85.魔王様?
久々予定通りに金曜更新できた
「それでは皆様、ご案内いたしますぅ。メイドたちぃ」
俺たちがエリカの自己紹介に驚くまもなく、彼女はパンパンと両の手を叩いて音を鳴らした。
シーン。
暫く待ってみるが何も起こらない。
「ではこちらへどうぞぉ」
「自分で案内するんかい!」
「? 当たり前じゃないですかぁ。ここにいる魔王様の従者はぁ、私だけですからぁ」
なら何でさっき他のメイドを呼んだんだ。その言葉が口から飛び出しそうになるが、ヘクスが俺の肩をポンと叩いてそれを諫めた。
仕方なく口から出そうになった言葉を飲み込む。
さっきからエリカのペースにまんまと乗せられているような気がするが、突っ込んだら負けな気がする。こいつを作ったやつは相当性格がねじ曲がっていたのかもしれない。
エリカについて通路を暫く歩くと、やがて遠くで通路の側面から光が漏れているのが見える。どうやら何かしらの部屋のようだ。
彼女に連れられ部屋までたどり着くと、エリカは部屋の中に礼をした。
「失礼しますぅ。魔王様ぁ」
エリカの言葉に俺たちは体を強張らせた。
魔王とは、かつてこの世界を滅ぼそうとした存在。世界に絶大な影響を与え、多くの人間を絶望の淵に追いやったと言われている。
多くの魔族を従え蹂躙の限りを尽くし、人間を滅ぼす一歩手前まで至った。しかし勇者によってその野望は打ち砕かれ、世界に平和が齎された。世界で最も有名なおとぎ話である。
しかし魔王という存在は実在する。現に俺たちも公国で文字通り魔王の右腕と戦ったが、アミミ達の力では倒しきるまでには至らなかった。
もしもあれが力の一部だとすれば、完全に復活した場合、あの時の数倍の力を有しているはずだ。そうなれば俺が戦っても恐らく勝てないだろう。
それだけの力を持った存在が、今この先にいる。
気配はまるで感じられないが、それは逆に自分の力を隠すことができるということ。相手に実力を悟らせないようにできる。これだけでも、かなりの実力を持っている可能性がある。
皆はエリカの言葉に動けないでいた。当然だ。この先にこの世界でも最強の生物がいるかもしれないのだから。
何かあっても皆を守れるよう、俺は収納から一振りの刀を取り出す。
小ぶりの打ち刀。名を霰丸。防御特化の刀なので、この場では最適だろう。
皆を背に隠すように、エリカについて部屋へと進み入る。
「あ、エリカ。おかえりなさい」
「ただいま戻りましたぁ、魔王様ぁ」
「だーかーらー、私は魔王じゃないってばぁ」
「……ん?」
エリカの背に隠れて声の主の姿は見えない。しかし妙に聞き覚えのある声だ。
そう、この声はまるで……。
「あれ? 誰かいるの?」
エリカの向こう側で椅子を引く音が聞こえ、魔王なる者の足音が聞こえる。エリカの背中から少しそれた場所に、魔王の姿が表れた。
魔王は年端も行かない少女の姿をしていた。燃えるような赤い髪で、赤を基調とした洋服を着ている。後ろで結わえた髪の毛が歩くたびにぴょこぴょこと上下していた。吸い込まれそうに美しい朱色の瞳が、こちらに向けられる。
「うわっ。きれいな人ね。誰かしら?」
「お前……アルティスだよな?」
「え?」
俺は思わず少女の名前を口にする。それが間違っていないことを示すように、少女は驚いた表情をしていた。
「え? アルティス殿でござるか?」
俺の声が聞こえたのか、アミミがぴょこりと廊下から顔を出し、親友の姿を見つけると満面の笑みを浮かべて走り寄ってきた。
そのままの勢いでアルティスに抱き着いた。
「アルティス殿―。久しぶりでござるー!」
「うわっ。ちょっと、アミミ。どうしてこんなところにへぶっ!」
アルティスは飛びついてきたアミミの体を受け止め―――――切れず、アミミの頭が鳩尾に直撃して体を折り曲げながら倒れ込んだ。
それでもアミミは余程嬉しかったのか、アルティスの名を叫びながらぎゅっと抱き着いて喜んでいるようだ。
「ふふふ。トールは魔王とも知り合いだったとはね」
「いやいや、そんなわけないだろう。あいつは魔王じゃなくて聖女だぞ」
「ふふふ。聖女……。聖女……! 魔王もいいけど、聖女もそそられる」
ヘクスは涎を垂らしながらアルティスのことを眺めていた。こいつ、絶対研究対象にするつもりだな。
どうにもヘクスは興味が先行してしまい人の気持ちを顧みないことが多いので、後でしっかり言い聞かせておこう。
アルティスは痛みをこらえながら上半身を起き上がらせる。
「ア、アミミ。あなたどうしてここに……?」
「船に乗ってきたでござる。アルティス殿は何故ここにいるでござるか?」
「うーん。色々あってね。それはまた後で話すわ。それより、アミミがここにいるってことは、トールも来てるの?」
アルティスはキョロキョロとあたりを見回す。だが俺を見つけられないのか、一向に視線がこちらを向かない。
そういえば今は女装してるんだったか。声まで変えてるから、先ほどの発言では気づかないかもしれない。
するとアミミが俺の方を指さす。
「あれでござるよ」
「あれ?」
剣の先生をあれ呼ばわりとは失礼な。アミミは後でお仕置きだな。
「あの綺麗な人がどうかしたの?」
アミミから指し示されても俺がトールだと気づかないていないようだ。
ここで女装を解いてもいいのだが、そうするとリエッタが騒がしくなりそうなので、不本意ながら今はこの姿のままの方がいいだろう。
俺はアルティスの元まで近寄ると、変声用の風魔法を解く。
「あーあー。アルティス、トールだ。わけあって、今はこんな格好をしていてな。一応アミミの姉、という設定になっている」
アルティスは俺の声を聴いて正体を理解したのか、しかし目を見開いたまま口をパクパクさせていた。
顔の前で手を何度か往復させるが治る気配はない。
そのままじっとアルティスの顔を眺めていると、何度か目を瞬かせようやく正気に戻った。
「えっと……あなた、トールなの?」
「ああ。ちょっとかつらつけて服装変えてるけどな」
「そ、そう。元気そうでよかったわ。……なんで普通の女の子よりキレイなのよ」
「ん? 何か言ったか?」
「何でもないわよ!」
最後の方はよく聞こえなかったが、取り合えずアルティスも元気そうでよかった。
このまま倒れっぱなしと言うのもあれなので、取り合えず彼女を助け起こすため手を差しだす。アルティスは一言礼を言って俺の手に自分の手を重ねた。
アルティスの華奢な手を引っ張り上げ立たせてやる。
「んー、おほん。さて、色々聞きたいことがあるんだが……。エリカ、一先ずみんな席に座ってもいいか?」
「はい。構いませんよ。皆様はお客様ですから」
「そうか。んじゃそうさせてもらうよ」
アルティスが座っていたであろうテーブルには片側6席、計12人分の椅子が並んでいる。その中のひとつ、ちょうどアルティスが座っていた席の対面に腰掛けた。
アルティスもトコトコと歩いて、俺の隣に腰掛ける。
いつの間にか俺を挟んだ反対にヘクスが腰掛けていた。
「先を越されたでござる!」
アミミがひとりで頭を抱えながら悶絶している。と言うか、アルティスと向かい合わせになるよう座ったつもりだったのだが、何故こいつは俺の隣に座っているのか。
ベルベッタ達も各々好きな席に着いたようだ。
アミミは悔しげに顔を歪ませていたが、ため息をひとつ吐いて俺の膝の上に着席する。
その様子に左右の女性陣がギョッと目の色を変えた。
「て、何故そこに座る」
「仕方ないでござろう。他に席が余っていないのでござるから」
「いっぱい余ってるように見えるのは気のせいか?」
周囲を見回すと空席がいくつか見受けられる。それも当然。俺たち8人に対して12席用意されているのだから。
俺がそう問いかけると、アミミは自信満々に答える。
「そんな事はないでござる。それに、姉妹は仲良くした方が良いモノでござるよ」
なるほど姉妹か。確かにその設定から考えると、そこまで不自然ではないのかもしれない。
とは言え欺きたいのはリエッタしかいないわけだが。
まあアミミはまだ子供だ。甘えたい盛りなのだろう。
俺はアミミの耳元にそっと顔を近づける。息がかかるくらいの距離に、アミミが身を捩らせた。ふっと息を吐くくらいの小さな声で囁く。
「なら後でたっぷり修行してやるから覚悟しておけ、我が妹よ」
途端にびょんとその身が強ばり、俺の膝の上でアミミの背筋がピンと伸びた。肩が小刻みに震えているが、後ろ姿しか見えないのでその表情は窺えない。
「ではぁ、始めましょうかぁ」
「…………」
さっきまでアルティスが座っていた俺の向かいの席に、何故かエリカが着席してそう言った。
突っ込んだら負けな気がしたのでここはグッと堪える。
するとエリカがじっとこっちに視線を向けた。俺の視界に手のひらを向けて上下させる。
「あらぁ? 反応がないですねぇ。壊れてしまったんでしょうかぁ?」
「誰が壊れてんだ! こちとらツッコミ製造機じゃねーぞ!?」
思わずツッコんでしまった俺に、彼女はニコリと笑みを浮かべて『ありがとうございますぅ』と返した。何と言うか、ちょっと芸人気質を感じるアンドロイドだ。
「もう突っ込むの疲れたから本題行っていい?」
「どうぞぉ」
溜め息をつきつつ、本題に入る前に自己紹介。
一瞬リエッタに名前がバレてしまって大丈夫かと気になったが、まあバレたらバレたでその時だ。
見た目が問題ないなら名前が一緒でも気にならないかもしれないしな。
「エリカには名乗ってなかったな。改めて自己紹介だ。俺の名はトール。んでこいつが」
「拙者はアミミでござる」
「ボクはヘクスだ。よろしく」
「私はアルティスよ」
「みなさんよろしくお願いしますぅ」
エリカはニコニコと笑みを浮かべている。機械だから心があるわけではないのだろうが、その表情は本当に喜んでいるように見えた。
ベルベッタ達も、エリカに自己紹介を終えて、全員の顔と名前を認識したところで本題だ。
「で、どうしてアルティスがここにいるんだ? それにゲロとカスはどうした?」
「呼んだでやんすか?」
「呼ばれたでガス?」
「……」
部屋の奥の扉からズバッと登場したのは、ひょろりとした男とずんぐりむっくりな男のゲロカスコンビだ。
皆の視線が一斉に2人に向く。
沈黙がその場を支配したが、耐えかねた2人はそっと扉の奥へと戻っていった。
改めて自己紹介するのも面倒なので、2人は放っておくとしよう。
「で、どうしてアルティスがここにいるんだ?」
「ゲロカス殿を華麗にスルーしたでござるな」
「面倒を回避したと言ってくれ。てゲロカス殿って地味にひどいな。で、アルティスはどうして?」
「話すと、それはそれは長くなるんだけど」
「手短に頼む」
「……何だか私の扱いがちょっと雑になってない? まあいいわ。簡単に説明すると、盗賊に襲われて海に飛び込んだらここに着いたの」
「ほんとに手短でござるな」
長い話になるかと思いきや、思いのほか、と言うか思った以上に短かった。そして何故そうなった。
理解できたのは盗賊に襲われて海に落ちたというところだけだ。
恐らく、アルティスたちを襲った盗賊と言うのは俺たちが対峙したリーリール率いる白狼盗賊団たちだろう。確かあの時前日に3人逃がしたと言っていたが、それがアルティスたちのことだったとは。
しかし海に落ちて助かるなんて、一体どんな奇跡が起きればそうなるのか。
正直湾岸からこの島まではかなりの距離だ。しかも瘴気に満ち溢れた海の中、魔獣に襲われることなくここまでたどり着くなんて、普通に考えて不可能である。
俺はアルティスに事情を問いかけて見たが、帰ってきたのは分からないという言葉だった。
「んー。あの時は落ちたことに驚きすぎて、ちゃんとは覚えてないのよ。ただ何か光に包まれたと思ったら、動物が表れて助けてくれた気がするのよね。で、気づいたらこの島にたどり着いてたから、ほんとに何があったのかよく分からないのよ」
「お魚さんが助けてくれたでござるか?」
「魚じゃなかったと思うんだけど。なんかイタチとか犬みたいな、毛の生えた動物だった気がするのよね」
「……」
ヘクスが俺へと疑わし気な視線を向けてくる。
その圧力に耐えきれず、俺はついっと目を逸らした。
「……」
ヘクスはなおも俺の顔の前へと自分の顔を持ってきてジト目でこちらを見続ける。その様子を流石に不思議に感じたのか、アルティスとアミミも俺へと視線を向けた。
「アルティス君。それは茶色い毛をしていて、手はブラシのように毛が広がり後ろ脚は犬のようになっていたんじゃないかな?」
「え? ……うん。確かそんな感じだったと思う」
「そうかそうか。……トール、詳しく話を聞かせてもらってもいいかな?」
ヘクスはにこりと笑顔を浮かべるが、薄く開かれたその目は非常に冷たいものだった。そのあまりの迫力に、背筋がゾクリとする。
あまりの迫力に耐えかねた俺は、ぽつりと言葉を漏らした。
「あー、まあ、安全のためにだな……」
「ふーん。安全のためかぁ。随分とアルティス君に優しいんだね」
「だねぇ」
何故かエリカまで笑みを浮かべてヘクスの言葉に乗っかってくる。
事情の呑み込めないアミミとアルティスは、俺とヘクスの顔を交互に見ると、疑問の表情を浮かべながらおずおずと尋ねる。
「えっと……。どういうこと? トールが何か関係してるってこと?」
「ふふふ。そうだね。アルティス君の前に現れたのはトールの使役している精霊だと思うよ。確か名前は、アルマキネだったかな? 主人のピンチに飛び出して助けてくれるお助け精霊なんだ」
「お助け精霊でござるか? でも持ち主とはトール殿なのではござらぬか?」
「それがね、一時的にその権限を譲渡できるんだよ。だからアルティス君にそのアルマキネを事前に渡していたんだろうね」
「え? 私そんなの貰ってないわよ?」
「本当にそうかな? 君は何か、トールからプレゼントを貰ったりしたんじゃないかい?」
ヘクスからそう問われて、アルティスははっとした表情になる。
俺は少しだけ視線を上にあげ、何もない空間をじっと眺めた。
「えっと……。えと、えっと……」
ぷしゅーと頭から煙が出たように、一気に顔を赤くしたアルティスは俯いてしまった。その様子に、ヘクスの口角がひくひくと引きつる。
「ふふふふふ。トール。キミはいつから、そんな女たらしになったのかな?」
「? 一体どういうことでござるか? 拙者にも説明して欲しいでござるー」
アミミだけがよく分からないという風にきょろきょろと視線を彷徨わせていた。
「ふふふ。まあ、精霊のことは後でゆーーーーーーーっくり、聞かせてもらうよ。一緒のベッドにでも入りながら、ね」
「「!」」
最後の言葉は俺の耳元で囁かれたのだが、アミミとアルティスの耳にもしっかりと届いていたようで、ぎゅるんと怖いくらいの勢いで顔がこちらに向いた。いや、ヘクスの表情からすると態とギリギリ聞こえる声音で言ったのかもしれない。
俺は無表情になって目を瞑りながらじっとするが、膝上と隣から冷たい視線に晒されて妙に居心地が悪い。
このままでは針の筵なので、無理やり話題を切り替える。
「ま、まぁ、アルティスが無事なのは何よりだった。あの海に落ちて助かるなんてほんと奇跡だからな。ほんと。それより、エリカはどうしてアルティスのことを魔王って呼んでんだ?」
少し不自然な話題の転換に訝し気な様子だったが、アルティスは俺の質問に答える。
「それがよく分からないのよね。ゲロとカスと一緒にこの島にたどり着いたんだけど、なぜか私だけ魔王様って呼ばれるのよ。全く困っちゃうわよね。聖女のイメージが崩れちゃうもの」
そもそも現代に聖女はアルティスしかいないと思うのだが。それに公にしてないから、仮に民衆に知れ渡っても崩れるようなイメージはないと思う。
勿論、反論すると責められそうなので口にはしない。
結局アルティスも理由は知らないようなので、魔王様呼ばわりする張本人、エリカに聞いてみる。
「エリカ。なんでアルティスだけ魔王様なんだ?」
「それはぁ、魔王様が魔王様の血を引いてるからですよぉ」
「魔王の血!?」
おっとどっこい。これはまた衝撃的な事実が判明した。と言うことは、アルティスは聖女でありながら魔王の血族と言うことか。
正直魔王の血が現代に引き継がれていることに驚きだが、それがまさか相反する聖女と言う存在に流れているとは。他の誰よりも、アルティス自身が一番目を見開いて驚愕している。
しかしさらに衝撃的な言葉がこの後に待っていた。
「でもアルティス殿は聖女でござるよ? なのに魔王の血が流れているでござるか?」
「そりゃぁ、そうですよぉ。だってぇ、魔王様と聖女様は夫婦ですからぁ」
「魔王と聖女が夫婦!?」
ヘクスが椅子から飛び上がって目を爛々とさせている。
確かにエリカの説明が本当だとすれば、アルティスが聖女でありながら魔王の血を引いているという説明はつく。これが正しければ、だが。
そもそもアルティスが魔王の血を引いているという前提自体、正しいかどうかわからない。それを言っているのはエリカだけなのだから。
そして大昔、魔王と聖女が夫婦だったというのも、今この場では証拠も何もないのだ。
「それが本当かどうか証明できるのか?」
「いいえぇ。時が経ちすぎてぇ、証拠は残っておりませんねぇ。魔王様のお部屋に入れればぁ、或いは何か記録があるかもですがぁ」
「その言い草だと、魔王の部屋にはお前ですら入れないのか?」
「はいぃ。魔王様か奥方様、御子息の魔力を認識して扉が開きますのでぇ。その血を引いている子孫のかたであればぁ、或いは開けるかもしれませんねぇ」
それが事実なら、か。
まあ疑っても結論は出ないので、今はエリカの言葉を信じることにするか。
「ふふふふふふふふ。ボクは是非とも、その魔王の部屋に入ってみたいのだが!」
「へ、ヘクス殿?」
先ほど椅子から立ち上がった時以上にテンションが異常事態になったヘクスが、不気味な笑い声を上げながら肩を震わせている。目が血走って今にも誰かに飛び掛かりそうな雰囲気だ。
「トール殿! ヘクス殿がおかしくなったでござる!」
「ああ。こいつはたまにこんな感じになるから気にするな」
ヘクスは自分の頭で理解できる以上の未知に遭遇すると、大体こんな感じになる。恐らく興奮が理性を塗りつぶして制御できなくなるんだろう。
「うちのリーダーがこう言ってるから、是非ともその部屋に案内してもらいたいんだが」
「はいぃ。構いませんよぉ。ですがぁ、多少道のりが大変なんですよぉ」
「道のり?」
「はいぃ。実はぁ、警備用のアンドロイドがいましてぇ」
「それが何で大変なんだ?」
「それがぁ、長い年月を経て異常をきたしてまったようでしてぇ。誰彼構わず襲ってくるんですよぉ」
「それはまた……警備って呼べるのか?」
魔王がいた時代からもう1400年は経っているのだ。機械の類が壊れていても何ら不思議ではない。エリカと言う存在が動いていることこそ非常識に近い。
まあすべて本人申告なのでそれがどこまで事実なのかは分からないが。
「そんなわけでぇ、警備用アンドロイドぉ、倒してくださいねぇ」
エリカは蠱惑的な笑みを向けながら、どこか媚びるようにそう言った。
一家に一台エリカさん。掃除洗濯何でもござれ。でも料理はできません。




