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第9話 ソフトは呆けてハードは朽ちる

AI(人工知能 Artificial Intelligence)がブームだ。


近い将来、シンギュラリティ(技術的特異点 Singularity)を

迎え、人を超えるとさえ言われている。


私は近い将来、AIは呆(ほう)けで苦しみ終わると思っている。

製造業に30年以上従事してきた自身の経験から。


それは何故か?


インターネットが普及する前...オフラインの時代に既に経験して

いるから。

ブームが終わったらどうなるのか?

多くが廃棄され、使える残骸だけが残る。歴史は繰り返す。


AIはこれからオンラインという形で同じ経験をすると私は思う。


産業は日々進化しているように見える。

しかし残念ながら根底の部分は21世紀を境に殆ど進化していない。

プログラムや画像処理、ロボットによる自動化は1980年代に大きく

進化した。

FA(Factory Automation)やNC(数値制御 Numerical Control)装置等、

当時も省人や精密さが売りでした。


私が働き始めた頃は正に自動化全盛期でした。

交代勤務で24時間、スカラロボットが自動組立作業を行う。

盛んに動く沢山のロボットを見て、当時の経営者は誇らしげかつ

満足していたのだろうか。


だが入社して10年足らずで状況は一変した。

”自動化はもう流行らない”と言われ始めた。


プログラミングやロボット技術が否定される。

それらを磨いてきた私は今までの実績がリセットされてしまった。

ロボットラインは解体、廃棄されていった。

ハードウェアの老朽化が理由だった。


ロボットには沢山のモーターが使われている。それらは動いた分だけ

摩耗し、徐々に劣化していく。

劣化の先がエラーで停止するレベルなら良いが、時にエラーにならず

暴走する事態が発生する。

組立対象の部品や製品を壊すだけに留まらず、他の装置に激突すると

己(ロボット)そのものを破壊する規模となり悲惨だ。


稼働して時間が経つにつれ、摩耗や劣化によるエラーやトラブルが

増えていく。

修理や復旧の時間が増えると、生産性とコストの維持が困難になって

いく。これらを総称して『老朽化』と言われていた。


ロボットが無いとどうなるのか?人がする事になる。

一部の装置は人が使えるように改造した。先に述べた『使える残骸』だ。


ロボットライン業務を失った私は、改造や人への最適化に従事する

ようになっていった。


現在、AIはインターネットという通信技術を介して企業だけではなく

消費者を巻き込み社会全体でブームとなっている。

私が働き始めた自動化全盛期は、ハードウェアの比重が若干高め程度

だったのがAIはソフトウェアの比重が圧倒的に高い。


ソフトの比重が高い、つまりプログラムが主体になる。


モーター等のハードは摩耗や劣化で悪くなっていく。

ならば摩耗や劣化が無いソフトは大丈夫か?

ソフトは容量が肥大すると悪くなっていく。


ハードは減ると

ソフトは増えると問題が起き始める。


現在、そこらじゅうでデータセンターが建設されている。

それは利用者の増加以上にAIが必要とするデータが増えているから

だと私は考えている。


わかりやすく極端な例を挙げると


1 + 1 = 2


AIが2という答えを出す為に必要な電力は時間が経つにつれ増えていく。

何故増えるのか?オンラインで繋がっているからだ。

繋ぎ先のデータセンターは日々増えていっている。


残念ながら今のAIは、答えを出すに至る時間の短縮や効率の向上を

ソフトで考え実行するレベルになっていない。

人がAIに求める速度はハードのCPU(中央演算装置)やメモリ(記憶媒体)の

性能...つまりデータセンターに頼っている。


今はまだ見えていないが、近い将来ソフトの容量肥大がハードの

性能を超えた時、人が求める速度で答えが出せない状態となる

『呆け』が起き始める。

答えを出す為に必要な電力や冷却コストが利益に見合わなくなった時...。

AIも廃棄され使える残骸だけが残るのだろうか。



ソフトは呆けてハードは朽(く)ちる



30年前の自動化はハードの摩耗と劣化で朽ちた。

AIはソフトの肥大化で答えを出すのに時間のかかる呆けに陥るだろう。


これが私の見立てだ。


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