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ドレッドノート・カプリチオ ~勇者狂想曲~  作者: 振木岳人
「招かれざる見舞い客」編
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終章 深夜、病室にて


消灯後の真っ暗な病室、目をギラギラと輝かせながら、玲一はとても後悔していた。

先ほど訪問して来た、嫌悪の塊……、エステファン・アナスタシオとの交流とは別種の後悔である。

と、言うのも、エステファンとのやり取りが頭に残り、イライラしていた玲一は全く寝付く事が出来ず、仕方なしに枕元側の蛍光灯をつけ、本に手をつけたのだ。


 ……読書すれば、頭が疲れる。そうすれば、ぐっすり眠れるはず……


設楽寺富美から送られた風水の本は、思いのほかつまらなかった。

つまらない方が、早く眠れるのではと思っている内に、あっと言う間に読破してしまう。

それが災いしたのか、あまりにもつまらな過ぎて、腹が立って余計に眠れなくなっていた。


思案する玲一、ならば、次に読む本は…どうするか?

氷見ひまりから送られた、下ネタ本か?いや、それはまずい。思春期の少年にとって、それは禁断のリンゴ。

もし、そんな本を読んで(自主規制)になってもこんな病室で(自主規制)(自主規制)(自主規制)。つまり、(自主規制)なのである。


ならば、最後の手段として、菊から送られたオカルト本を読むか?いや、あれを読むとマズいぞ、後に来るからやめといた方が良い。

いや、でも、今が暇でどうしようもないし……


結局、読んでしまったのである。

玲一は、菊との約束通り、1ページ1ページしっかりと、【最恐!病院であった本当に怖い話】を読破してしまったのだ。


(……妖魔と違って、人間の怨恨とか怨念とか。シャレになんね~よ……)


玲一は、見事に撃沈した。

「夜中に悲鳴が聞こえる霊安室」

「無数の日本兵に囲まれて、早くこっちに来いと誘われる病室」

「深夜見回りに訪れる、見た事もないナース」

「必ず死者が出る、生きて退院出来ない病室」

「深夜、ナースコールをしても、ナースが怖がって絶対に来てくれない病室」

さまざまなストーリーをじっくりと読んでしまい、玲一は完全に縮み上がってしまったのだ。


天井のシミさえ、人の形や顔に見えてしまい、見えない影に怯えながら、早く日の出来い、早く日の出来いと、布団を頭まで被り、願うだけの姿が、そこにあった。


時刻は23時頃


ビリリリッ!


「ひいっ!」


いきなり枕元で鳴った、玲一の携帯電話。

メールの受信を知らせて来ている。


布団の中から手を伸ばし、自分の携帯を掴む。そして、布団の中に携帯を入れて画面を確認すると、メールを送って来たのはこよみ。

タイトルには「お兄ちゃん、寝ちゃった?」と、表示されている。そして、そのメールには、画像データが添付されていた。


兄想いの良い妹だなと、布団の中でちょっと微笑みながら、メールの本文を開けると、

「お兄ちゃん、一人で入院大丈夫?こよみは明日ゆっくりお見舞い行くから安心してね♪今日はお兄ちゃんのお友達が、こよみを守ってくれて安心安心。

家に来たぶもも君を洗うので、これからお風呂です。お兄ちゃんも、ゆっくり休んでケガを直してね」

と、兄を気遣う、優しい妹からのメッセージが。うむ、良かった良かったと、妹の優しさに満足し、送られて来た添付データを開ける。


「ひいいっ!」


再び軽い悲鳴を上げる玲一、なんとそこには、あられもない妹の姿が。

麒麟の子供をこれから風呂に入れようとしているのか、麒麟の子供を左手で抱え、全裸で写真を撮るこよみの姿があったのだ。


左手で麒麟を抱えていて、携帯を持つ右手で、上から見下ろす様に撮影された自撮り画像。

ちょうど麒麟の子供が画面の中心にあり、こよみの左右の胸はもちろん、隠されている。

そして、俯瞰で撮影されているので、麒麟の子供の身体で、こよみの下半身も隠れ、核心には触れていない、非常にモヤモヤする画像。

確かに、上手い事に大事なところが隠された画像ではあるのだが、

携帯を掲げた右手から右腕、そしてツルツルの脇の下から、わき腹や腰、そして骨盤から右足にかけて、着衣は一切認められず、

綺麗な、女性らしい曲線が描かれている。


見えないが、妙に想像力をかき立てられる画像であったのだ。


「こよみ、兄想いなのは本当に嬉しいのだが、これ、法的にヤバいだろ」


玲一はこよみから送られて来た、ちょっとボーナス画像的なデータを、

ぶつぶつと文句を言いながら、そっと自分の携帯の隠しフォルダへと保存した。


土岐玲一の煩悩との闘いは、まだ終わる事を知らない。



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