砂時計
砂がサラサラと落ちてゆく。落ちた砂は小さく山を作り、上の砂はなくなれば止まる。同じ事がこの部屋にある大小様々な砂時計の中で起こっている。ここは死の淵、魂の管理場。人の命を見守る場。
人の命は砂時計として管理されている。逆さに返せば産まれ、砂が落ちきれば死。落ちきった砂時計は逆さにし、また新たな命として世に送られる。
砂時計の大きさは寿命の長さ。どんな時でも落ちる速さは変わらない。たとえ病気になろうとも、たとえ大怪我をしようとも。なんであろうと最初から死ぬタイミングと理由は決まっている。
ちょうど目の前で砂が落ちきった。小さく積もった砂の山ができている。どこかで誰かが亡くなった。会ったことはないけれど、静かに祈りを捧げましょう。
私は砂時計をひっくり返す。サラサラとまた砂が落ちる。どこかで新しい命が産まれた。見ることはできないけれど、密かに祝福を送りましょう。
同じ事を繰り返す。祈り、逆さにし、祝福する。ただそれだけ。砂の落ちる音と、私の足音だけが響く部屋。無機質な日々。
ある時一つの時計が割れた。それは私と同じくらい大きな時計だった。砂時計が割れること、それは魂の終わりを示している。そして私にとっては喜ばしい出来事が起こることも。
割れた時計のガラスを除けて、砂の山だけを見つめる。しばらくすると砂は徐々に集まって小さな塊となった。塊は小さく膨らんだり萎んだりしている。まるで呼吸でもするかのように。
そっと撫でるように手を触れる。いつの間にか切れていた指先が血で跡を残し、血はゆっくりと塊に染み込んだ。するとそれはみるみる変貌してゆく。
歪みながら大きくなり、土色から柔い肌の色へ。ただの塊だったものが、徐々に私と近い形へと。そしていつの間にか、私と形は似ているが、違う者が出来上がった。
それは静かに瞼を開け、こちらに笑いかける。ここにきて初めて、パチパチと弾けるような、胸がギュッとするような、たまらない心地になって、私はその者を強く抱き締めた。
きっと自分がなにをされているのか分からなかったのだろう。それはおとなしく抱き締められていた。だがやがて緩く腕を動かし、私の背に触れ、同じように抱き締めた。
温かく、柔らかい手だった。あぁ、新しく産まれる命とはこうも心地良いのか。私は改めて新しく産まれた者に向き合った。私と似た形をしているが、違う所もたくさんある。なんと不思議な事だろう。
こちらを見つめ、微笑んでいる。それだけで冷えた指先が温まる。人とは命が生まれるたびにこんな心地を味わっていたのだろうか。だとしたら、なんと羨ましい事だろう。以前、人が産まれる時を見たことがあるが、あれだけ喜ぶのも理解できる。
そういえば人は新しい命に名前をつけるのだったか。ならば、この者にも名前をつけなければ。どんな名がいいだろうか。たしか由来や願いを込めるのだったか。
砂の落ちる音が響く部屋の中、私は少ない知識を必死に漁りだした。




