第七十章 雨宿りの街
三日後、空は朝から雨だった。
しとしと、静かな雨。
大きな音ではない。
でも途切れない。
「わぁ……」
セリアが見上げる。
街が見えてきた。
雨音の街。
石畳、アーチ状の屋根、窓辺には花、軒下には椅子とテーブル。
至る所に喫茶店があった。
そして不思議な光景だった。
雨が降っているのに誰も急いでいない。
人々がそれぞれゆったりと雨宿りをしている。
「素敵な街」
セリアが笑う。
「だねぇ」
リリカも嬉しそうだ。
すると、ユークが案内板を見ていた。
そこには街の言葉が刻まれていた。
雨の日は、立ち止まってもいい日
「好きかも」
セリアが呟く。
レオンも少し笑う。
そして、一行は喫茶店へ入った。
◇
店内は静かだった。
かすかなBGMと雨音がリズムを刻んでいた。
ほろ苦いコーヒーの香りに一息つく。
すると、隣の席から会話が聞こえてきた。
「困ったわねぇ」
「どうしたの?」
「手紙を書こうと思ったんだけど……」
「誰に送ろうとしてたのか思い出せないの」
静寂。
友人が笑う。
「疲れてるんじゃない?」
「そうかもね」
でも、セリアたちは顔を見合わせる。
まただ。
また。
小さな違和感。
すると、ユークが立ち上がる。
珍しく真剣な顔だった。
「少し街を調べてきます」
「きたきた」
リリカが笑う。
でも、今日はみんな止めない。
だって、ユークはきっと誰よりも気付いているから。
◇
ユークは小さく呟いた。
「忘れる対象が増えている……」
「願い事、歌、道、手紙……」
そして、
「共通点は何だろう」
雨音だけが響いていた。




