和解
「ありがとう。
これで問題が解決する。
ただ申し訳ないが、
この糞の回収を頼まれてはくれないか?
もちろん報酬は上乗せするし、泊まるところも、食事も手配しよう」
村長は言った。
俺は二人を見る。
二人ともうなずいている。
なんや……。
この流れ、
俺一人でウンコを回収する役ってどうなん。
「さすが馬糞のエドガーさん。
今度は鹿馬糞も制覇ですね」
アルフレッドはグッジョブをした。
「おぉおぅ」
俺は頷いた。
なんかわからんけど、オイシイやんけ。
「エドガー、オイシイな」
マックンもグッジョブをした。
「エドガーさん。すごいオイシイよ」
村長もグッジョブをした。
俺たちは、村長さんの接待を受け、その日はのんびりと過ごした。
温泉があるというので、皆に行こうと言ったが、
アルフレッドには、
「僕は、ちょっと遠慮しておきます」
と断られた。
男同士の裸の付き合いって普通だと思っていたので、
なんか、ひどく恥ずかしかった。
俺は次の日、
早速糞回収を始める。
謎の光を無効化する能力と聞いて、
なんてラッキーなんだと思ったが、
まさか糞の回収をするはめになろうとは、
考えてもいなかった。
こんなにオイシイ立場になるなんて、
やっぱりラッキーだ。
俺は一人黙々と糞の回収をする。
アルフレッドとマックンは、少し離れたところでお花見をしている。
何を話しているんだろう。
俺は会話の内容が気になっていた。
「なんか面白い話があったら、混ぜてな」
俺は叫んだ。
アルフレッドはニコニコして手を振っている。
あぁ可愛いな。
ほんま俺幸せやな。
あんな可愛い仲間ができて。
マックンもニコニコして手を振っている。
あぁピカピカやな。
おでこが今日も光っとるわ。
そういえば昨日マックンと風呂に入った時、
風呂上がりに、頭全体に油を塗ってたわ。
「頭を光らせるためか?」
俺が言ったら、
「オイル塗っておかんと、乾燥する」
と言ってたわ。
どうでもいいけど。
しかし、さっきからなんか視線を感じるんやけど、なんやろ。
俺は視線を感じるほうを見る。
すると、一匹の角の立派な鹿馬がこっちを見ていた。
「人間よ。ようやく気が付いたか」
角の立派な鹿馬は言った。
俺は目をそらす。
厄介そうな奴や。
スルーしよ。
「ひゅーひゅーひゅー」
俺は口笛を吹く。
「私は鹿馬の王」
角の立派な鹿馬は言った。
鹿馬の王……。
さすがにスルーしたらあかん奴か。
「あんたが有名な鹿馬の王か……。たしか名前は……」
俺は首を傾げた。
「偉大なる英雄王だ」
角の立派な鹿馬は言った。
「そうそう。偉大なる英雄王さんや。それでどうした?」
俺は尋ねた。
「うむ、人間よ。お前は我らを飢えから救った」
偉大なる英雄王は言った。
「飢えから救ったって?俺なんかしたか」
俺は尋ねた。
「うむ、我ら鹿馬は、人からの貢物にて生きておる。それが最近、すっかり貢物が減ってしまって困っておった」
偉大なる英雄王は言った。
「おう。それで、なんか俺がしたか?」
俺は尋ねた。
「お前が来て、人間達のさくらんが収まり、これで元のように貢物が貰えるはずだ。礼を言う」
偉大なる英雄王は言った。
「それやねんけどな。貢物が減ったんは、お前らがあちこちに糞をするからやで」
俺は答えた。
「糞は縄張りの印。あちこちにするのは本能だ」
偉大なる英雄王は鼻息を荒くした。
「怒らんといてや。別に悪気があるわけやない。でも気になるんや。昔はこんなことはなかったんやろ。なんで急にこんなことになった」
俺は言った。
「うむ。おそらくだが、フンコロガシ族との対立のあたりがきっかけだろうな」
偉大なる英雄王は目を細めた。
「フンコロガシ族との対立ってなんや」
俺は言った。
「……すまん。忘れた」
偉大なる英雄王は答えた。
「知っとるものおらんのか?」
俺は言った。
偉大なる英雄王は、配下の者を呼び寄せる。
配下の者は偉大なる英雄王に耳打ちをする。
「思い出した。
私たちが毎日毎日糞をしても、フンコロガシ族が糞を持ち帰るので、喧嘩になったのだ」
偉大なる英雄王は答えた。
フンコロガシ族ってなんやろ。
フンコロガシって虫のことやろな。
「フンコロガシって虫やろ」
俺は尋ねた。
「見かけによらず賢いな」
偉大なる英雄王は言った。
「ははは。その通りや。
フンコロガシは何を食ってるか知ってるか?」
俺は尋ねた。
「あんな虫けらの食べるものなど知るか」
偉大なる英雄王は叫んだ。
ものすごい圧が来る。
その圧に、
おしゃべりをしていたアルフレッド達も気が付いたようだ。
「フンコロガシはな。動物の糞を食べるんや」
俺は答えた。
「……ななな、なんとおぞましい」
偉大なる英雄王は眉間に皺を寄せる。
「そんなもん、別にええやんけ。ちゃうねん。よう考えてみ。
お前らの糞があると、人間はさくらんするわな。」
俺は言った。
「そうだ。それは今回の件でわかった」
偉大なる英雄王は頷く。
「人間がさくらんすると、クッキーを貰われへんわな」
俺は言った。
「そうだ。人間がさくらんすると、クッキーは貰えない」
偉大なる英雄王は言った。
「じゃあ、お前ら自分で糞を片付けられるか?」
俺は尋ねた。
「我らは、高潔なる魂を持つもの。糞を片付けることなどない」
偉大なる英雄王は首を思いっきり上げた。
「じゃあ、もうクッキーは貰われへんな」
俺は答えた。
「人間よ。お前が片付ければよいではないか?いや、お前に片付けさせてやろう」
偉大なる英雄王は言った。
「嫌やわ」
俺は首を振った。
「なんと。何が不服だ。こんなに名誉のある仕事なのに」
偉大なる英雄王は言った。
「違うねん。俺の代わりがおんねん。そいつに頼もうと思ってる。どないや」
俺は尋ねた。
「そうか。代わりがおるのか?わかった。そいつに任せることを許可する」
偉大なる英雄王は言った。
「よし、商談成立や。おい!ここにフンコロガシ族おるか?」
俺は叫んだ。
どこからともなく、フンコロガシが集ってきた。
「これは憎きフンコロガシ族。また出てきたか」
偉大なる英雄王は叫んだ。




