間章 Sideノクス 約束の先
雪が降っていた。
白き森から少し離れた丘。
誰もいない場所で、ノクスは一人立っていた。
遠く森の奥から光が消えていく。
魔障は浄化された。
いや、違う。
浄化ではなかった。
ノクスは静かに目を閉じる。
思い出す。
白銀の光。
翼のペンダント。
そしてセリア。
魔障を引き受けなかった。
背負わなかった。
傷を抱え込まなかった。
それなのに救った。
いや、救ったという言葉すら少し違う。
繋いだのだ。
人と人を。
記憶と記憶を。
孤独と温もりを。
あの少女は、自分の知らない星祈りだった。
◇
ノクスは小さく笑う。
「似ていないな」
誰へ向けた言葉だったのか。
自分でも分かっていた。
アイシア。
セリアはアイシアではない。
もっと不器用だ。
もっと危なっかしい。
よく笑う。
余計なことにも首を突っ込む。
無茶もする。
そして驚くほど人を信じる。
似ていない。
本当に。
少しも。
なのに未来を思わせる。
それが不思議だった。
風が吹く。
雪が舞う。
ノクスは空を見上げた。
夜空に星々が瞬いている。
昔、同じ空を見上げたことがあった。
『星を見て』
懐かしい声。
『そうしたら私たちの繋がりが見えるはずだから』
アイシア。
最後の日、笑っていた。
泣きそうな顔で。
それでも笑っていた。
あの時、ノクスは理解できなかった。
繋がりなど。
未来など。
そんなものを信じられなかった。
失えば終わると思っていた。
消えれば終わると思っていた。
だから止まった。
長い間。
ずっと。
何百年も。
止まったまま守り続けた。
封印を。
約束を。
そして過去を。
だが、白き森で見た。
レオンを。
セリアを。
仲間たちを。
失ったものを抱えながら、それでも前へ進む人たちを。
記憶は傷になる。
だがそれだけではない。
支えにもなる。
繋がりにもなる。
あの少女はそう言った。
いや、教えてくれた。
ノクスは目を閉じる。
そして何百年ぶりだろう。
未来を想像した。
セリアたちの旅。
まだ見ぬ景色。
出会う人々。
笑い声。
きっとまた傷つく。
迷うこともある。
それでも歩いていくのだろう。
共に。
その光景を思い浮かべると不思議と胸が温かかった。
風が止む。
静かな夜だった。
ノクスは星空を見上げる。
そして小さく呟いた。
「約束は守る」
誰へ向けた言葉か。
答えは一つだった。
「アイシア」
夜空の向こう。
届くはずもない。
それでも確かに想いはそこにあった。
「見届けよう」
雪が舞う。
星が輝く。
そして何百年も止まっていた男は、
ようやく未来へ目を向けた。
これで第一幕が終了です!
星祈りやルークの足跡に焦点を当ててきました。
第二幕ではもっと広い世界へとこれからも旅は続きます。
毎日投稿していましたが、第二幕準備中のため少しだけ投稿がお休みとなります。
いつも見てくださってありがとうございます!長くお待たせしないようにまた再開しますのでぜひ今後の旅も見に来てください!




