国王を見やるコウスケ。


それを聞いたエドは、顎に手を当てると


「成る程!・・・ってちょっと待ってよコウスケ!その流れから言うと・・・」


納得しかける。


しかし、直ぐにそれが意味する事に気づき、慌ててコウスケを見る。


そこへハインツ国王も


「アリシアが関わっていると?それは無い!」


途中までだったエドの言葉を引き継ぐ様に言った後、それを否定した。


「いや。可能性の話だろ?そうだ!って言ってる訳じゃねぇって。でも、もしそうならグテイってヤツも貴族共の話に耳を貸すんじゃねぇかと思うんだけどな?」


そう言って、後頭部を掻くコウスケ。


「アリシアがグテイと貴族達に渡を付けた。そう言いたいのか?」


やや視線を険しくしたハインツ国王が、頭を掻くコウスケへそう返す。


コウスケは


「それなら‘解せない’部分にも筋が通るだろ?現に嫁さんは城に居るんだし?」


ハインツ国王の険しい視線にも臆する事なく答えた。


僅かな苛立ちを、小次郎を撫で回す手を早める事で表現するハインツ国王。


「そもそも、アリシアには私を裏切る理由が無い!」


そう声を上げるハインツ国王。


小次郎の首は大きく揺れていた。


「そうだよ!アリシア様は今日来ているノーブ王子の母親なんだよ?このまま行けば陛下の後を継いで王位に就く事は間違い無い。でも、もしここで国王が変わってしまったら、ノーブ王子が王位に就くのが遠退く事になる。クーデターを止める事はあっても、それに協力するなんて事考えられないよ?」


ハインツ国王が言い切った理由を説明する様に、コウスケへと説明するエド。


それを聞いたコウスケは、難しい顔で眉を寄せるが反論はしなかった。


コウスケが黙ったままなのを確認したエドは、コウスケから視線を切るとハインツ国王へと移す。


「陛下はどうなされるおつもりですか?」


そんな事を尋ねた。


「勿論考えはある」


エドの問いに、そうはっきりと答えるハインツ国王。


その言葉に、真剣な目を向けるコウスケとエド。


小次郎だけがこの場で緊張感も無く、あかべこの様に揺れていた。


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