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カエルの為にそれは在る  作者: オイペン19世
1章 はじまり
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才能


村を「ペチャペチャ」と独特の音をさせて移動していく大きな影が1つ。村人達が驚く様子はなく、寧ろ親しげに話しかける


「よっ!虹色の!今日も狩りかい。精が出るねぇ」


ピレモンという男が声を掛けてくる。狩人として生活する男だが、以前は冒険者と呼ばれる職業だったらしい。腕っ節が強く、皆に門番として頼りにされている。サニャの父親の友人と言っていた。


「カエルさん、また珍しい魔物獲って来てね。この前の変なの案外イケたわよ」


この女性は、レシア。井戸端組の片割れ。ターニャの友人。いつもターニャと井戸端で話している。


夫と共に牛飼いをしながら、野菜と穀物を育てている。金銭しか支払えなかったターニャにも別け隔てなく接してくれていた、気前の良い女性らしい。


お世話になっているから、と以前林で捕獲した、ウシガエルのような、フグのような鳥を渡した。見た目と違い、存外イケたらしい。


勿論、毒の有無は確認してから渡した。


私がこの村で暮らし始めて、ひと月が経った。


私は、日常会話(聞く専門だが)に、問題ない程度に言葉を理解出来るようになった。


また魔法や魔物についても、それとなく理解した。魔物とは、凶暴な野生生物のような物らしい。


いつから生まれたのか、誰にも分からず、魔物は有史以来ずっと存在するのだとか。


世の中には魔王と呼ばれる存在が居て、知能のある一部の魔物達を統べているのだとか。


片田舎での話なので、どこまで信頼出来るかは分からないが。


私も魔物であろうと言われた。

ただ、この近辺では見かけない種類らしい。


(魔物か。以前見た同種の虹色カエルも、凶暴な部分を秘めていたのだろうか?)


と、以前出会った同種に思いを馳せる。


(黄色いカエルは...あれは悪いカエルだ)



次に魔法とは..


「魔法ってぇのは!この世に存在する..なんかこう..すげぇモンを!アレして..こう...捻って出すと、火が出たり水が出たりする物じゃ..ねぇか?そうだろ!?」


とは元冒険者であるピレモンの言葉である。サッパリ分からん。人間も使いこなす者が居るが、ピレモンは詳しくないらしい。


「水の魔法使ってるおめぇが、魔法を使えない俺に質問してどうする」


うーむ道理なような、そうでもないような、少なくとも胸を張って言う事ではない筈だが、あの男は..。



さて、ここで暮らすには先立つ物が必要だ。今日は林の向こう側にでも行ってみようか。林の中の魔物は全種把握し、倒している(ついでに村人に提供もしている)


村の入り口へ向かっていると、広場で子供達が、臙脂色のローブのフードを、目深に被った人物を取り囲み、何やら楽しそうにしている。よそ者のようだ。そこにサニャの姿を見つけた。


(なんだろう?旅芸人か何かか)


サニャに聴き出すべく、近づいてみる。チラリとローブの人物が、こちらを覗き見て、その目を見開いたように見えた。皺深い老人のようだ。


しかし直ぐに子供達の方に向き直ると、また子供達の相手を始める。


(...おかしい)


街中に魔物(私)が居るのだ。驚きを見せたまでは普通の反応だが、すぐに目線を戻す冷静さはなんだ...?


「彼は魔法使いだよ。たまに魔法の道具の提供と、魔除けの点検に村に来るんだ」


背後から村長が声を掛けてきた。

怪訝な顔(?)でもしていたのが分かったのだろうか?


「彼が君を見て驚かなかったのは、おそらく君が悪意があるか無いかを見極めたんじゃないかな?彼は特殊な《目》を持っているという話だよ」


目?という疑問があったので、首を傾げ村長を見る。


「なんでも、目に映る者の敵意や、奥底に眠る「力」が分かるらしい。今は君の敵意を見たんじゃないか?私もソレを100%理解しているわけじゃないがね」


(ほう。この辺りの土地は、魔法と言い、摩訶不思議なものが沢山あるな)


・・・待てよ。あの人物なら、魔法について聞けるのではないか?


村には魔法を使える者が居ない。

カエルに魔法を教えられる人物が居ないのだ。


さて、どのようにして頼み込むべきか。


「そういえばカエル君は、魔法が使えるんじゃなかったか?教えを請うてみたらどうかね?」


!!


瞬膜を瞬かせ、目を輝かせて村長の方を見る。村長あなたは天才だ!!


ブンブンと身体を縦に振る。

そして、ビシッ!ビシッ!と2度魔法使いの方を指差す!


「そ、そんなに嬉しかったのかね?わかった。私から頼めば良いのだろう?」


そう言うと、魔法使いと何やら話し始める村長。顔見知りのようだし、頼む。村長頑張れ。


私は、この魔法という不思議な力を知りたい。弱者だった私に、力を与えてくれた魔法という力。是が非でも強化しておきたい。


村長と話し終わったのか、魔法使いが、こちらの方に歩み寄ってくる。


「オヌシが言葉が理解出来るというカエルか?誠であろうな?」


首を縦に振り肯定を示す。


「魔法を学びたいとのことだが、どういう理由だ?力を求めてのことか?何の為に力を求める?」


(1度にそんなに質問されても困るし、返答のしようがないんだが...)


「...力を求めてか?」

察してくれたのか、質問を1つずつにしてくれたようだ。肯定し、首を縦に振る。


「..強くなりたいのか?」

首を縦に振り肯定する。


「誰かの為か?」

否定する。


「復讐か?」

否定する。


「ならば、生きるためか」

肯定する。強く強く首を振る。


「生に対する執着か。悪いことではない。動機としては純粋なものだ。そこまで強く肯定すると言うのが気になるが」


999度死に、思考能力が芽生えた今、生への執着は強い。


生きていると実感出来るのだ。

死にたくないと頭が否定するのだ。まだこの感覚を味わっていたい。


「よかろう。少しだが教えてやる。場所を変えるぞ」


そういうと、外へ歩き出す。


魔法使いを子供達が追いすがって

「えー!もう魔法見せてくれないの?」

と言うが「またな」と取り合わない。面倒見は良いが、淡白な人物のようだ。




村からある程度離れた場所で

「ここいらでよいか」

と魔法使いが陣取る。


「さて、カエル。オヌシは魔法が既に使えるようだが、何が使える?」


問われ、水球の魔法を使う。


「...【ウォーターボール】1つだけか。まあ良いだろう。オヌシはカエルだけあって水系統の魔法が適しているようだな。なかなか応用の効く系統だ。器用貧乏ではあるがな。」


(この魔法はウォーターボールという名前だったのか。今まで勝手に水球なんて呼んでスマンな相棒)


今まで自分の身を守ってくれた魔法に対して敬意を評しつつ

(でも、水球とこれからも呼ぼう)と愛着のある魔法に対し思った。


「さて、オヌシは魔力の流れというのは知っているか?いやそもそも魔力が何か知っているか?」


そう問われ首を振る。


「魔力とは、生き物に通う生命の根源の一種。生命力、魔力、気力の3つに分けられていると言われておる。【生命力】は、命そのもの。寿命や血液などに影響される」


「【魔力】は感情が影響するエネルギーと言われている。魔力を消費する魔法使いは、総じて冷静な、悪く言えば「冷めた」人間が多いのだそうだ。元は魔物の行使するエネルギーだったのだが、過去の研究により、人間でも行使する事が可能となった」


「【気力】は体力に影響する。戦士達が使う《武技》は、気力を消費する。戦士が常に鍛錬を行うのは、武技で体力を大幅に使うからだな」


《武技》というのは初耳だな。

首を傾げて、答えてくれないか期待してみる。


「何が分からん?魔物が皆魔法使うのかか? 武技か?」


両方なので、ブンブンと首を大きく振ってみる。


「...両方か?魔物にも使わない種類も居る。ただ、魔物は魔力を《スキル》にも転用できる。気力は魔物には少ないと言われているな」


「人間は魔力を使い過ぎると激しい頭痛、倦怠感に襲われ、最後は失神する。」


「魔物は魔力を使い過ぎると、脱力する。手足が動かなくなり、それを超えて使い続けると最終的には死ぬ。魔物にとっての魔力は生命力と同義だからだ」


...水球を乱発してた自分が少し恐ろしくなった。


「《武技》は端的に言えば、【技】だな。技術の極みにある物。剣を振るい斬撃を飛ばす事なども可能だ」


「理解出来たかね?優秀な生徒くん」


首を振り頷いておく。


「よろしい。では本題だ。オヌシは魔力の流れが見えるか?魔法を発動する際に見える薄っすらしたものだ」


(例の「靄」の事か?)

コクリと頷いておく。


「ふむ。本当に優秀なようだ。あれが見えるまでに、通常2年はかかるのだがな。その流れさえ見えれば、あとは簡単だ」


魔法使いが手を翳す。


「オヌシの魔法は、周囲に魔力が散って、効率が悪い状態だ。魔力を放出したい場所。今は手だな。そこに一点に集める。水系の魔法...そうだな。【アイシクルエッジ】!」


- [ ] 魔法使いの手に魔力が集積し、それが冷気を帯びて氷柱のように変化する。パキパキと音をたて、象られた氷柱は、射出されると、勢いよく岩にぶつかって砕けた。


「オヌシも同じ要領でやってみろ」


促され、先程みた事を自分の中で反芻する。右前足を上げ、そこに魔力を集積する。


(冷気を集め、水を徐々に固め、鋭利な氷柱へと変化させる...【アイシクルエッジ】!)


先程の魔法使いよりもひと回り大きな氷柱が成形され、岩に衝突し、岩の表面にヒビが入った。


どうだった?とばかりに魔法使いを見やると、目を丸くして暫く岩をみていた。


「.....オヌシ【アイシクルエッジ】を使えたのか?」


絞り出すように出した声が軽く掠れている。フルフルと頭を振って否定する。


「ワシは確かに同じ要領で、と言ったが「一点に集めろ」と言っただけのつもりだったんだが...」


(そうだったのか)


「よもや、一度見ただけで同じ魔法を...ワシより威力を上げて使うとは思わなんだわ」


普段なんとなく使っていた魔法も、意識的に部位を指定するだけで、威力や精度が増すようだ。


「オヌシには、才があるようだ。どれ。他の水系統の魔法も一通り使ってみせるか?」


頷き肯定する。


「次は浄化の魔法をつかう。この草で良いか..。目の前の物体や人間から、毒や不純物を洗い出すイメージで使うのだ...【キュア】」


垂れ下がっていた草がムクムクと葉を持ち上げるように上を向く。


(水魔法は器用貧乏と言っていたが、色々と応用が効くものなのだな)


先程と同様に、目で見た魔力の流れを再現する。項垂れていた花が浄化され、太陽に向かって咲き誇った。


「これも問題無いか。では一通り続けていくぞ」



周囲に霧を発生させ、視認させ辛くさせる【ブラインドミスト】

氷の壁を出現させる【アイスウォール】

ウォーターボールの応用で、毒を混ぜて水球を射出する【ポイズンボール】


「ワシが使える水魔法は、これでしまいじゃな。魔法はイメージじゃ。こうしたいと思い描く。極めれば洪水さえも起こせるようになる」


頷き、足をバタバタと動かし感謝を表す。


「うむ。精進せよ。ワシは次の村を回らねばならぬ。達者でな..【エアロウォーク】」


そう言うと、魔法使いの足元に小さな風の渦が出来る。魔法使いの体が地面から数センチ浮かび上がる。


前足を振り惜別を示しておく。


魔法使いは音もなく地面を滑るように移動して行った。


(あの【エアロウォーク】便利そうな魔法だ。でも、水系統の魔法では無いから無理かな)


....(【エアロウォーク】)


するとスッと風がカエルの足元に渦巻き、身体が浮き上がった。


(.....あら?)

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