↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カエルの為にそれは在る  作者: オイペン19世
2章 仲間との出会い
66/68

平野にて


オーク軍の軍勢が、国軍の精兵を破り、1つの街を呑み込み、尚も進軍中である。その報は王国に衝撃を齎した。


王都では、早速亜人や商人、低級貴族達がこぞって王都を脱出。混乱に乗じた物盗りや、強盗の類が頻発。犯罪が横行している。


国軍は先の敗戦の報を受け、王都での籠城を決意。30万もの大軍を擁しながら、立て篭もりの様相を呈してきた。


事態を重く見た各領主は、それぞれ筆頭冒険者や衛兵団などの戦力を割き、王都での戦いへ向け、出立。


カエル達にも同様に召集がかかった。


この街からの招集者は先の戦で際立った戦果をみせた

ジャニス、コッカス、カエル、キティちゃん、レディローズの面々と、先の戦で上級へと昇格した冒険者達で構成された。


「じゃあ〜行くよ〜」

気だるそうなジャニスの声が響く


「やる気出して姐さん!」

「いよっ!リーダー!」

「ナイスバルク!」


リーダーに任命されたのは、ジャニスであった。ゴードン、グルガンの街を代表する2人を立て続けに失い(グルガンは負傷だが)、巡り巡ってジャニスへと回ってきたのだ。


「だってさー。他に誰か居るじゃーん。この街出身の冒険者がさー。アタシリーダー向いてないしさー。キティちゃんとかでいいじゃんー。地元の名士でしょー」


明らかにダラけた様子で、ジャニスが言う。


「わたくし?わたくしでもよろしくってよ?では、オークは私が相手しますので、皆さんはオーク以外を....」


((((オーク以外いねえよ!))))


という皆の心の叫びは、敢えて誰も言わず、心の中にしまい込まれた。代わりに縋るような視線がジャニスへと集中する。


「チッ!しょうがないね...しゅっぱーつ」


こうしてやる気の無いリーダーと、その一行が、王都への救援部隊として発することとなった。目指すは王都の前に広がる肥沃で広大なラーヴァ平野。


おそらく開戦の場所となるだろうとみられていた。


ラーヴァ平野までは5日ほどの旅程である。移動には、バロヴォアラボス家が所有する、竜車と呼ばれる亜竜がひく馬車のようなものが使われた。


「よろしくお願いいたしますわね。『オーキッシュ』」


「グルォロロロ」

喉を鳴らしてオーキッシュと呼ばれた亜竜が答える。後ろに乗った面々は、もはや名前にはツッコまない。


速度は馬車に劣る。しかし2日ほど走り続けられる事、また中級下位程度の魔物であれば、亜竜を恐れる為、魔物避けとしても機能する。高価な品ではあるが、貴族達の長旅には好んで使用されている。


「お金持ちっていいね!」

「私達もアンタが実験とやらでお金一杯使わなければ、そこそこ持ってるはずなんだけどね」

「激しく同意」

「いやー、そんな事ないでしょ!...ないよね?」


3人娘はいつもと変わらないようだ。


しかし、皆少なからず緊張の面持ちでいる。筆頭冒険者であったグルガンと、リーダーを務めていたゴードンの不在。少なからず精神的な影響は出ていた。


チラチラと皆の顔色を伺っていたジャニスであったが、ふとカエルの方をみると、何やら耳打ちしてきた。


コクリとカエルは頷き、馬車の外へ単身飛び出すと、そのまま帰って来る事はなかった。


「姐さん。カエルっちどこ行ったの?」

「内緒さ」

ココットの問いに、ニヤリと笑ってジャニスは応える。それだけでココットは、カエルがどこに行ったかは、大体の想像がついた。



その夜はカエルが獲ってきた、周辺の美味とされる魔物達が所狭しと並べられ、気落ちしていた冒険者達は驚き、その味に舌鼓を打った。


いつのまにか積み込まれていた酒樽で『出立式』と称した宴が催され、冒険者達は大いに騒ぎ、打ち解けた。



旅程の5日目


ラーヴァ平野を目前にし、ジャニスはカエルに偵察を頼んだ。


「どうも、イヤな予感がするのさ。ピリピリとヒリつくような、何かを感じてね」


偵察の命を受けたカエルは先行し、ラーヴァ平野を見下ろす丘へと辿り着いた。


「こりゃどういう事じゃ...」


眼下の光景を見たベロが驚き、呆然と呟く。ベロが驚くのも無理はない。そこにはオークの大軍勢が展開されているはずだったのだ。



やがて、竜車も後から追いつき、ジャニスが竜車から飛び出してくる。


「おいおいどうしたんだい?アタシは偵察を頼んだんだけどね?報告に戻ってこないから心配したよ」


しかし、どうもカエルの様子がおかしい。彼は石のように固まり、その場に立ち尽くしているのだ。


心配したレディローズの面々も、駆けてくる。カエルの様子を見たココットが、慌てた様子で駆け寄りながら、薬袋を探っている。


「ココット、どうしたんだい!?」

慌てるココットを見て、ジャニスが声をかけた。


「あれ『麻痺』状態だよ!」

「うそっ!?」


ジャニス達が慌てて駆け寄り、ココットはカエルの治療にあたる。ジャニス達はカエルの様子を横目に、ラーヴァ平野へと目を向ける。




そこに広がっていたのは、信じられない光景だった。15万とも伝えられたオーク軍の大軍勢が、その『死骸』が平野を埋め尽くすように一面を覆っていたのだ。


戦場を見渡していたジャニスの視点が一点で止まる。そこに居たのは、巨大な蛇。王国東部の沼地に生息すると言われる伝説の生物。


「ザルティスだわ!」

アヴァが驚愕の声を上げる。


王国を主戦場とする冒険者であれば、その名は必ず耳にする。蠱毒の城と、あの沼地には近寄ってはならない。そこは彼らの狩場なのだから。


その伝説の生物が、オーク達を蹂躙しているのだ。


「あの忌々しい蛇め、戦いながら横目でワシらに邪視をかけてきおった。以前のワシであれば、あのような小細工にはかからんものを...」

ココットの薬で麻痺状態を脱したベロが、恨めしそうに話す。


「ザルティスが、どうしてオーク軍と敵対しているんだろう?沼地に踏み入れた訳でもないのに」


「何か理由があるんじゃ。あの『神』に不都合な理由が。邪魔してやりたいのう」


皆が驚愕で立ち尽くし、ザワザワと騒ぐ中にあって、一際静かな人物が一人。


「ジャニス?どうしたの?」

彼女は、ザルティスの方を見つめ、わなわなと手を震わせている。


「...ようやく見つけたのさ。アタシが追い求めてるものを」


「追い求めているもの?」


そこまで言うと、ジャニスは丘を駆け下りていく。鬼気迫った表情を見て、慌ててカエルも後を追う。


「どうしたのジャニス!まさかザルティスに立ち向かうつもり?」


「必要とあらば、ね!アタシは、それよりもザルティスの横で暴れてる『アイツ』に用があるのさ!」


「横?」


カエルの視力はお世辞にも良くは無い。亜人化して、幾らかマシにはなったものの、魔物時代と大して変わりはない。


しかし、確かにザルティスの横には、火花のようなものが飛んでいる気がした。


「誰なの!?知り合い?」


カエルの問いに、ジャニスは顔を向け、ニッと口の端を上げた。


「アタシの旦那さんさ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。