契約
人間社会は契約でできている。衣食住全て、果ては娯楽にいたるまで。意外と意識していないが、金銭を支払う行為も契約を履行した結果である。それと引き換えに私達はなにかしらのサービスや物品を得ているのだから。それはつまり、金銭を過不足なく支払った段階で成立する簡易的な契約と言ってもいいだろう。
そして行政においても契約というのは機能している。各種手続きなんかがそれだ。もちろん役所相手にするものも数多くあるが、個人の契約を行政に認めてもらう手続きだってある。まあ、分かりやすいのは婚姻だろうか。一組の男女が籍を入れる。それだけのように思われるが、そこには暗黙の了解や個人間同士での条件交渉があり、そこで契約が成立して初めて両者が婚姻届を提出する。あ、もしかして飽き始めてる?もうちょっと聞いててね。
個人的な意見を述べれば、婚姻の際はお互いに書面で内容を明確化してからすることをオススメするね。一部でも暗黙の了解のような曖昧な形で進めてしまうと、結婚生活に支障が出る可能性がある。どちらかが我慢をすればいいという意見も時折聞くが、それはフェアではない上、離婚の可能性を高めてしまう。私ならそんな危険は冒したくないね。君もそう思うだろ?
というわけでここに結婚にまつわる条件や規則を記した書面を用意している。金銭、家事、育児その他諸々……。君に不利な条件はないが、念の為端から端までキチンと確認してくれ。もし修正すべき点があればそこも含めて。あ、コラ。パラパラ適当にめくるんじゃない。君の人生に関わることなんだから、ちゃんと確認しなさい。だから君役所の手続きとか一切できないんだよ。結婚したら私が契約周りをするからね。ちなみにこれも書面に記載されてる。全部見て問題なければこの部分に署名と捺印をしてくれ。その後で婚姻届に名前を書こう。
……え?書類を読んでも何が言いたいのか分からない?はぁ、まったく。この、大雑把で、ガサツで、私に対する信頼がおかしい君!特別に少し要約してあげるから、書類はその後に。
要約すると。まぁ、つまり、その……君を幸せにするから、死が私達を分かつまで、一緒にいて欲しいってことだ。




