パーティは何時からですか?
(ぐぅ~)
お腹が鳴った。
「なんか腹減ったな」
俺は言った。
「何か買ってきましょうか?」
クリ金君は尋ねた。
何か買ってくるって、
俺は金を持ってるのか?
俺は前の持ち主の記憶を思い出す。
たしかカバンの中に金があったような。
「俺、カバン持ってなかったか?」
俺は尋ねた。
クリ金君はベッドの足元にあったカバンを手渡す。
柔らかい革のカバンだった。
元々はベージュなのだろうが、薄汚れてこげ茶っぽくなっている。
俺は中から、財布を探す。
ずしりと重い袋を見つける。あぁこれが財布か。
俺は中を見る。
銀貨と銅貨が入っていた。
まだエドガーの記憶と同期しきれていないのか。
この世界の物価がわからない。
しかし、
俺はエドガーじゃないとか言ってもな。
面倒だし。
どないしよ。
「ずいぶんお金持ちですね」
クリ金君は言った。
「そうやろ。ここの宿賃はどのくらいや。ここから取ってみてくれ」
俺は指をさす。
「ここは安宿なので銅貨5枚ほどですね」
クリ金君はそう言い、銅貨を取り出す。
「そうか。じゃあそれで宿代払っといてくれ。ここらの屋台とかって、どれくらいや?」
俺は尋ねた。
「この銅貨2枚もあれば、たらふく食べられますよ」
クリ金君は笑った。
俺は財布の中身を確認する。
とりあえず金は当面大丈夫そうやな。
「じゃあ飯に行こか。助けてくれたお礼に、奢るわ」
俺は言った。
「ありがとうございます」
クリ金君は良い笑顔をした。
(きゅん)
なんや。
この感情は……。
俺はその笑顔からしばらく目が離せなかった。
クリ金君は、くるっと回り、扉に向かう。
「エドガーさん、行きましょ」
クリ金君は言った。
「あぁあぁ」
俺はクリ金君についていく。
「エドガーさん。
僕の名前はアルフレッドです。
できたら、アルフレッドと言ってくれるとうれしいな」
クリ金君は照れくさそうに言った。
「アルフレッド……」
俺は呟いた。
なんや、
名前を言うだけで、
なんでこんなに照れくさい。
「はい。なんですか?エドガーさん」
アルフレッドは笑った。
「いろいろありがとうな」
俺は言った。
「いえいえ。どういたしまして」
アルフレッドは頭をかいた。
なんや。
この子、滅茶苦茶カワイク見えるやんけ。
「あの……エドガーさんって、ソロプレイヤーですよね」
アルフレッドは言った。
ソロプレイヤー?
なんのことや。
俺はエドガーの記憶を引き出す。
そうか、
俺は冒険者で、
冒険者にはソロとパーティというのがあるんか。
そしてエドガーはソロやったんやな。
「そうやな」
俺は言った。
「僕もなんです」
アルフレッドは言った。
顔を真っ赤にしている。
このひ弱そうな男の子が、
ソロやなんて。
それに俺、
このままより、
パーティ組んだほうが良さそうやな。
「奇遇やな。じゃあ俺とパーティ組むか?」
俺は尋ねた。
「僕とパーティ組んでくれるんですか?」
アルフレッドは前のめりになった。
目が輝いている。カワイイやないかい。
「なんや。不服か?」
俺は言った。
「いえ。不服なんかじゃ……。
ただ僕が周りからなんて言われているかを知ったら……。」
アルフレッドは言った。
「なんや。クリ金君とかちゃうんか?」
俺は尋ねた。
「違います。弱虫アルフレッドとか、疫病神アルフレッドとか、裏切りアルフレッドとかです」
アルフレッドは言った。
こいつ。
なんか事情ありそうやな。
「アルフレッド。お前なんか事情ありそうやな」
俺は言った。
「はい。実は……」
アルフレッドは口ごもった。
こういうのを聞くのは、
男として野暮の極みやな。
……
その頃アルフレッドは躊躇していた。
自分の身分を明らかにするかどうかを。
私は身分を偽っている。
私はとある貴族の家に次女として生まれた。
父も母も厳格な人で、厳しく育てられた。
そして半年前、
新興商人の男との婚約を命じられた。
結婚すれば多額のお金が動く。
貴族と言っても、我が家は傾きかけ。
両親はこの申し出を快諾した。
しかしその男に嫁いだ女性は、ことごとく謎の失踪を遂げた。
私は不安にかられ、家を逃げ出し、
アルフレッドとして、冒険者になった。
身分を偽り、パーティを組んだが、
厳しかったとはいえ、
お嬢様の私に冒険者稼業は甘くはなかった。
そして、
次々とパーティから追い出され、
今の私がある。
エドガーさんなら、わかってくれる気がする。
でも……。
「アルフレッド。お前なんか事情ありそうやな」
エドガーさんは言った。
仕方ない。全てを言おう。
私は口を開きかけた。
「はい。実は……」
……
「って、俺が人の人生を詮索する奴やと思たんかい」
俺は言った。
アルフレッドは驚いた顔をしている。
「……わかりません」
アルフレッドは答えた。
「アルフレッド。お前は俺の人生について尋ねたか?」
俺は言った。
沈黙が流れる。
「考えましたけど、聞いてはないと思います」
アルフレッドは答えた。
「そうやろ。俺も思い出したけど、自分で勝手に過去を話しただけで、お前からは聞いてきてない」
俺は言った。
「そうですね。でも気にならないのですか?」
アルフレッドは言った。
俺はアルフレッドに顔を近づける。
なんか良い匂いがするし、ほわっとした気分になる。
しかしこいつ。
ほんまに美形やな。
ちょっとドキドキするわ。
俺にこんな趣味があるとは思わんかったけど、
まぁいいわ。
このエドガーの身体がそういうシステムなんやろ。
「俺はな。
相手が言おうとしてないのに、聞くのは野暮やと思ってる。
だからな。
言いたくなった時に言えばいい。
言いたくなければ、黙っとけ」
俺はアルフレッドの肩を叩いた。
ざっくりとしたシャツを着ていたからわからなかったが、
肩は想像以上に華奢だった。
「はい」
アルフレッドは安心した様子だった。
俺らは宿の外に出て、街の中心の屋台に向かう。
ここまで見たところ、
間違いなく、ここは大阪の街やない。
でも、
こういうテーマパークかもしれへん。
なんか、ゲームの世界のようだった。
あれ……なんのゲームや。
あれゲームの名前が出てけぇへん。
本名も忘れたし、
ゲームの名前も出てけぇへんし、
少しずつ記憶に障害が出てるのかもしれんな。
まぁいいか。
なんとかというゲームの世界みたいやった。




