第二十章 星を追う旅
古塔編スタート!これまでの旅先ストーリーよりも長くなります。
フィオラを発った朝、
空はどこまでも青かった。
花畑は風に揺れ、
色とりどりの花が旅人たちを見送っている。
◇
「また来ようね」
セリアが振り返る。
花冠の町。
短い滞在だった。
でも、大切な思い出になった気がした。
「アップルパイも美味しかったし」
リリカが真顔で言う。
「それが一番ですか」
ユークが呆れる。
「重要です」
重要らしい。
◇
街道は北西へ続いていた。
星見の古塔。
フィオラから三日の距離。
昔は学者たちが集まった場所。
今はほとんど人が寄りつかない。
そんな場所だという。
◇
昼過ぎ、一行は丘を越えていた。
風が強い。
空が近い。
雲の影が草原を流れていく。
「平和だな」
ガルドが呟く。
珍しく何も起きていない。
本当に。
何も。
「平和ですね」
ユークも頷く。
その瞬間。
リリカが転んだ。
「いたっ!」
平和だった。
「大丈夫?」
セリアが駆け寄る。
「大丈夫」
リリカは立ち上がる。
そして何かを拾った。
「ん?」
小さな石。
星みたいな形。
銀色に光っている。
「綺麗」
セリアが呟く。
その時だった。
胸元のペンダント。
微かに光る。
誰にも気づかれないほど小さく。
でも確かに。
セリアの心臓が少しだけ跳ねた。
まただ。
星降る湖。
花守りの祠。
そして今。
何かが近づいている。
そんな気がした。
◇
その日の夜、一行は野営をしていた。
焚き火が揺れる。
風は少し冷たい。
空には満天の星。
「すごい……」
セリアは空を見上げる。
フィオラよりも。
谷よりも。
星が近い。
手を伸ばせば届きそうだった。
「星見の古塔が作られた理由ですよ」
ユークが言う。
「昔の学者たちは星を観測していたんです」
「魔法の研究?」
「それもあります」
ユークは少し空を見上げる。
「でも一番は」
「世界を知るため」
その言葉にセリアはどこかルークを思い出した。
世界を知りたい。
兄もきっとそうだったのだろう。
その時、レオンが薪を火へ投げる。
ぱちり。
火花が舞った。
「明日には見える」
「古塔?」
セリアが聞く。
レオンは頷く。
「ああ」
少しだけ。
表情が変わっていた。
セリアは気づかない。
でも、ユークは見ていた。
レオンは星見の古塔を知っている。
知っていて何かを隠している。
◇
夜が更ける。
皆が眠りにつく。
ただ一人セリアだけが目を覚ました。
ペンダントが光っていた。
今までで一番強く。
「……?」
雪の結晶。
白銀の光。
その瞬間、セリアの視界が揺らいだ。
◇
見たことのない場所。
夜空。
石造りの塔。
無数の星。
そして一人の青年。
白銀の長い髪。
夜空を見上げている。
振り返る。
金色の瞳。
その口が動いた。
声は聞こえない。
けれど確かにこちらを見ていた。
◇
次の瞬間光景は消える。
セリアは息を呑んだ。
知らない人だった。
なのになぜだろう。
ひどく懐かしい気がした。




