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1話 飼い犬、戦う

多くの方々に読まれているようで嬉しい限りです!

「助けてください!」


 声が聞こえた気がする。だから、体が動いた。

 昔を思い出したんだ……忘れていた、大切な人が攫われた時の思い出が。でも、結果だけが違っていた。女性を襲っていた男を乱切りにして遺体へと変えてしまったんだ。そして、その時に嫌という程に理解してしまう。


「これは……なんだ……?」

「へ……まさ、か……フェンリル……!?」


 鋭い爪に狼のような手、視点だっておかしい。

 フェンリル……そんな言葉が聞こえた気がするけど何が何だか分かりはしない。ただ、学んだ技を使おうとしただけだというのに速さに追い付けないで殺してしまった事には変わりないんだ。どちらにしても、人を殺してしまった事には変わりないだろう。


 なのに、少しも……心が揺らいでくれない。

 まるで、心までその呼ばれ方通りに変化したようだ。まぁ、それならそれで構いはしないけどさ。今は先に考えるべき事とするべき事がある。特にフェンリルとなったのであれば尚更、現状の理解を先に済ませるべきだろう。


「お前は誰だ。俺はどうしてここにいる」

「そ、それは……いえ! 説明は後にさせてください!」


 悲鳴が聞こえた……目の前の女性もそっちの方を気にしているみたいだ。フェンリルと聞こえた時には内心、驚いていたが……冷静になった瞬間に一つの違和感に気が付いた。


 それは女性の耳が人よりも鋭く長い事だ。

 唯の好んで読んでいたライトノベルにはよくいた種族だったが……フェンリルという名前からして居ても不思議では無いだろう。それに気が付くのと同時に目の前の女性の説明が現れたから余計に納得出来た。


「エルフ、外では何が起こっているのだ」

「人が……盗賊に襲われております」

「そうか、承知した」


 とはいえ、神話上の生物としての姿は目立つ。

 大きな狼なんて普通に考えて人族の里にいてはいけない存在だ。出来るなら……と考えた瞬間に幾つかの情報が頭に入ってきた。その中に人へと変えられる術もあったから喜んで使わせてもらう。


「少し……大きいが悪くないか」

「え……獣人……?」

「一先ず、賊は殺さなければいけないだろう」


 俺の求める事、相手の求める事……些事だ。

 人を殺した事は初めてだが殺しかけた事なんて幾らでもある。今いる環境が日本では無いのならば得られる情報を頼りにするしかない。……この左手に残った絆がそう叫んでいるんだ。今は生き残る事を優先するべきだろう。


 殺した男の得物を片手に取って外へ出る。

 不思議な事に先程までの感じていた景色と何ら変わりはない。鉄の片手剣とは大した代物とは言えないが悪くもないか。変に槍や弓を出されるよりは扱いやすくて助かるよ。現に今の速度を扱い切れるのなら距離なんて問題にならない。


「三人……本当に簡単だな」

「誰だ!」

「ただの援軍だ」


 軽く回してみたが問題なく扱える程度だ。

 片手剣一つとはいえ、目の前の敵相手に遅れを取るとは少しも思わない。あの時もそうだったけど武を教えられた瞬間から勘というものは侮れないものだと言っていいだろう。その勘が目の前の敵は容易に殺せる相手だと口にしているんだ。


 軽くだけ片手剣を手で回して構える。

 おっと、左腕を前に出す構えは盾ありきのものだったか。それでも今ある速度からして構えすらも一つの情報となるだろう。同様に盾を持つ前衛の兵士だと考えれば狙うは俺の突撃に合わせたカウンターだ。だが、それは今の俺には意味が無い。


「その構えは悪くないな」

「だったら!」

「俺が相手で無ければ、だが」


 今の力が無くても対処出来ていた自信がある。

 でも、速度という最大の利点を得た今となっては不必要な技術だろう。何事にも相手が同格だと考えて動くのが当然の理だ。それが覆されているとなればどうだろうか。だって、俺は神話上の化け物であって相手はただの人だ。


 想像以上、その四肢は容易に切り落とされた。

 右手にある剣一つで行えるだなんて、剣豪であっても不可能な一手だろう。いいや、それを行えるだけの力を得ているのは確かな事か。仮に目の前の盗賊が今の俺と同格であっても勝りはしない。


「死に晒せぇッ!」

「そうかよ」


 斧、しかも、両手で持つタイプのものだ。

 片手と両手では大きく異なる点がある。それは火力と後隙という二点だ。横振りなら幾らかは次の一手を見る事も出来るだろう。だが、今回は縦振りでありながら高揚している。力を込めただけの一撃なんて躱せてしまえば……。




「ガ、ッ……!?」


 一撃で首を落とす事が出来て本当に良かった。

 技術や知識は持ち合わせているとはいえ、その通りに体を動かせる程の慣れは無い。頭の中に入ってきた情報からして今の俺の目は神眼というものになっているようだ。こうやって周囲を見渡すだけで人の位置や職業が分かるから本当に楽で助かるよ。後はただ……殲滅するだけだ。


 見えた盗賊の数は残り八名、その中で優先するべきなのは賊ではない人が近くにいる場所からだ。幸か不幸か、先程の戦闘音で村人から離れて近付いて来てくれている。五名は固まって向かってきているが先行の三名はバラバラだ。


「な───!?」

「静かにしていろ」


 情報統制が整っていない内に各個撃破する。

 先程の戦いで今の体にも少しだけ慣れてきたところだ。感覚的にかなり力を落とさないと制御出来ない事には変わりないが、自分の体として問題なく動ける時点で十分だろう。少なくとも制御出来る速度ですら登下校時の自転車並みだ。周りの盗賊より早ければそれでいい。


 それに力を落としたところで物理的な攻撃力は大して変わっていないからな。今だって軽く振ったのに首を切り落とすなんて容易だった。足も止めずに並走しながら出来るなんて普通では無いだろう。まぁ、今の盗賊から短剣が取り付けられたベルトを奪えたから剣に頼る必要性も無くなったけど。


 周囲の家裏に体を隠しながら先行部隊の二人が合流するのを待つ。向かった先は予想通り、俺が盗賊を殺した場所だ。何かに気が付いたようだけどもう遅いな。二人の頭部目掛けて短剣を投げるだけで……。




「……なんという、馬鹿力」


 刺さった部分を貫いて大きな穴が空いていた。

 出刃包丁よりも小さな投げナイフだったというのに……こんな恐ろしい結果になるとは想像していなかったな。とはいえ、暗殺出来た事は喜んで良い事だろう。もうそろそろで到着する盗賊達が遺体を見付けた瞬間に……。






「な! おい!」


 ナイフを投げ付けるだけで殺せるんだ。

 ああ……でも、失敗したな。これなら一人くらいは生かしてやるべきだった。もしも、殺した男達が無実だったら、なんて、考えが頭を過ぎったけどある訳ないか。最初に見たエルフが召喚士で、殺した男達が盗賊となれば、どちらを信じるかなんて目に見えて分かる事だろう。

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