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贋作

 優れた原作は時に真作を超える——ルネ・マンティール——

 

 とある贋作師がいた。元は名家の三男坊で著名な美術大学を出るという大層な経歴の持ち主だった。しかし彼の手掛けるオリジナル作品は全くと言っていいほど売れず、当時の家計状況も相まって仕方なしに偽物を作ることにしたようです。


 そして皮肉な事に贋作づくりにおいて、彼は多大な才能がありました。誰も彼の贋作だと気づかなかった。むしろこれこそ有名画家の最後の遺作に相応しいと称賛されるほど。彼の作った贋作は道楽貴族のみならず、格式高い国立美術館にも買い取られていきました。


 誰も彼もが彼の作った作品を欲しがり、彼の嘘は誰にもバレることはありませんでした。何故なら彼は、既に故人となっていた複数の画家の、記録には残っているが実物が見つからない、幻と呼ばれるような作品の贋作を制作していたのです。


 これらの要素と、彼の天才的な商才により誰も彼を疑うことはありませんでした。ようやく秘密が暴かれたのは彼が亡くなって十年程経ってから。近年の科学的調査の結果と彼の制作した文書に差異があり、そこから彼の販売した作品が贋作であると次々に突き止められたのです。


 贋作を掴まされた人々の殆どは怒り、賠償を請求しようとしたものの当人は既に死んでいる。加えて彼に家族はいなかったし、遺していた財産も全て貧しい子供達へ寄付していた。

 これでは金銭の回収も難しい。ハンカチを噛み締めながら無理に返せと迫ろうものなら、贋作を掴まされた被害者だったのに逆に悪者になる始末。多くの人間が手痛い勉強代だと諦めました。


 一方で、この贋作師を評価する声も出てきた。なぜならこれほど多くの作家、作風を模倣しているにも関わらず、科学的調査がなければ贋作だと分からない程の技術が彼にはあった。そこから彼への評価は一変しました。


 史上最悪の贋作師から、天才的な模倣画家として。もちろん、彼の犯罪が全く無くなったわけではありません。しかしながら彼の作品がある種、「画家として正当な評価」をされ始めたのは事実です。また騙された人々が少しでも損を取り返そうと、作品の価値を高めるような動きをしたという背景もあります。


 そうすると熱心なファンも出てくるようになり、学術的な研究の対象にもなりました。あらゆる画風をモノにする彼の作品に表れる独自性も発見され、それが美術史における重要な転換点であると指摘する者もいます。

 そのため現代に於いて彼は「美術史上最悪の犯罪者」でありながら「各画風の特徴を的確に表した天才画家」として評価を受けており、彼の作品も「贋作」でありながら「天才画家の作品」として昇華したのです。


 そしてとうとう、彼の作品を集めた美術館が設立されました。そう皆様が現在いる場所です。それでは、ご案内いたしましょう。今目の前にある大きな絵、タイトルは「真実を伝える少女」。

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