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【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅵ:エデンにて待ち構えりし天使軍編
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episode,Ⅰ:聖者の行進

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


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 種なしで成育する色とりどりの花々。

 穏和で温かなそよ風。

 大地は耕さなくてもたくさんの、豊かな実りをもたらしていた。

 木からは、黄金の蜜が滴り落ちている。

 釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(ひいらぎ)ヴェルハルトは、はしゃぎながら小川へとやって来た。

 しかし。


「……あれ? これ……水じゃない。真っ白だ」


 聖綴が小川の前で述べる。

 又、二手に分かれているもう一つの川では。


「こっちも水じゃねぇな……赤色だ」


 ヴェルハルトもそう伝える。

 聖綴は、その水を手で(すく)い取り、クンクンと匂いを嗅いでみた。


「これ……ミルクだよ」


「こっちは赤ワインだ」


 同じくヴェルハルトも同様にして、言った。


「飲んでみるか⁉」


 ヴェルハルトの言葉に、聖綴は首を横に振った。


「俺はやめておくよ。確かにここは、楽園かも知れないけど、こんなあからさまな恵み……正直俺は、警戒する」


 それはナムウドッグとしての、意思だった。


「……お前がそう言うのなら、俺もやめとくぜ」


 ヴェルハルトも小川から数歩、後退る。


「せめて普通に水であってほしかったよな。これじゃあ、水遊びも出来ねぇし」


 そうして二人は橋を渡ると、まるで何者かに導かれるかの様に自然と前進して到着した場所は、エデンの東部だった。

 その時、真昼の太陽を消してしまう程の、光輝が森を照らした。


「ぅわっ! 何だ⁉」


「ま、まぶし……っ‼」


 ヴェルハルトと聖綴がそれぞれそう言いながら、目を光から背ける。

 更に光源から甘い調べと甘美な楽の音が流れてきた。

 そして光が二人の側へ近付いてきたので、何とか目を細めつつ二人は、その光の方へ視線を向けた。

 それは燃え盛る炎の巨大な七本の黄金の燭台(しょくだい)である事が分かった。

 その燭台は天使が自ら掲げていて、行列を導くかの様に先頭を進んで来た。

 その七つの燭台から七つの炎が燃え、その後方へと七色の煙が七本の帯の様に(なび)いていた。

 そのゆっくり進む天使の後ろから、白衣を纏った聖者達が燭台に導かれ後に続いていて、この現世では今までにまるで存在しなかったかの様な、純白の白衣だった。

 嘗て四十日間サタンと戦ったイエス・キリストの衣が、まるで雪の様に輝く純白の白衣を着ていた事から、白衣は聖なるものの象徴なのだ。

 よってこの行列も、聖者である事を表わしていた。

 この七旒(しちりゅう)(のぼり)は、聖綴とヴェルハルトの視界を越えて、後方へと流れていた。

 幟は先頭から十歩の距離があり、この美しい大空の下二十四人の長老が二組になって百合で出来た冠を、かぶってやって来た。

 七つの燭台に先導されて二十四人の聖なる長老達が通過すると、今度は四体の動物らしき生物がやって来た。

 対岸の爽やかな草花を踏み分けて、選ばれた人々が立ち去った後に、四体の動物がやって来て己々が緑の葉の付いた小枝の冠をかぶっていた。

 二十四人の長老達は信仰を象徴する白百合の冠を付けており、その一枚一枚の羽には一つずつ、アルゴスの眼が付いていた。

 最初の動物──獣はライオンに似ていた。

 二番目の獣は牝牛に似ていた。

 三番目の獣はほぼ人であった。

 四番目の生き物は飛揚(ひよう)する(わし)であった。

 それ等霊獣達は、言葉を揃って発した。


「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。全能なる主なる神は今まで存在してきた。今も存在している。そして今後も存在し続ける」


 彼等は四体の獣も揃って、神の側に仕える存在だった。

 その四体の霊獣に囲まれた中、二輪の凱旋車が一頭のグリフィンに引かれて進んで来た。

 グルフィンは両翼を上空に向けて伸ばしていた。

 その翼は目に見えない空の彼方へと伸びていた。

 その姿は、頭と翼と胸部、前足は金色の鷲で、他の身体の部分は朱色の混ざった白色の獅子の形をしていた。

 グリフィンが引く二輪の凱旋車を四体の霊獣が取り囲み、その両脇を七人の天女が固めている。

 更にその右側の車輪の側を三人の天女が輪を組んで、舞いながら進んで来た。

 一人は火の中にいるならば見分けがつかぬ程赤く、もう一人はその骨も肉もエメラルドから出来たかのような緑一色、もう一人の天女は今降った雪かとばかり白かった。

 三人の天女は互いに代わり合って順番に指揮を執って踊っていた。

 左側の車輪の所では、紫色の衣を纏った四人の天女が、その内の一人の額にある一つ目と合わせて三つ目の天女の流儀に従って、彼女の後について祝典していた。

 赤色の天女は愛を、緑色の天女が希望を、白色の天女が信仰を、そして紫色の四人の天女は倹約、自制、正義、不屈の精神を象徴している。

 中でも三つ目の天女は過去・現在・未来を見通す能力を備えている事を意味した。

 その聖なる行列の最後尾を勤めるのは七人の聖人で、一人は剣を(たずさ)えていた。

 七人の中の前列二人の聖人はルカとパウロだったが、この二人はイエス・キリストと最後の晩餐を共にした十二使徒ではない。

 その二人の後にいる五人の身なりも白衣を着ていたが彼等が、その最後尾を歩く老人は鋭い顔つきをした、使徒ヨハネだった。

 七人は頭に赤色の花で作られた冠を着けていた。

 これらの行列は、聖綴とヴェルハルトの小川を挟んだ正面に止まった。

 そして二輪の凱旋車の中から、一人の女性が立ち上がって姿を現した。

 純白のベールの上にオリーブを巻き付け、緑色のマントの下に鮮やかな赤色の衣を着ていた。


「……誰? この女の人……」


「さぁ……? 俺も知らない」


 ヴェルハルトと聖綴は互いに囁き合う。


「分からないのも無理はないかも知れませんね」


 その女性は言うと、顔にかかるベールを捲り上げた。


「やっぱり俺は知らねぇな」


 ヴェルハルトの再確認を他所に、聖綴は小首を傾げた。


「この女の人……どこかで……」


「知ってるのか?」


「えっと……顔は知ってるけど、思い出せない……」


 聖綴は脳内の引き出しを頭の中で荒らしまくる中、その女の人が自ら先に、名乗ってきた。


「私の名は釘鎹愛海(くぎかすがいなるみ)。聖綴、あなたの母です」



ここまで読んでくださったあなたに天女達の舞を捧ぐ!

大変ありがとうございます‼

良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。

「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです♪

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