さくらん
「あなた達何なの?なぜ私達サキュバス三銃士の魅了が効かない?」
黒いドレスの女は叫んだ。
なんか意味はわからん。
どう答えよう。
「俺を誰やと思ってる!」
俺は叫んだ。
沈黙が走る。
「馬糞のエドガーさんだぞ!」
アルフレッドは言った。
「そうだ。あの馬糞のエドガーファミリーだ」
マックンは言った。
アルフレッドとマックンは目を見合わせて、
グッジョブポーズを送り合っている。
なんやねん。
馬糞のエドガーファミリーって。
お前らそれでええんか?
「馬糞のエドガーファミリー?覚えておくわ。
私達サキュバス三銃士。
いずれこの借りは返させてもらうわ」
黒いドレスの女は言った。
借りは返させてもらうって律儀な奴やな。
「そんなんええで。
焚火しばらく使わせてやっただけやし。
もう行くんやったら、気を付けて行きな。
あとそんなに露出してたら、蚊に刺されんで」
俺は言った。
サキュバス三銃士は去っていった。
「あれサキュバス三銃士って言ってましたね」
アルフレッドは言った。
「あぁ、たしかに特別指定悪魔だ。なんでこんな所に」
マックンは言った。
「あれって、たしかナエールを使わないと魅了で廃人にされるとか。大丈夫でした?」
アルフレッドは言った。
「俺は気が弱いから、ずっと光で目くらましてました」
マックンは言った。
「僕はあんまり興味がなくって。エドガーさんは大丈夫だったんですか?」
アルフレッドは俺を見た。
なんや。俺は試されているんか。
そや。
こういう時はこのセリフや。
「何を言ってる。俺は愛の戦士やで。好きな相手しか興味はない」
俺はニヒルな声で言った。
沈黙が走る。
「明日も早いことだし、とりあえず交代で休みましょうか」
アルフレッドが言い、交代で焚火の番をすることになった。
蚊や虫が集っては、焚火の中に飛び込んでいく。
「飛んで火にいる夏の虫とは、こういうことやな」
俺はつぶやいた。
俺は思い出していた。
家の冷蔵庫に残したプリンのことを。
スーパーで3p98円の特売のプリン。
2つをペロッと食べたが、
もう一つは、
仕事から帰って食べようと思ってたのに。
食べずに、カマキリにやられてしまった。
こういうのって地味に切ないねんな。
今更、元の世界に戻っても、
プリン食べられへんやろな。
……
翌朝、
俺たちはふたたびニャーラに向かって歩き出す。
そして昼過ぎ頃にニャーラに到着した。
俺たちは依頼主であるニャーラの村長のところに向かった。
「冒険者ギルドから、やってまいりました」
アルフレッドは言った。
「あぁありがとうございます。事情はこちらのほうで……」
村長は言った。
村長は事の次第を説明してくれた。
「しかし、なぜ錯乱するんだろうな」
俺は言った。
「そうですね。現場に行ってみないと」
アルフレッドは言った。
「俺もそう思う」
マックンは言った。
「では現場に向かいましょう」
村長は言った。
村長の家から15分ほどの、桜が乱立する公園に俺たちは向かった。
桜は8分咲きほどで、緊張していた俺たちの心はほぐれた。
「心が癒されるでしょ。でもここに来ると皆の心が錯乱するのです」
村長は溜息をついた。
あちこちに、鹿のような馬のような動物がいた。
「なぁ、あれは鹿馬か?」
俺は尋ねた。
「はい。そうです。あそこに売っているクッキーをあげると懐きますよ」
村長は指をさした。
「あとで試してみます」
俺は言った。
「しかし、この辺りは眩しいですね」
アルフレッドは言った。
「そうだな、眩しいな」
マックンは言った。
眩しい?俺には眩しくないが……
「そうなのです。前はこんなことはなかったのですが、最近眩しくなったのです」
村長は答えた。
これは何か関係がありそうだ。
「もしかして、錯乱する人が現れた時期と同じなのでは?」
俺は尋ねた。
「そういえば、同じかもしれません」
村長は答えた。
「アルフレッド。眩しいのはどこだ?」
俺は言った。
アルフレッドは目を押さえながら、
「ここら辺りです」
アルフレッドは指をさした。
じっとその辺りを見る。
これは……、
鹿の糞か?
まさか……。
「村長。火箸のようなものとカゴのようなものはあるか?」
俺は尋ねた。
「ちょっと待ってください」
村長はそう言い、近くの小屋に向かった。
「こちらです」
村長は火箸とカゴを俺に手渡した。
俺は火箸で鹿の糞をカゴに集め出す。
5分ほどで、木の下の鹿の糞はあらかた回収できた。
「これでどうだ?まだ眩しいか」
俺は尋ねた。
「ここの眩しさはありません。何をされたんですか?」
アルフレッドは尋ねた。
「この下には多量の糞があったんだ」
俺は答えた。
「もしかして、それで謎の光を発してたと」
マックンは言った。
「そんなことがあるんですか?」
村長は不思議そうな顔をした。
「これを見てくれ」
俺はカゴを指さす。
「おぉ。今度はこちらが光ってる。もしかして、これが錯乱の原因ですか?」
村長は言った。
「どういうことですか?」
アルフレッドは俺をじっと見た。
「さくらん……。さくらの下にうんこ。だからさくらんしたんじゃねぇか?」
俺は呟いた。
「あぁ……。うん。さくらの下に“ん”で、さくらん。ありえるかもしれない」
マックンは言った。
「それなら、納得です。試しにこの糞を取り除いて、錯乱するかどうか試してみましょう」
村長は言った。
「そうだな。みんなで手分けしてやろう」
俺は言った。
「エドガーさん。光が見えないのは、エドガーさんだけです」
アルフレッドは言った。
ななんと……。
「あぁそうか、そうだな」
俺は言った。
「すまない。手を貸せない」
マックンは言った。
「申し訳ない。
とりあえず、ここの区画だけにしましょう。頼む」
村長は言った。
3時間ほど、その区画を掃除して、糞はほとんど回収した。
村長は村人を呼び、錯乱するかどうか試した。
村人達は躊躇していたが、観光収入がかかっているので、しぶしぶ引き受けた。
結果は錯乱は起きず、だった。




