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星祈りの少女は、傷ついた世界を旅する  作者: 天野みんと


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第五十一章 湖を駆ける風

 轟音は湖の方角から響いていた。

 街中が騒然としている。

 人々が空を見上げていた。

「何だあれ……!」

 誰かが叫ぶ。

 一行も振り返る。

 そして見た。

 湖面が盛り上がっている。

 まるで巨大な生き物のように。

 水が渦を巻く。

 風が唸る。

 そして、湖から姿を現した。

 巨大な水の獣。

 蛇のような長い身体。

 透き通る青い体躯。

 全身を風が取り巻いている。

「うわぁ……」

 リリカが思わず呟く。

「綺麗」

「感想が先か」

 レオンが剣へ手を掛ける。

 だが次の瞬間、水蛇が咆哮した。

 巨大な波が街へ向かう。

「避難だ!」

 ガルドが叫ぶ。

 一行が動く。

 住民たちを誘導する。

 ガルドは最前線へ飛び出した。

 大盾を構える。

「来い!」

 波がぶつかる。

 轟音。

 衝撃。

 それでもガルドは退かなかった。

 盾が街を守る。

 頼もしい背中だった。

「レオン!」

「分かってる!」

 剣が抜かれる。

 銀閃。

 地を蹴る。

 水蛇へ向かって一直線。

 速い。

 湖面を駆けるように跳ぶ。

 剣閃が走る。

 だが、水の身体は切れてもすぐ再生する。

「ちっ」

 レオンが舌打ちする。

「物理攻撃が通りにくい!」

 その時、

「任せて!」

 リリカだった。

 魔法陣が展開される。

 炎と風、二つの属性が重なる。

「吹き飛べ!」

 炎嵐。

 巨大な熱風が水蛇へ直撃する。

 蒸気が舞う。

 水の身体が削られる。

「効いてる!」

 リリカが嬉しそうに叫ぶ。

「はしゃぐな!」

「はしゃぐ!」

 その横で、ユークは戦場を見ていた。

 観察し、分析する。

 そして気づく。

「レオン!」

「何だ!」

「首ではありません!」

「核があります!」

 全員が見る。

 水蛇の胸部。

 渦の中心。

 淡い緑色の光。

 風の結晶。

「そこです!」

 ユークが指差した。

「核を破壊してください!」

 レオンが頷く。

 だが次の瞬間、巨大な風圧が吹き荒れる。

 レオンの身体が弾かれそうになる。

 危険。

 距離が遠い。

 届かない。

 その時、

「レオン!」

 セリアだった。

 ペンダントが光る。

 白銀の光。

 身体が軽くなる。

 風の流れが見える。

「行って!」

 レオンが地を蹴る。

 風を裂く。

 加速し一直線に核へ。

 そして剣を振るう。

 銀の軌跡。

 渾身の一撃。

 風の結晶が砕けた。

 光が弾ける。

 水蛇が止まる。

 咆哮。

 そして、湖へ崩れ落ちた。

 巨大な水飛沫。

 静寂。

 風が止む。

 街を包んでいた緊張が解けた。

「終わったか?」

 ガルドが息を吐く。

 リリカは満足そうだった。

「久しぶりに大物だったね!」

「楽しそうだな」

「楽しかった!」

 その時、風が吹いた。

 優しい風。

 どこか子どもの笑い声のような。

 そしてセリアは見た。

 湖の上、風の中の小さな影。

 一つ。

 二つ。

 三つ。

 いや、もっとたくさん。

 子どものような姿。

 鳥のような輪郭。

 風そのものみたいな存在。

 彼らは慌てていた。

「……あれ?」

 セリアが呟く。

「妖精?」

 その瞬間、風の影たちが一斉に固まった。

 見つかった。

 そんな顔だった。

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