読書/コナン・ドイル 著 シャーロック・ホームズ 『同一人物』(短編)
『花婿失踪事件』の邦題で表記されることもある。
ワトソンが結婚してしばらくたったころの事件。暇をもてあましていたホームズのところへ若い娘メアリー・サザーランドが事件の依頼にやってきた。
メアリーは、タイプライターの稼ぎのほかに、伯父の遺産であるニュージーランド公債配当・年間100ポンドを支給されていて小金持ちだった。そんな彼女は、母親と継父のウィンディバンクと、三人で生活していた。母と継父は年の差夫婦で、継父はメアリより五歳年長なだけだ。
家長ウィンディバンクは、継子メアリの恋愛を邪魔していたが、メアリが婚期を逃しそうになったころ、彼女が舞踏会で、某社会計係だというホズマー・エンジェルという人物と知り合って婚約。家長は暗に同意した様子だった。エンジェルは会社に宿泊しており、手紙の宛先は郵便局私書箱になっていた。メアリが会社名を聞いても教えない。しかも彼からの返信はいつもタイプされたものだった。
家長ウィンディバンクが、所用でフランスへ行くと、その隙に、メアリはエンジェルと結婚式を挙げようと画策。ところが、式当日、メアリが母親と教会に行くと、花婿が現れない。
そこでホームズに依頼にきたというわけだ。
ホームズは、花嫁メアリから預かっている花婿ホズマー・エンジェルからの返信四通と、さらに手に入れた継父ウィンディバンクの手紙を比較。特定タイプ文字のかけ方・かすれ具合から同一タイプライター機種であることを確認。失踪した花婿が、家長と同一人物であると結論付けた。
なぜ家長ウィンディバンクがそんなことをしたのか。動機についてホームズは次にように推理した。
家長ウィンディバンクは、継子メアリーが結婚すると、彼女の収入がなくなるため、異性との交際を禁じてきたが、限界に達した。そこで彼は妻と共謀して一芝居打つ。まず変装して、適齢期男性ホズマー・エンジェルとしてメアリの前に現れ、婚約にこぎつける。次にフランスへ渡航。その留守中に、メアリと結婚式だったが失踪ドタキャンすることで、婚期を逃させてやろうと目論んだ。
ホームズ部屋に家長を呼んで、問い詰めると、彼は冗談だったと言い訳するので、探偵は鞭打ちのリンチにしてやると叱る。その権幕に堪らず彼は逃げ去った。
――真相を知らされたメアリは、母と継父を勘当したに違いない。
ノート20211116




