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カエルの為にそれは在る  作者: オイペン19世
2章 仲間との出会い
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初めてのパーティ


「ゲロゲロッ」


穴から顔を出し、朝日を拝む。

昨夜は、アッシュ邸の軒先に、魔法で穴を掘り寝させてもらったのが昨夜のことだ。


「...ヌシ。なにゆえ今鳴いた?」


「いや、たまには鳴いておかないと、なんか自分がカエルって忘れそうで」


二足歩行になったせいか、人間に馴染みすぎて困る。


「...穴ぐらで寝る人間は、おらんじゃろ?ほれ、周りを見てみぃ」


「周り?」


周りを見てみると、住民たちが、驚いた顔でコチラを見ていた。


突然大きなカエルの亜人が顔を出してゲロゲロ言うものだから、当然衆目の視線は集まる。


「...失礼しました」


周囲に頭を下げて回る。


「お前は何をしてるんだ?」


後ろから声がしたため振り返ると、アッシュが立っていた。


「人の家の前で、あまり騒ぎは起こして欲しく無いな...それはさておき、昨日の約束を果たそうか」


昨日、お礼をしたい、と言うアッシュに甘えて、酒場で仕事の依頼の斡旋をして欲しいとお願いした。


登録したての冒険者には、簡単な依頼しか回っては来ない。


だが、例外は存在する。

高位の冒険者からの紹介である。


飛び級的に、実力に見合った依頼を受け、達成すれば、依頼に見合った実力の冒険者であると認められるのである。


「よろしく。早速今からいいかな?」


「あぁ。構わん。行こう。ヒルダ行ってくる!」


「行ってらっしゃいアナタ!」


ヒルダを抱き寄せ口付けするアッシュ。ヒルダも「もう、朝からやめてよ」と言いながらも、悪い感情は抱いていないようだ。


(穴ぐらで寝て正解だったようだ)

10年の時間を昨夜埋めたのだろう。

2人の首元には赤い印がついていた。




アッシュを伴って、酒場に入る。


筆頭冒険者だけあり、アッシュは自然と視線を集めた。オマケに、カエルも横に並んで歩いているのだ。


「おいおいまさか、アッシュさん、あの亜人とチーム組んだのか?」

「いや、そりゃないだろ。一匹狼のアッシュさんが」

「でも、昨日の騒動もあるしな」


と、周囲がヒソヒソと話している。


2人は、その喧騒の中を酒場の主人の前まで進みでた。


「マスター。今ある依頼で、1番難しい依頼を、このカエルに受けさせたい。何か無いか?」


その瞬間、周囲のザワつきは最高潮に達した。


「おいおいアッシュさん正気か?」

「幾ら実力者でも、ルーキーだぜ」

「ワンハンドも着いて行くんじゃない?」


周囲が静寂になるのを待つように、酒場の主人は、ゴソゴソと依頼を探す。


「一番難しい依頼、か。今あるのは、中級上位の依頼くらいしかないな。しかも、パーティ単位の依頼だ」


「パーティ単位っていうのは?」


カエルが疑問を口にする。


「パーティじゃないと受けられない依頼さ。筆頭のオレなら特例で受けられるが、今のアンタじゃ、受けられないな」


「...そうか」


カエルがガックリと肩を落とす。


「...もう一個下の依頼にするか?一個下だと中級下位まで落ちるが」


カエルは顔を上げる。

下級下位であるカエルには、中級下位でも、十分な飛び級である。


「じゃあ、それで...」


とその時、酒場の床にトトトッと足音が響き渡った。


「ちょーっと待ったー!!その依頼!!アタシが受ける受ける!」


やたらと元気そうな女性が、私達の間に割り込んだ。見ると、アッシュの事について、色々と教えてくれた女性冒険者だった。


「...ココットか。中級下位の依頼は、中級上位のお前達には簡単過ぎるだろ?今は、この亜人に話してんだ。大人しくしてな」


酒場の主人が、シッシッと手でココットと呼ばれた女性を追い払おうとする。


「チッチッチッチッ...」


ニヤニヤと笑いながら、指を振るココット。


「アタシが言ってるのは一つ前の依頼さっ!パーティで受けるんだよね!!そこのカエルさん入れて、アタシのパーティで受けるって言ってんの!」


その言葉に、ギョッとしたのは、アッシュと私、それに酒場の主人。だが、それ以上に周囲が騒ぎ出す。


「あっ!!ココットてめぇ!しれっと勧誘する気だろう!」

「きたねぇぞ!抜け駆けか!」

「ルール違反だぞ!横暴だぞ!本人の意思を無視して決めてるじゃねぇか!」



ギャーギャーと周囲が騒ぐ中、短いスカートを翻して、ココットがクルリとカエルに振り向く。


「カエルさん!いいでしょっ!?アッシュさんの件もあるしさっ!」


頬に指を当て、首をかしげる仕草をするココット。どうやら、自身の容姿に自信があるのか、それとも天然なのか。


「コイツは天然だよ」


心を読んだように、アッシュが横合いから声を掛けてくる。


「オレも何度か、無理矢理言いくるめられて、パーティを組んだ経験がある...」


遠い目をしながら、アッシュが言う。何があったんだアッシュ...。



「まあ、別に私は困らないから良いよ。よろしく」


「ウッソだろオイ...」

「男だったら必ず入りたいチームNo. 1だぜ...」

「あの野郎、羨ましいな」

「いや、待て。メスの可能性が...」


周囲が好き勝手に言っているのを尻目に、ココットは、カエルの腕を引っ張り連れて行く。


「頑張れよ...色々世話になった」


そうアッシュは背中越しに言った。


「頑張るよ。奥さんと仲良くね」


互いに背中越しに手を挙げ、挨拶を交わす。


(彼とも色々あったけど、良い出会いだった)




腕を引っ張られて行った先に、4人がけの机がある。


黙々と肉を貪っている女性と、こちらを向いて、頬杖をついて笑っている女性。どうやら、この2人がパーティのメンバーらしい。


「紹介するねっ!まず、手前のニヤニヤした気味悪いのが、アヴァ。腕利きのスカウト。武器は弓と短剣。役割は斥候と、罠の解除なんかをやってくれてる」


『アヴァ』と呼ばれた女性は、にこやかにコチラに手を振ってくる。


「どーも。ココットに捕まるなんて、災難ね亜人さん。アナタ凄い腕だって聞いたし、楽しみだわ」



「続きましてー!こっちも見ずに、お肉に食らいついてる子が、マデリン。小柄だけど、ウチの自慢のディフェンダー。武器は、シミターと短剣の二刀流。あんまり喋らない子だけど、仲良くしてあげてね」


マデリンと呼ばれた小さな女性は、チラリとコチラを見ると、一言だけ「ヨロシク」と告げ、肉に再度かぶりついた。


「そっしってっ!大トリは私!世紀の美少女ココットちゃん!職業は、アルケミスト!武器は錫杖!薬作ったり、ちょっとだけ魔法使ったりしまーす!」


カエルはココットをマジマジと見る。

「...世紀の美少女?」


たしかに容姿は整っているし、黙っていれば、間違いなく美少女なのだが、自ら言うと...。


「あー...ほっといてあげて。この娘病気なの。目の。鏡が歪んで見えるの」


「アヴァったら、ひっどーい!美少女なのは本当なんだから、いいじゃん!」


側で聞いていたであろうマデリンは、黙々と肉を食っていた手を離し「寝言は寝て言え」と小声で呟いて、また肉にかぶりついた。


(騒がしいけど、仲の良いパーティのようだ)


「私はカエル。最近、魔物から進化して亜人になりました。刀を3本使い始めたけれど、魔法の方が得意かな?上級魔法を何種類か使えるよ。あとは、相棒として舌のベロが居る」


ヌルっとベロが顔を出す。


「ワシが蠱毒の城の主!ベル=ゼブb..」


また騒ぎになっては困るので、慌ててベロをカエルは、しまい込んだ。3人娘の頭上にはてなマークが浮かぶ。


「えー...まあ、変な事たまに言うけど、害は無いから大丈夫」


「なんか気になる事言ってたような気がするけど..まあ良いや。それより、上級魔法使えるって凄いね。刀も使えるんだし、アッシュさんみたいに、1人で依頼こなせるんじゃないの?」


「アヴァちゃん。冒険者は、そう甘いものじゃ無いよ。特に今回の依頼はねっ!」


バシッと、机の上に紙をココットが叩きつけた。


「正に私達向けの依頼。『新しく発見された遺跡の調査』だよっ!」


フンっと鼻息を吹いて、ココットが胸を張る。


「なるほどね。たしかに、それは幾ら実力者でも、初心者1人じゃ無理だわ」


「どういうことなんだい?」


息巻いているココットでは無く、話の分かりそうなアヴァに話を振る。


「遺跡の調査依頼は...」

とアヴァが説明しようとしたところで、ココットがグイッと身体を割り込ませてくる。


「未調査の遺跡!!それはっ!罠への対処と、知識が試される場所!!知恵と勇気と機転が必要なのよっ!!」


「勇気担当っ!マデリン!」

横目で見て、ヒラヒラとマデリンは手を振る。


「機転担当っ!アヴァ!」

ハァ、と溜息を吐いてアヴァが手を上げる。


「そして知恵担当っ!私っ!」


再度反り返るように胸を張るココット。



「...失礼かも知れないけれど、ココットは本当に知恵担当なの?」


ボソッと、小声でアヴァに耳打ちする。


「アレでもあの娘、本職は有名な学者なの。物好きで冒険者やってるけど。いわゆる天才よ」


そう言われているのを、知ってか知らずか、更に胸を反り返らせココットは威張る。20歳前後の女性が、有名な学者になるのは苦労もあったろう。



「では、この依頼は君達には、丁度良い依頼だったわけだ。是非私も共に加えてください」


そう言ってカエルは頭を下げた。


「かったーい!かたいかたい!『よろピコ!』くらいでいいよっ!」

「よろしくねカエルさん」

「よろ」




三者三様の挨拶を受け、カエル達は酒場の一室を借りた。今回の依頼の内容を話し合う為に。


「まず目的地は、山脈地帯の山間、この地点。最近頻発してるオークの目撃情報を元に、討伐に行ったパーティが、遺跡を見つけたみたい。中にオークが入るのを見たって情報も有ったから、巣になってるかもね」


真面目にココットが話す。流石にリーダーとしてやっているだけあって、こういう場では、真面目なようだ。


「準備が終わったら、直ぐに出立して、道中一晩野営。その後、遺跡へ突入するよ。各自準備は1時間程度。準備が出来たら、酒場前に集合ね」


ガタッと各自が立ち上がり、準備に向かう。




何をしたらいいのか分からないまま、カエルは椅子に座ったまま呆然としていた。


(これが冒険者か)


そう思っていると、ココットが慌てた様子で戻ってくる。


「ごーめんごめん!カエルさん初めてだったよね。アタシ着いて行くから、一緒に準備に行こう」


「ああ。よろしく」



ガタッとカエルは椅子から立ち上がる。

(これから、私の初めての冒険が始まるのだ。ワクワクするな)




最初に連れてこられた場所は、防具屋だった。


(なるほど、まずは防御からか。この皮膚があるから失念していたな)


そう思っていると、ココットが1着の布の服を持って走って来た。


「とりあえず、コレ。着よっか?それ...多分裸だよね?」


自分の姿を見る。

(確かに...)


蠱毒の城から駆け続け、冒険者登録なりして来たが、今は『亜人』なのだ。服と言うものを着なければならなかった。


ココットのあつらえた物は、簡素だが、質が良く、不思議としっくり来た。服と言うものに慣れないせいか、若干の違和感はあるが、慣れるだろう。


「ありがとうココット」


「ううん。こっちも無理やり誘うような形だったしねっ!それ、プレゼント。美少女からのプレゼントなんだから、大事にしてよね!」


どうやら、気にしていたらしい。

心配りの出来る女性のようだ。


「あぁ。これに恥じない働きをさせて貰うよ」


ウンウンとココットは満足気に笑う。


「武器はあるみたいだし、薬の類はアタシが持ってるから良いかな。その背中の風呂敷に入れておくね。さってっとっ!これで良いかな。準備万端。ちょっち早いけど、酒場前に行こっか」


「あぁ。色々迷惑かけると思うけど、ヨロシクねリーダーさん」


途端、ココットは目を輝かせてコチラを見る。


「リーダー!?ウチのチームに入ってくれる気になった!?まだパーティメンバーの3人だけなんだけど、大きくする予定なんだ!」


「いや、またそれは別の話だよ」


ココットは「チェッ」と膨れっ面になってしまった。


「色んな人とパーティを組んで、色んな人と会ってみたいから、もう少し考えさせてもらうよ」


「まっ、仕方ないかっ!1番最初がアタシ達で良かったって思わせてあげる!これ以上無いってくらいにね!」


バチンッと音が鳴る程のウィンクをココットはする。確かに、この娘と旅をしても楽しそうだ。


「楽しみにしてるよ」




「じゃあ行こっかっ!」

「うん」


カエル達は歩き始めた。


ココットは、新しい出逢いに。

カエルは初めての冒険に。


それぞれ胸を高鳴らせて。


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