第六十六章 音の溢れる街
翌朝、風奏の街は朝から賑やかだった。
パン屋の前では、楽師が演奏している。
橋の上には、歌っている子どもたち。
そして広場の中心で、誰かが踊っている。
「すごいね」
セリアが辺りを見回す。
「街全体がお祭りみたい」
「まだ前夜祭だけどね」
リリカが笑う。
「前夜祭でこれ!?」
セリアは驚く。
「本番はもっとすごいよ」
その時、いい香りが漂ってきた。
「…………」
リリカが止まる。
「見つけた!」
スイーツ屋さんだった。
ガルドが苦笑する。
「予想通りだな」
「これは重要任務だから!」
リリカは真剣だった。
一方のユーク。
「音楽博物館……」
「行きたいです」
「これも予想通りだな」
レオンが呆れる。
そんな穏やかな時間の中で、セリアは思う。
リリカ、楽しそうだな。
昨日の寂しそうな表情が嘘みたいに笑っている。
◇
その時だった。
広場から歌声が聞こえてくる。
街の人たちが歌っている。
お祭りの歌だ。
でも途中で、
「……あれ?」
歌い手が止まる。
「なんだっけ?」
「最近多いなぁ」
周りの人たちは笑う。
「歳かなー!」
笑い声が広がる。
でも、リリカは笑っていなかった。
少しだけ眉が下がる。
そして、小さく口ずさむ。
続きを知っている。
知っているはず。
だけど、一箇所だけまた言葉が出てこない。
今度は昨日より少しだけ長かった。
◇
風が吹く。
リリカは気持ちを切り替えるように空を見る。
それから何事もなかったように笑った。
「さ!スイーツ食べよ!」
でも、セリアだけはその笑顔を見ていた。
何かある。
でもまだ分からない。




