間章 Sideルーク 星を見上げる男
最初の印象は最悪だった。
星見の古塔で初めて会った時、
そいつは窓際に座って本を読んでいた。
白銀の髪。
金色の瞳。
妙に綺麗な顔。
そして感じが悪い。
「こんにちは」
ルークは挨拶した。
返事はない。
「聞こえてる?」
「聞こえている」
聞こえていた。
「じゃあ返事しろよ」
「必要か?」
必要だろ。
そう思った。
◇
翌日もいた。
その翌日もいた。
ずっといた。
まるで塔の住人だった。
「暇なの?」
「お前ほどではない」
少しだけ返事が増えた。
進歩だった。
たぶん。
◇
ある夜、ルークは塔の屋上で星を見ていた。
風が強い。
冷たい夜だった。
隣に気配がする。
ノクスだった。
何も言わずただ夜空を見上げている。
「なあ」
ルークが言う。
「なんだ」
「寂しそうだな」
沈黙。
長い沈黙。
そして
「初対面から失礼な男だ」
ノクスが言った。
否定はしなかった。
◇
その日から。
少しだけ話すようになった。
世界のこと。
星のこと。
魔法のこと。
そして星祈りのこと。
ノクスは詳しかった。
詳しすぎるほどに。
まるで全部見てきたみたいに。
「なんでそんなに知ってるんだ?」
ルークが聞く。
ノクスは答えない。
ただ夜空を見るだけだった。
◇
そしてある日、ルークは咳き込んだ。
ほんの少し。
本当に少しだけ。
ノクスの視線が向く。
「風邪か?」
「違う」
ルークは笑う。
「ちょっと疲れただけだ」
ノクスは黙っていた。
だが、その目は少しだけ冷たかった。
「やめろ」
唐突な言葉。
「何を?」
「浄化だ」
ルークの笑顔が止まる。
「……何の話?」
「誤魔化すな」
静かな声だった。
怒ってはいない。
でも、悲しいほど真剣だった。
「お前は気づいている」
ノクスが言う。
「身体が蝕まれていることに」
ルークは答えない。
分かっていたからだ。
少しずつ。
確実に。
自分の中へ何かが積もっていることを。
「妹がいる」
ルークはぽつりと言った。
「……」
「だから」
少しだけ笑う。
「もう少し頑張りたい」
ノクスは目を閉じた。
その顔は怒っているようにも泣きそうにも見えた。
「お前たちは」
ノクスが呟く。
「いつもそうだ」
その意味をあの時のルークはまだ知らなかった。




