そして現実を知る
お散歩がてら、久しぶりに母校の小学校に来てみたが、いつまでも校門前で男四人でワイワイ会話をしている場合ではない! 一刻も早く家に帰って、事の真相を確認しなければならないのだから。
(新聞やら親衛隊やら、僕の人生には何一つ必要ないものだ。僕のBLライフを脅かすものは早々に撤廃してもらわないと!)
もと来た道を走る……のは疲れるので、早足で家に向かう。後から櫻森くん、渋谷くん、鶴間さんが追いかけてくる……のだが、彼らは、ゆったりと普通に歩いている。なぜだ、解せぬ。
「ねえタッシー、そんなに急がなくても家は逃げないから」
「鶴間さん、当たり前のこと言わないでください! 大体どうやって家が動くんです? 足でも生えるんですか!? 僕は生徒会のメンバーにも確認したいから急いでるんです!」
説明しよう! 新規で親衛隊を創設する場合、まず隊長、副隊長の二名と最低でも確保しなければならない隊員数が二十名。そして生徒会の承認が必要だ。と、いうことは(あえて言おう)僕の親衛隊は最低でも二十二名いるってことだ。
(誰だよ、親衛隊に入ろうと思った奴は。視力、大丈夫ですか? 一度、精神科を受診された方が良いかと思いますよ)
さっき渋谷くんから、一年の学級委員は全員入っているそうだから自分を除いた十一人は判明している。となると残りの十一名は誰なのか。まさか生徒会の役員はいないよな?
いや、待てよ。そういえば新聞作りにクラスメイトが関わっているって言っていたなぁ……ま、まさかクラスメイトが親衛隊員ってことはないよね?
「福田くん、生徒会に何を確認するの? もう承認されてるんだから諦めたら?」
だから渋谷くん、承認されているから確認するんだよ! 僕の知らないところで計画されたことを、きちんと調べたいんだよ!
「あのさ、勝手に本人の許可なく作られたんだよ? 誰が自分の隊員なのか疑いながら生活する身になって、どれだけ不安か君たちにはわからないだろうね! 今まで平凡に生きてきた僕に突然、親衛隊だよ!? ありえない話を信じろ、って無理でしょう!」
本音を言ったら、段々と怒りが沸いてきた。(いや、さっきから怒っているけどね!)
「大丈夫、諦めるな。本人の許可がないものはクーリングオフができるはず! でも一週間以内ではないから、そしたら公文書偽造で訴えてやる! 生徒会も何で悪ノリしてるんだよ! 金澤先輩が絡むとロクなことないな!」
ここにいない金澤先輩に怒りの矛先が向いているが、そもそも僕が知らないのに姉さん経由で鶴間さんが知っていたことにも腹が立つ。僕にエフェクトがついているとすれば、頭から蒸気が止めどなく出ていて、メラメラと燃え盛る炎を背負っていることだろう。それくらい怒っているのだ。
(タッシー、実は同人誌サークルでも君の親衛隊があるんだけど。しかも隊長が自分の姉で、隊員登録は千人を軽く超えてるんだよね。そして通販限定の会報誌やらグッズやらで売り上げ伸ばしてます、だなんて…それを言ったら倒れちゃいそうだから黙っておこう! よし、そうしよう!)
と、鶴間さんが脳内で結論づけていることも知らず、僕は帰宅を急ぐ。急いでいるんだけど走るのではなく早足で。通りすがりの人に『すごい! 競歩の大会に出るのかな? 応援してるよ!』なんて言われ、学校のグランドに向かう小学生サッカーチームの集団には『競歩のお兄さん、頑張って!』とエールをもらってしまった。訂正するのも面倒なので手を振っておきました。地域住民との触れ合いは大事ですからね。
「……姫、ああやって信者を増やしているんだろうな」
「おそらく」
背後で同級生二人がコソコソとつぶやいていますが、知るか! 大体、信者って何ですか? 別にこれくらいは、普通の対応だと思いますが?
「タッシーがここまでキレてるのは、久しぶりだね。こうなったら誰も止められない……てっちゃん、大丈夫かなぁ」
呑気に姉さんの心配している鶴間さん。いや、あんたも同罪だからね。家に帰ったら覚悟していてくださいね!




