三刀流
オレ達は玉座の間に踏み込んだ。薄汚い小動物共が、住処にしているが、今日からココは、オレたち偉大なるオークの物だ。
前を見ると、何やら虹色の皮膚をした人間?トカゲか?謎の生物が居る。
たった1人でギャーギャーと喚き散らしているソレは、どうやらオレ達の敵らしい。
「タイチョー。ヘンナノ、イル。ドウスルカ?」
部下のオークスラッシャーの1人が判断を仰ぎに来た。
「言う必要モ無いダロ!喰いちぎレ!」
オウ!とオーク達は応じ、虹色のソレへと殺到した。
オレ達の装備は特別だ。再生力のある鉱石メタスメタルを、オークの鍛冶師により防具にし、全員に装備させている。
隊員は、皆中級上位のオーク達である。知能も有り、会話も可能。実力も折り紙付きだ。武器には全て炎鋼を使用している。
万が一、蟲どもが生き残っていた場合の為の火属性の武器だったが、不必要だったようだ。
この城には莫大な財宝や装備が保管されていると聞く。上層部への土産には丁度良いだろう。
戦闘は部下達に任せ、キョロキョロと周囲を見回す。あの玉座が怪しいか?
玉座に歩を進めようとした、僅か『2歩目』
オレの首元に突然刃が突き付けられた。
後ろを見ると、部下が相手をしている筈の亜人が、居た。
「オ、オレの部下はどうシタ!?」
先程の虹色の生き物が、3本の刃を手に持ち...いや、一本は舌に巻き付けている。その舌の一本がオレの首に刃を突きつけているのだ。
「寝とるよ。起きることは無い。ヌシもそうなる」
そして、オレの頭は宙を舞った。
最後に見たのは、虹色の生物が、自らの舌と喧嘩している光景だった。あぁ、分かったぞ...
これはユメだ...
オレは静かに目を閉じた。
◆
風呂敷に包まれた刀を見てカエルは目を輝かせた。
(サムライ!)
「なんじゃヌシ?一刀斎の刀を奪って来たのか。この盗人め」
ビロビロと舌が飛び出してカエルを煽る。だが、カエルの目には刀しか映っていない。
そして自分の手を見る。
握れる。刀を。二本の手で!
スチャッと鍔を持つ。
そのままスルスルと、刀が鞘から飛び出した。
片や乱れ刃の『太刀』
片や直刃の『刀』
両者長さは違うが、相当の業物である事が見て取れる。
「いいものを選んだな。まぁ、彼奴の獲物は、どれも一級の中の一級。どれも売れば、街一つ買えるらしい」
「一本余ってしまったが、良いか。これで今日から私も侍だ!」
ギュッと両の手に刀を握りしめる。
「ちょい待て待て。ワシにも取らせろ」
と、ベロが舌に刀を巻き付けた。
「これで三刀流じゃ!あと697本持てば一刀斎じゃな!ハッハッハ!」
ベロの笑い声に呆れていると、耳元に風を切る音が聴こえた。
咄嗟に後ろに飛び退く。4足歩行時代には出来なかった事だ。
斧を投擲したオークが、こちらを指差しながら
「フゴッフゴッ!キサマ!ヒトリゴトバカリ!ナカマイナイ!」
と叫ぶと、周りのオーク達がプギーッ!と大声で笑いだした。
「プギーッヒッヒッ...ヒハッ!?」
大声で笑い続けていたオーク3匹の首が宙に飛んだ。
何が起きたか理解出来ず、飛んだ3匹の首を見上げるオーク達。
その視線がカエルへ戻る事は無かった。素早く構えられた二刀。そしてベロの刀が、オーク達の間を縫うように移動し、あっという間に首を胴体から切り離す。
19匹のオーク達が、数秒の間に物言わぬ屍となった。
そして、率いていた上級のオークの首元へ、刀を突き付け、2、3の問答の後、ベロが首を刎ねた。
「ちょっと!?尋問とかする前に、殺しちゃっていいの!?」
カエルが驚きながら、ベロに尋ねると「あっ..」と言って黙った。
「...ワシの方が沢山倒したぞ!」
「今ソレ関係ないでしょう?」
落ちた上級オークの首の目線が、こちらを見ていた気がするが気のせいだろう。
刀の使用感は悪くない。どころか、非常に良い。洞窟などの局所での戦闘や、出会い頭など、使える場面は多い。
この素早い足があるお陰で、足運びとしては悪くない。刀の扱いは一刀斎のものを、それとなく真似てみた。
それでも魔法は優秀だ。範囲殲滅、身体能力の向上、索敵、明かりなど用途が多岐に渡る。
これからは、場面によって使い分けるだろう。
「ふう。この玉座の間に豚共の血がついたのは至極残念じゃが、後ろばかり向いてもおれん。旅支度せよカエル」
「旅支度...か。そうだな。私は冒険者になるのだ。2足歩行が出来るようになり、言葉が話せるようになったのは、大きい」
それとも、そう望んだから、その形に進化したのだろうか?それは分からない。
背中に負っていた風呂敷は、肩にかけ、腰には3本の刀を括り付けた。
残りの刀は、ベロが言う宝物庫に入れた。彼が言うには、ベロの魔力を介さないと開かない仕組みらしい。
つまりこの世で、開けられるのは私だけということになる。
「もう、誰も使わん物ばかりじゃ。好きな物を持っていけ」
とベロが言うので、幾らかの便利そうな道具は、風呂敷に詰めて出た。
玉座の間の小動物達に挨拶をして、城を出る。
「おーよしよし寂しいな。また来るぞ」
と、ベロは孫に別れを告げるおじいちゃんになっていた。が、そのあと突っつかれて「あだだだ」と叫んでいたが。
風呂敷よし!刀よし!天候よし!
本日は快晴である。私の。私達の出立に相応しい。
「よし!いくぞベロ!」
グッと四肢に力を込めて、気合を入れる。
「どうでもええが、ワシの名前はそれで通すつもりか?...まあよいわ。好きに呼べ」
バッと足元の砂が飛び散り、私は駆け出した。
これから麓の街に降り、人間達と交流し、冒険者として生活する。
どんな出会いが待っているのだろうか?どんな強敵が待ち受けているのだろうか?そして、様々な美しい景色や物に出逢うのだ。
そう思うと胸が高鳴る。
「い、今更じゃけど。ヌシ速くない?」
と風に靡きながら、若干慄いてるベロを置いて、私は高揚していた。




