第六十九章 雨音の街へ
風奏の街を出発して二日目。
空には少しずつ雲が増えていた。
「雨降りそうだねぇ」
リリカが空を見上げる。
「そうだな」
ガルドが頷く。
街道は穏やかだった。
鳥の鳴き声、木々の揺れる音、旅人たちの足音。
とても平和な時間だった。
すると、少し先で一人の旅人が立ち止まっていた。
「どうしたんですか?」
セリアが声を掛ける。
旅人は困ったように笑う。
「いやぁ……」
「おかしいんだよな」
「毎年通ってる街なんだけど」
「道が思い出せないんだ」
静寂。
旅人は笑っている。
でも、その笑顔が少し寂しい。
「年かなぁ」
そう言って頭を掻く。
ユークの表情が少し曇った。
セリアたちは道を教える。
「ありがとうございます!」
旅人は嬉しそうに去っていった。
◇
風が吹く。
でもみんな少しだけ静かだった。
その時、レオンが前を向いたまま考えていた。
忘れる……
もし
もしセリアを忘れたら。
一瞬だけ。
胸がざわつく。
でも
……何考えてるんだ
そう自分に言い聞かせる。
すると
「レオン?」
セリアだった。
「どうしたの?」
レオンは少し間を空ける。
昔の自分なら黙っていただろう。
でも、今は少し違う。
「いや、ちょっと考え事してただけだ」
「そっか」
セリアは笑う。
その笑顔を見てレオンのざわついた心も少し落ち着く。
すると、少し先に案内板が見えてきた。
雨音の街 → 3日
その下には
雨宿りは、旅人たちを繋ぐ
リリカが読む。
「素敵」
セリアも笑う。
「どんな街なんだろう」
ユークは既にワクワクしていた。
◇
空からぽつりと一滴の雨が落ちた。
そして旅は続いていく。




