14.死闘の幕開け 前編
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臓腑がねじ切れるような威圧が轟く中、また天で会いましょうと告げた聖威師たちと別れた日香たちは、すぐに散開することなく一度立ち止まった。
狂った大量の神器の神威が何重にも交差しながら吹き荒んでいる現状、いつ念話が乱されて通じなくなってもおかしくない。一度別れてしまえば、満足に連絡を取り合えなくなるかもしれないのだ。
なお、至高神の神器が皇宮と帝城から出て暴れる恐れは低い。天威師の気が満ちている城宮に引き寄せられるからだ。至高神の神器に引きずられて狂っている最高神以下の神器も、それにぶら下がる形で、他の場所には行かないと考えられた。
とはいえ、高位の神器ともなれば、城宮内から力を放っただけでも全次元宇宙が瞬殺なので、何としてでも止めなくてはならない。今はまだ暴走したばかりで活動が活発化していないが、これから続々と被害を出し始めるだろうから。
「至高神の神器鎮静と並行して、始まりの神器を安全な場所へ離脱させなくてはならぬ。あれがなくなれば天威師は詰みだ。日香、あの馬鹿鳥はそなたが守れ」
「分かった、義兄様」
義兄が日香二号と呼ぶあの巨鳥型の神器は、当然ながら日香と最も馴染みが強い。
「あの子、今義兄様の宮にいるんだよね?」
「ああ。最近また肥えて来たゆえ、減量させていた」
「そ、そう……あっ」
秀峰と向き合った日香は不意に閃いた。
「義兄様、文書をたくさん書いてたよね。昇天した後は人への情を忘れちゃうだろうから、今の内に地上と人が好きだっていう心情を紙の上に残しておくって言って」
「確かに遺書の一部として書いている。だが、それがどうしたというのだ」
「それをお義父様方に読んでもらえば、少しだけでもお怒りが薄れないかな? 身内がこれほど愛する地上なら許してやろう……なんて上手く運ぶはずはないけど、焼け石に何もかけないよりは良いんじゃない?」
(ちょっとの水でも、ほんの少しくらいは効果が期待できるかもしれないよね)
そのほんの少しが、最後の最後で明暗を分ける可能性もあるのだ。秀峰は遺筆として地上に置いていくつもりだったのかもしれないが、ここで使ってしまっても良いかもしれない。
「始まりの神器を迎えに義兄様の宮に行くから、文書も持って来て良い?」
「構わないが、どうやってお読みいただくのだ。これを見て欲しいと声を上げたとしても、今の父上方にはこちらの声が届いておらぬ」
「太子たちが一生懸命呼びかけてるから、状況が好転するかもよ。私が超天に持って行って直接渡しても良いし」
始まりの神器を退避させた後は、日香も神器鎮静に参戦する。その中で昇天するであろうことは予測できていた。いつその日が来ても良いよう、常日頃から覚悟を決めてもいる。
「分かった分かった、そなたの好きにせよ」
今は時間がないのだと手を一振りし、秀峰は話題を先に進めた。
「始まりの神器は、神官府の中にある天堂の棟へ向かわせよ。天威の隔離結界に入れたとしても、また破られるやもしれぬ。となれば天堂しかない」
「なるほどですね!」
「神々と神格持ちが会議を行う時などに使用される、特殊な棟にありますものね。出入口こそ神官府にあるものの、棟の中は次元を隔てた異空間に通じており、地上には含まれない場所にある……」
テアがパチンと指を鳴らし、ミアが思案げに首肯した。日香も同意を示して首を縦に振る。
(副都の神器も天堂に隔離できれば良かったけど、それは難しいしね)
あの神器は都開きに伴い、地上に置くことを前提に贈られた物なので、地上と見なされない領域に移動させることはできなかった。地上に置くか、祖神にお返しして超天に戻すかの二択だ。
特例措置として一時的に天堂に移してから事後承諾をいただくとしても、菖蒲の死で大幅に機嫌を損ねるであろう祖神たちが、許諾をくれるかと言えば難しい。お返しするにしても勝手に超天に放り投げるわけにも行かず、祖神たちへの報告と承認が必要になる。
結局、勝手な行為をして後で承認を得られなければ大変なことになるため、天堂は使えなかった。
ありがとうございました。




