EP3 エルセリオ&ガレオン
「ガレオン?」
「あっ。あぁ。そうだ。ありがとう」
衝撃過ぎて本来の目的を忘れていた。
「それじゃ……っ!?」
エルセリオを起こすとするか。と思うと、突如ガタガタガタ!!と激しく揺れる。
部屋の本棚は倒れ、本は散乱し、自分は立っているのがやっとの状態だ。
「ハーハッハ!ここに雑魚魔王を討伐したと言われてる魔法使いがいるようだのぉ」
「っ……この声はっ!!」
テレビ越しに聞いていた、異世界の魔王。
その本人の声が聞こえる。
今どこにいるかは分からないが、早く起こさないと。
「『魔力よ。この魔力を解放せよ。アンチマジカル』!!」
パキ……とエルセリオを守っていた壁が少しずつ解けていく。
「退屈だから相手をしてやる。早く出てこないか!!」
パキ…
上側にヒビがはいる。
「おー?出てこないなら吾から行ってやるぞー!!」
パキ…パキ……
下側にヒビがはいる。
「あぁ?なんだこのみみっちい機械は。そんな戯れをしている暇はない」
パキパキ…
全体にヒビがはいる。
ドォン!!!
かなり近くで音がした。おそらくトラップを破壊している音だろうか?
(まずい……!!はやく!!)
「あぁ?ここが最奥か?」
「やばいよ?レオ。逃げよう?」
「逃げるにも、来た道を戻らなきゃならない」
「つまり、魔王と鉢合わせする?」
「そういうこった」
「はぁ!?私ここで死にたくないわよ!?」
「俺だって予想外だよ」
そう口喧嘩してると。
「お。なんだ先着が2名様いらっしゃるじゃねぇか」
異世界の魔王。本人が着いてしまった。
(エル…!早く、起きてくれっ!!)
「なぁんだ?吾相手に無視を決め込む気か?悲しいなぁ。悲しませたヤツには罰を与えないとなぁ」
そう言って、持っている大剣を勢いよく振り下ろしてくる。
(あっ。死ぬっ…!!)
パキッ——————!!
キーーン!!!
魔法を発動するのを遅れてしまって、死ぬのを覚悟したが。
デカい音がしてから一向に攻撃が来ない。
(ん……?)
ゆっくりと目を開けると、青白い壁が魔王と俺たちを分断している。
魔王が振り下ろした剣は、壁に勢いよくあたり、跳ね返ったのか、魔王の後ろの地面に突き刺さっていた。
「え……?」
「君が、私の眠りを覚ましたのかい?」
「は……?」
問いかけられたが、頭が働かず、意図が理解できない。
「なんだい?起こそうとしたわけでもないのに、封印を解除したのかい?」
それにハッと我に返る。
この皮肉的な口調。
(間違いない。エルだ)
「いい、や。間違いない。目的があって解除したのは俺だ」
「なんのために?」
「それはな」
最初は、少しでも理不尽な侵略者たちに抗うために呼び覚ますつもりだった。
けれど、あのゲームの友人となれば。
「エル。俺と一緒にまた、世界を救う冒険をしようじゃねぇか!」
「そのセリフ……クロム!?」
「久しぶりだな。エル」
「でも、見た目が?」
「説明はあとさ。エル。リンクだ。分かるな?」
「もちろんさ!『リンク接続』。ほら、クロム、私の手を握って」
「おうさ」
差し伸べられた右手を、自分の右手で握る。
リンクするだけ。というのはとても簡単だ。これで済む。
とても懐かしい。ゲーム上ではただUI表示で
相手とリンクしますか →はい
いいえ
と選択して、はいを押すと、演出が流れるというものだったが。
今は、自分の中にある魔力が、活性化し沸き立つ感覚がする。
そして、もう一つ、自分の魔力の箱の他に箱が増えて、そこに魔力が満ちている感覚がする。
(これがエルセリオの魔力なのだろうか?)
確かに、ゲームでは、相手への自分の魔力の流入を許可していると相手は自分の魔力も自由に使えていたが、これがそれなんだろうか。
なら。
「サンキュー、エル。ということで。やろうか『リンク共鳴』!!」
「あぁ。私たちがそれに使ってた魔法。といえばあれしかないな?」
「そうだな」
「「せーっの!!『『マジカル』』!!」」
ゲーム内の職業の1つ。魔導師の名前がそのまま冠された魔法。
一番初期から覚えていて、威力は低いが発動までの時間が一番短い魔法で初心者の頃はとても扱いやすい魔法だ。
その魔法を同時に発動させると、2人分の魔法が重なる。
そして、俺たちの魔力もまた、別々の感覚だった魔力の箱が1つに重なり、魔力が増幅しているような感覚がした。
リンク共鳴。それは、発動するだけでも大量の魔力を消費する。さらに、共鳴させる魔法の消費魔力が大きいほど、必要な魔力も増えていく。
その代わり、共鳴後の魔法には基礎ダメージボーナスが付き、威力そのものも倍増する。
「なんかよくわからないけど、そこのやつやっつければいいんだよね?なんの装備も着ていない君よりは私のがいいだろ?」
「そうだな。頼む」
「分かった。でも、魔力消費が激しいから……」
「俺の魔力も使ってくれていい」
「分かった。じゃあ、遠慮はしないよ。このくらいの魔力残量なら……『火よ。炎よ。今燃え盛らせよう。フレイムヴルカン』」
自分の魔力もごっそり削られる感覚がした。
(やっぱ、リンク共鳴後の高火力魔法は魔力消費がえげつねぇなぁ……)
まだ2人ともほんの少し魔力は残っているが、これ以上は魔力回復薬(持っていないが)を飲むか、時間による回復を待つしかなさそうだ。
特にゲームでは街に戻れば一瞬で魔力が回復したが、この現実ではそんなことはないだろう……
「フーハハハ!!」
「は?」
「はぁ……?」
「ひえぇ……」
(まじで?あれで?生きてる?ふざけんな?)
煙が晴れてくるとしっかり立つ姿が見えた。
「そんなもの、吾には効かん。が、面白い物を見せてもらった」
「ふざけんなぁぁ!!!」
傷1つ付いていない体を見て思わず絶叫する。
(どうする?逃げるか?)
「エル、ここの天井に穴を開けるほどの魔力はねぇよな?」
「そうだね、ちょっと厳しいかも……」
ないものねだりで一応確認してみるが、やはり魔王の隙をついて逃げるしか選択肢ないようだ。
「何やらコソコソやっているのは気に食わんが、何やら面白い物を見せて貰ったので吾は満足だ。ここは一旦退いてやろう。しかし、次会ったときはもっと面白い物を見せてくれ人間。絶望を感じながら足掻いている瞬間が一番面白いのだ」
(コイツ最低。まじ最悪)
「そらどうも……」
「フハハハ喜べ。人間。生かしてもらえることにな」
そう言って、空間が歪み、その場から消えた。
(本当に助かった…のか……?)
一応そう思って警戒してみるが、何もおこらないので本当に退いてくれたのだろう。
「ふぅ〜〜……死ぬかと思った…」
「まさか、あれが効いてないなんてね…」
「あぁ。……まさか剣とかの物理攻撃しか効かないとかないよな…?」
「やめてよ。物理攻撃も筋肉に刃が挟まれて効かなそうなやつなのに、そんな絶望しかないの…」
「そうだな……」
(筋骨隆々で、いかにも物理攻撃も無効ですって見た目のやつを切るなんてどれくらいの力が必要なんだ……)
「それで、この女、何?虫みたいにひっくり返って気絶してて、気持ち悪いんだけど……」
「あぁすまん。俺の幼馴染だ。とても頑固な奴で面倒だからな……勝手に着いてきて死なれるよりは目の届く範囲に置いておいた方が良いと思ったんだ」
「そう。じゃあ、ちょっとここで休憩しながら話そうか。情報共有」
「そうだな。俺もちょっと知りたいことがある」




