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カエルの為にそれは在る  作者: オイペン19世
1章 はじまり
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決意


村を、数人の男達が布に包まれて運ばれていく。

その扱いは随分雑だ。


なにをかくそう、彼等は罪人なのだから。


野盗の頭目、強姦魔、冒険者、「露出魔」、痴漢。彼等の出自上、罪状は様々だが、原因は、それ等ではない。


婦女誘拐、殺(・)蛙(・)未遂である。


この村独特のこの罪状は

殺人と同等の重罪に値する。


彼等は皆、この村では管理出来ない罪人である。

皆腕が立ちすぎるのだ。


よって、近隣の街から、衛兵が連行に来たわけだが。




「ま、魔物だああ!魔物が出たぞ」


(このやり取り、何度目になるか)


近隣の街から来た衛兵達が騒いでいる。

勿論「私」を見て、だ。


虹色のカエルの看板を掲げた「ユニケロ」は、ある程度の規模で有名にはなっているようだが、当然皆が皆認識している訳では無いと言う事だ。


内心ウンザリしつつ、周りの村人に助け船を出してもらおうとした時に事件は起きた。


「おらああああ!」


血気盛んな若い兵士が、カエルに斬りかかってきた。


「あっ...!」


(またか)と騒動を和やかに、見守っていた村人達が驚いた。まさかいきなり斬りかかるとは、誰も思っても居なかったのだ。


カエルは跳びのき、素早く臨戦態勢を取る。尋常では無いカエルの動きに、兵士達も同様に構えた。


「おいおい!物騒な事してんなぁ。

俺も物騒な事得意なんだ。混ぜてくれよ!」


間の抜けたような大声が飛んで来る。

皆がそっちの方向を見た。


サジである。蒼弓に手をかけて「明後日の方向」に向きながら、大見得を切っている。


まだ目は治っていないというのに

えらく肝の座っている事だ。


「サジだ!蒼弓のサジ!

引退したって聞いたけど、こんな所に居たのか」


どうやら二つ名持ちは伊達では無いらしい。

街の兵士にまで顔が効くようだ。


「なに?アイツが...?」

「あの【女食いのサジ】」

「いや、俺は【ケツ追いのサジ】って聞いたが」

「百発百中は夜の方もらしいぜ」


...どうも別の二つ名もあるようだ。

ターニャとサニャが居なくて良かった。


「デタラメな二つ名言ってんじゃねぇぞ!!

カミさんに聞かれたら殺されるだろうが!」


どうも二つ名は事実らしい。


「衛兵さん達よぉ。そのデカイカエルは、俺のダ(・)チ(・)だ。それに、今回の事件、制圧したのはソイツだ。うちの妻子が助けられた」


皆一様に信じられないような目でこちらを見る。


「蒼弓が言うなら、そうなんだろう。村の皆が恐れて居ない事からも、見て取れる」


隊長格の男が言う。サジも大層な「唐変木」だが、信頼はあるようだ。


「おうよ。保証するぜ。あと、運んでいく罪人達は、冒険者として中級以上の腕前ばかりだ。1人は一級の【沈静のデヴォネア】もいる。精々気を付けて連行するこったな」


兵士達がザワつく。沈静のデヴォネアと言えば、長らく大きな活躍はしていない。が、100体を超える魔物の暴走の鎮圧の功は、大きいらしい。


「分かった。こちらも魔法使い対策は、万全にしてきたつもりだ。一同、気を引き締め連行するように!」


馬車に乗せられ、罪人達が連れられて行く。道を外さなければ、優秀な者達だったろうに。そんな想いをカエルは抱いた。




こうして一つの事件が終わった。


同時に、カエルには一つ心に決めた事があった。



この村を出る。


素晴らしい場所だった。居心地も良い。

村人は皆私に親切だ。


ただ、広い世界が見たい。

この目で、この足で。


生まれ変わりを繰り返した私は、様々な景色を見て来た。 巨大な滝、どこまでも広がる地平線、荒野に聳え立つ巨大な石塊。


ただ、それらは私が望んで見たものでは無かった。死を繰り返し、毎日を必死に生きて行く中で偶然見たもの。


今それらを思い返すと「もう一度見たい」と思うのだ。どうせ見るなら、共も欲しい。

人と触れ合い、共感する事の大切さを知った。


共に喜び分かち合えれば、素晴らしい事だ。

それらが出来る者達。


私は「冒険者」になると決めた。



◆



(どうもカエルの様子が最近おかしい)


最初に気付いたのは、ターニャだった。女の勘とでも言おうか、日頃の何気ない行動の違いを、彼女は目敏く見つけていた。


村長から借りて来た、この近辺の地図を見たり、サジに筆談で冒険者の話を聞いたり、サニャと筆記の練習に励んだりしていた。


(旅にでも出るつもりかしら?)

ターニャは、そう感じ取った。


彼が生きて行くには、外の世界は辛いものになるだろう。ここに居れば良いのに。そう思う。


(ここに居て欲しい。と言っても良いか」


個人的な感情を言ってしまうと、孝行息子でも持ったような気持ちを抱いている。


稼ぎは良く、娘の遊び相手もしてくれて、旦那が失明すれば、背に乗せて村を廻ったりしてくれた。


これ以上ないくらい良(・)い(・)ヤ(・)ツ(・)だ。


料理の手を止めて、窓の外を見る。

青い空が広がっている。外の世界は広い。



そうか、彼の気持ちが分かった。

彼にココは狭すぎるのだ。


村で「良い妻」をしていると、時々夫や娘を放り出し、鳥になって、飛んで行ってしまいたい。


そう思う時がある。結局娘の笑顔を見たりすると、やっぱり娘が大事だ。なんて、現実逃避から、戻ってくる訳だが。



あ(・)の(・)子(・)の足なら飛んでいける。

そう思うと、なぜか涙が頬を伝う。


旅支度を手伝ってあげよう。

そう思った。


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