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星祈りの少女は、傷ついた世界を旅する  作者: 天野みんと


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間章 Side レオン 花灯りの夜

 祭りは苦手だ。

 賑やかな場所も。

 人混みも。

 騒がしい音楽も。

 昔から得意じゃない。

 だから本当なら広場へは近づかない。

 ◇

「レオンも来なよ!」

 リリカに腕を引かれたのは事故だった。

「嫌だ」

「だめ」

「なぜだ」

「お祭りだから」

 意味が分からない。

 気づけば花冠作りに参加させられていた。

 もっと意味が分からない。

 隣ではリリカが騒いでいる。

「見てこれ!」

 盛りすぎだ。

 花冠というより花畑だった。

 ユークは妙に真面目だった。

 左右対称。

 配置完璧。

 性格が出ている。

 ガルドは子供に囲まれている。

 いつものことだった。

 そして、

 セリア。

 白い花を選んでいた。

 小さな花。

 雪みたいな色。

 少しだけ。

 あのペンダントに似ている。

「できた」

 セリアが笑う。

 嬉しそうだった。

 その時。

 リリカが叫んだ。

「つけてみて!」

 ◇

 セリアが花冠を頭に乗せる。

 白い花。

 灰桜色の髪。

 柔らかな笑顔。

 春の光。

 ◇

 レオンの手が止まった。

 綺麗だった。

 ただそれだけだった。

 それだけのはずだった。

「レオン?」

 声がする。

 はっと我に返る。

「どうしたの?」

「……いや」

 それしか言えなかった。

 リリカは騒いでいる。

「かわいい!!」

 ユークも珍しく頷いている。

「似合っています」

 ガルドも。

「おう」

 自分だけではない。

 そう思った。

 だから気のせいだと思った。

 その後、

 一人になった。

 祭りの喧騒から少し離れた場所。

 花灯りが川を流れている。

 夜風が心地いい。

 ◇

 昔を思い出した。

 雪原。

 白い世界。

 どこまでも続く雪。

 若かった。

 今よりずっと。

「痛そうじゃん」

 ルークが言った。

 怪我をしていた。

 吹雪。

 無茶をして雪狼に負けた。

 最悪だった。

「放っておけ」

 そう返した。

 ルークは笑っていた。

「それは無理かな」

 それが最初だった。

 ◇

 その後旅をした。

 喧嘩もした。

 笑ったこともある。

 馬鹿なこともした。

 そしてルークはよく話した。

「妹がいてな」

 また始まった。

「薬草に詳しいんだ」

 知ってる。

「優しいんだ」

 知ってる。

「でも無理するんだよな」

 それも聞いた。

 何回も。

 花冠を見つけた時もそうだった。

「これ似合いそうだろ」

 嬉しそうだった。

 本当に。

 馬鹿みたいに。

 その顔を覚えている。

 だから今日花冠をつけたセリアを見た時、

 一瞬だけ昔を思い出した。

 似ていると思った。

 でも違った。

 ◇

 レオンは空を見上げる。

 花灯りが流れていく。

 静かな夜だった。

 似ていない。

 ルークとは。

 全然違う。

 優しいところは似ている。

 無理をするところも似ている。

 人を放っておけないところも。

 でも違う。

 セリアはセリアだ。

 その事実に。

 なぜか少しだけ安堵した。

 ◇

「何やってるの?」

 突然声がした。

 振り返る。

 セリアだった。

 花冠をまだつけている。

 レオンは少しだけ目を逸らした。

「別に」

「また考え事?」

「お前もだろ」

 セリアは小さく笑った。

 隣へ座る。

 自然に。

 本当に自然に。

 二人で川を眺める。

 花灯りが流れていく。

 静かだった。

 けれど居心地は悪くない。

 ルークと一緒にいた時とは違う。

 でもそれでいいと思った。

 たぶん。

 初めて。

 ほんの少しだけ。

 そう思った。

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