覚書/教養小説とアニメ『無職転生』
トラックに撥ねられた主人公が、異世界転生して冒険者になる。――型を作った本作は、小説投稿サイト「小説家になろう!」で2015年まで連載。当時のサイト登録者数50万人の頂点に君臨していた。
既視感のある近代文学を2つ挙げてみた。
理不尽な孫の手 著 『無職転生~異世界行ったら本気出す』:なろう小説→漫画→アニメ
酷い虐めを受け引き籠もりになったクズのオッサンが、自動車事故で異世界に転生。膨大な魔力量を見に帯びているため本来死産になるはずだった子に魂が宿り、異世界・騎士夫妻の子として転生する。
ルーデウスと名付けられた少年は、前世での失敗を胸に刻みつつ、早くから努力精進、幸福な幼少期を過ごし、後に妻となる三人の美少女に出会い、それぞれ高め合ってゆくことになる。転機となる大災害を経て、離散した家族を捜索しつつ、特待生として学校に招かれ、世界の秘密を学び、結婚する。やがて、祖国アスラ王国の動乱の渦中にいたアリエル王女に加担し、王位に就ける。
その後、やがてくる災厄の諸元凶であるヒトガミ、ラプラスと、人類が決戦をする準備を整えつつ、家族に見守られて大往生に至る。
――教養小説の系譜にある作品だ。評論家の岡田斗司夫氏をして、アニメ版は、「原作以上の出来栄え」でエモイとのこと。ただし、本作はR15男性向けなので、息抜き場面でのギャグが性的で、倫理観の異なる異世界を象徴する主人公家族の「一夫多妻制」や、異母妹と長男の「近親婚」肯定が、女性層に忌避される要因となっている。
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教養小説は、自己形成小説、成長小説とも呼ばれている。『無職転生』が影響を受けていると思われる作品には次の二作品が挙げられる。
・トルストイ『戦争と平和』:ナポレオン戦争期のロシア帝国。クズな妾の子ピエールが、研鑽を積んで皆に尊敬される紳士に成長。本作は、『人間の絆』を著した医師にしてMI6エージェントでもある文豪、モームが、「世界十大小説」に推した作品としても知られている。
・ロラン『ジャン・クリストフ』:ベートーベンがモデル。ドイツ領邦国家の音楽家家系に生まれた我儘息子ジャンが、素敵な人達・恋人達に出会って人生の悲しみと喜びの機微を知って芸術を昇華させ、大往生に至る。ノーベル文学賞受賞作だ。
ノート20230825




