鹿馬の王子
フンコロガシ達はたじろぐ。
「ちょっと待て。こいつらは、俺の代わりや」
俺は言った。
「なあお前ら、俺の代わりに糞の片付けしてくれるか?」
俺は尋ねた。
フンコロガシは、一斉にクルクルと回りだす。
たぶんこれはOKというサインだろう。
「OKやったら、この糞を持っていってくれ」
俺は手振り身振りで伝える。
一匹のフンコロガシが糞に近づく。
そして転がし始めた。
俺はうなづく。
他のフンコロガシも一斉に糞を転がし始めた。
「おぉ。わかった。フンコロガシはお前の代わりだ」
偉大なる英雄王は言った。
「わかってくれたらいい。ほんならな」
俺はアルフレッド達のところに向かおうと立ち上がる。
「少し待て人間よ」
偉大なる英雄王は言った。
「なんや。まだなんかあるんか?」
俺は尋ねた。
「礼をまだしておらん」
偉大なる英雄王は答えた。
「礼とかそんなのはいらんよ」
俺は言った。
「私の息子をあなたに貸し出そう」
偉大なる英雄王は答えた。
俺は英雄王の股間を見る。
「ダメや。人間にはサイズが大きすぎる」
俺は言った。
「愚か者。私の5番目の息子をお前に貸し出そうというのだ」
偉大なる英雄王は言った。
「エドガーさん、鹿馬を仲間にするチャンスですよ」
アルフレッドは言った。
近くにいることに気が付いていなかったので、驚いた。
「うわビックリした。おったんか」
俺は言った。
「いましたよ。鹿馬を仲間にするチャンス。しかも絶対高レベルですよ」
アルフレッドは言った。
マックンも頷いている。
「そうか。じゃあまず会わせてくれ」
俺は言った。
「ベンジャミンここへ」
偉大なる英雄王は叫んだ。
颯爽と一匹の鹿馬が近づいてくる。
「父上、お呼びでしょうか?」
ベンジャミンは尋ねた。
「事情はわかるな。この者達について行け」
偉大なる英雄王は言った。
「……しかし父上、私は人間などに従いたくありません」
ベンジャミンは首を振った。
「私の命令が聞けぬのか?」
偉大なる英雄王は言った。
「……しかし父上」
ベンジャミンは言った。
「ちょっと待ってくれ。
嫌がってるやん。
やめようや。
こんな高貴なお坊ちゃんやなくて、普通の鹿馬でいいで」
俺は止めた。
「ちょっと待て人間。お前いまなんて言った」
ベンジャミンは言った。
「俺はニヒルなダンディやって」
俺は答えた。
「そんなことは言ってないだろう。高貴なお坊ちゃんって言っただろう」
ベンジャミンは叫んだ。
父親ほどではないが、圧がスゴイ。
「事実ちゃうんかい」
俺は尋ねた。
「俺はな。お坊ちゃん扱いされるのが、一番嫌いなんだ」
ベンジャミンは言った。
「そうか。すまんかった。
悪気はないんや。
でもな俺らは身分の低いものやから、
君のような高貴な方が来られるところじゃないと思ったんや」
俺は言った。
「父上、この者達に同行いたします」
ベンジャミンは頭を下げた。
「いや。
やめときって、
腹が立つと思うで」
俺は言った。
「わかった。ベンジャミン励め」
偉大なる英雄王は言った。
「はっ」
ベンジャミンは頭を下げた。
「エドガーさんよかったですね。僕はアルフレッド、彼はエドガーさん、こっちはマックン、よろしくベンジャミンさん」
アルフレッドは言った。
「アルフレッド殿、エドガー殿、マックン殿、よろしくお願いいたします」
ベンジャミンは頭を下げた。
「しかし、ベンジャミン。本当に良かったのか?なにかやり残したこととか、なかったか?」
俺は言った。
「……クッキー」
ベンジャミンは呟いた。
「鹿用のクッキーなら、さっき村の人に作り方のレシピ聞いたから、俺が作れるよ」
マックンは言った。
「なんと。マックン殿。それは本当でござるか?」
ベンジャミンは尋ねた。
「うん。宿で厨房を借りて作れるし、とりあえず当面の鹿用のクッキーを買いだめしておくと、良いと思う」
マックンは言った。
「かたじけない。エドガー殿、先ほどは失礼いたしました。粉骨砕身あなたがたにお尽くしいたします」
ベンジャミンは頭を下げた。
「尽くすとか、粉骨砕身とかいらんよ。仲間やから、仲間で仲良くやろや。上下関係なしに」
俺は言った。
ベンジャミンは何も言わなかった。
しかし、
ベンジャミンの目が潤んでいるように感じた。
ベンジャミンはいったいどんな馬生を送ってきたのだろう。
少し俺は気になった。
しかし、
過去を聞かないのが、このパーティの暗黙のルール。
俺は何も聞かないことにした。
ふと気が付くと、公園は一面フンコロガシだらけだった。
鹿馬達は、フンコロガシを踏まないように、じっとしている。
「エドガーさん。あなたはとても弱そうだ。そしてアホそうだ」
ベンジャミンは俺を横目で見た。
「完全にけなしてるよな」
俺は笑った。
「……しかし、私はあなたに学ぶ点を見た」
ベンジャミンは俯いた。
「学ぶ点?」
俺は言った。
「そうです。あなたには逆境をものともしない強さがある」
ベンジャミンは言った。
「買いかぶり過ぎや。俺は強くはない。ポンコツや」
俺は吐き捨てるように言った。
「そう思います。きっとあなたはポンコツでしょう」
ベンジャミンは言った。
「どっちやねん、褒めてるんか。けなしているのか?」
俺は笑った。
「ふふふ。どっちなのでしょうね。あなたを見てると腹が立つ。しかし同時に羨ましくもある。そして眩しくもある」
ベンジャミンは目を細めた。
「その気持ちわかるわ。腹が立つけど、羨ましくも、眩しくもあるって」
マックンは言った。
どっちなんやろ。
褒められてるのか、けなされているのか。
まぁ微妙やな。
「なんか、微妙な表現やな」
俺は言った。
「そうなんです。あなたは微妙なのです」
ベンジャミンは言った。
「たしかにエドガーさんは微妙ですね」
アルフレッドは笑った。
なにこのアルフレッド。
クソ可愛い。
微妙とか言われても、腹立たんのやけど。
「ただ一つ言えるのは、あなたは多分最強になるのだと……。
そう思うのですよ」
ベンジャミンは言った。
アルフレッドもマックンも頷いた。
「そして私は、それを見届けたい。イエスマイロード」
ベンジャミンは頭を下げた。
俺はベンジャミンの頭を撫でる。
こんなに慕ってくれる仲間がいるって、
俺はなんて幸せなんやろう。
もしかして、あのカマキリは幸運のカマキリやったんかもしれん。
そして冷蔵庫に残してきたプリンは、
ささやかな捧げ物やったのかもと俺は思った。
それに俺が最強になるって……?
ほんまかいな。
END
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は完結していますが、
反響があれば続編を書く可能性があります。
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