第4話 邂逅
『ブゥゥゥゥゥン』
俺は水髪と空髪の2人に誘導されて、流れるように車に乗り、学校に移動していた。
「それで、本当に美夜とかサッカー部の人たちは大丈夫だったのか?」
「全然大丈夫だよ! だってあそこで寝てただけだからね!」
(寝てただけなのか。確かに脈を測った時は生きてたけど……いや、そもそも、なんで校舎が何事もなかったんだ? それに、なんで俺は生きてるんだ……あの時、死んだ筈だよな?)
車の中では、陽気に話す空髪の女と、こっちを睨んでくる水髪の青年が俺を刺激していた。
「なぁ……聞きたいんだけどさ、水髪と空髪の名前ってなんだ? 学校に行くんなら知っておきたい。教えてくれ。俺、何も分からないからさ」
「確かに、名前は覚えておいた方がいいよね!」
「いや……刹那先生。普通、零級危険人物に名前を教えるか? 神の法を行使する上で、自分の名前を知られると、法の執行が確定になるんだぞ? なのに、そんなに気安く……」
「私の名前は刹那! 刹那零だよ! 私立 神法理化学高校の1年生の担任だから、今度から或真くん担任になるよ。これからよろしく」
「あ……おい、刹那先生。何そんな迂闊に……」
「んで、こっちは1年生の水城紫苑くん! 2人とも仲良くしてってね!」
「は? 刹那先生、なに勝手に俺の名前を教えてるんですか? 地雷どころか、『ビッグリップ(Big Rip)』レベルの危険人物に俺の名前を教えるのは……」
「え? でも、学校で一緒に過ごしてたら、いつかは知られるんだから、名前を教えるのなんていつでも良くない?」
「いや……そういう問題じゃ……」
「ほら! みんなの名前を知り合ったんだから、これからは仲良くしようね!」
「洒落にならないって、刹那先生。まぁ、この人の勝手は今に始まった事じゃないけど……」
(なんか……俺から聞いたのに疎外感凄いな。聞き慣れない言葉ばっかで会話に入れない。ってか、さっきからずっと言ってる零級危険人物ってなんだ? 名前だけでやばそうだが……)
俺は、刹那先生と紫苑の会話に割り込んだ。
「刹那先生。零級危険人物ってなんだ?」
「ん? あぁ……零級危険人物ね。零級は、宇宙に4つしか確認されてない、全てを表す絶対的な法。その神の法を行使する者達に与えられた特別階級みたいなものだよ」
「は、はぁ……」
「刹那先生はざっくり説明し過ぎ……」
「じゃあ、紫苑くんが説明してみてよ」
「……零級には『始まり』、『終わり』、『存続』、『自由』の4つがある。これらは、宇宙の理を模したものだ」
「そ、そうか」
「或真は、その中にある『終わり』の法を持っている。今は不完全な状態で、いつ暴走するか分からないから危険人物なんだよ」
(いや、それも分かんねぇよ)
意味が分からない会話をしていると、あっという間に時が経ち、気が付けば学校に着いていた。
◇
「はい! とうちゃーく! 見て或真くん。ここが神法理化学高校だよ」
「ここが……俺が通う高校か。なんか……敷地広くね? 東京ドーム何個分だ? これ」
「まぁ、神の法が飛び交う学校だからね! あと、まだ校門前だから見えないけど、実際はもっと広いよ! じゃあ、行こっか」
『フォンッ』
俺が校門をくぐると、さっきまで見えてた校舎が急に巨大になった。
「は? これが校舎?……流石にデカすぎだろ」
「そういや、俺も最初はそんな反応だったな。この学校、人数の割に敷地広すぎなんだよな」
「今年の1年生は或真くんを含めて5人か。結構多いね。とっても賑やかになりそう♪」
「は? 5人が多いのか?」
「或真、普通に考えて、神の力を使える人が多いと思うか?」
「……それもそうだな」
「じゃあ、或真くんは理事長との面接があるから紫苑くんはまた後でね!」
「……気を付けろよ、或真。この学校の理事長は少しでも人類の危険を犯すものと分かると即殺しにかかる合理性を持ってる人だからな」
「え? じゃあ、俺やばくね? 俺って、いつ暴走するか分からない零級危険人物なんだろ?」
「大丈夫だよ! だって私が居るからね!」
「……なら、大丈夫……なのか?」
その発言を聞いた紫苑は、刹那先生の元から俺を連れて少し離れ、耳元で小さな声を出した。
「或真、この学校で通う上で知っておかないといけないのが、学校内で一番やばいのは、刹那先生だって事だ。気を付けろ。刹那先生が関わると只事では済まないからな」
「……何が、やばいんだ?」
「理事長は、危険人物じゃない限り命をかけて守ってくれる教師だ。それに合理的な一面と、人情的な一面もある」
「凄いな……バランスが良いというか……」
「そうだ。だから理事長はまだ安心できる。ただ、刹那先生は別だ。あいつは神の法も、世界の法も、社外の法も、人の法も通じない。助けてくれる時は、ガチの生命の危険がある時だけだぞ」
「マジ?」
「マジだよ。それに刹那先生は、神の法を行使する人達は死線をくぐり抜けてこそ成長すると思ってる。力を持つ者の矜持としては間違ってはいないが、教師としては間違ってる」
「……なんでそんな奴が教師やってんだよ」
「いや、そんな奴だからこそ教師をやれるんだ。神法の行使者は自分の事すらも守れずに命を落とす世界だ。そんな世界で人にものを教える奴らってのは、常識が通用しないやつしかいないからな。とにかく気を付けろよ」
「お〜い! 或真く〜ん! そろそろ時間になるから、早く来てー!」
「じゃ、またな」
俺は今後の人生、まともに生きれるのかと不安を持った。
◇
紫苑と別れた後、広い校舎の中を歩いて理事長室の前に立っていた。
「開けるよ。準備は良い?」
「あ…あぁ」
(ほんと、どうしてこんな事になったのか……)
『ガチャッ(扉が開く音)』
「龍淵理事長さ〜ん! 面接に来たよ〜!」
理事長室の中に居たのは、俺と全く同じ見た目をした人だった。
「おい……零、23分遅刻だ。お前の身勝手な遅刻の間に、世を脅かす危険な法体をどれだけ討伐できたと思ってる」
「え? でもそれって、邦級法体まででしょ? それだったら、零級の或真を優先した方が良くない?」
「そういう問題ではない。一国家を滅ぼすレベルの化け物を何体も討伐出来るんだ。それだけで救われる国家がどれだけあると思ってる」
「……龍淵理事長は、相変わらずだね。国家をいくつも救っても、零級の或真が関わればそんなの関係ないのに」
「それは、お前が或真を推薦したから生かし……まぁいい。終わった事を言っても仕方が無い。それじゃあ、夜凪或真。面接を始めるぞ」
「わ……分かりました」
「俺がこの面接で問うのはただ一つ。今のお前が居ることで世に何の利益をもたらすのか、俺が納得する理由で答えてみろ」
この面接から、俺の非日常的な日常が当たり前な学校生活が始まったんだ。
(第4話:了)
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