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【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅴ:煉獄登山編
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episode,Ⅰ:額に刻まれた七つのP

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


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 煉獄門から煉獄本道に通じる道は決して平坦ではなく、四方八方から岩が突き出ていた。

 その為に、身体を左右に捩りながら進まなければならなかった。

 その岩間を抜けようと奮闘しながら、切り立った岩の壁の細い道を抜けると、広い道に出た。

 その道幅は5m前後と言ったところか。

 釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(ひいらぎ)ヴェルハルトが辿り着いた広い道は、霊魂達が傲慢の罪を浄化している煉獄山第一環道だった。

 その歩廊にそそり立つ絶壁には、謙譲の精神を讃える大理石の彫刻が並んでいた。

 しかし目の前の異様な光景に、ヴェルハルトが口を開く。


「何だァ? ありゃあ……まるで岩石から人の足が生えて動いている様に見えやがる」


 これに聖綴が答えた。


「重い刑罪の為にみんな地面まで腰が曲がっているんだよ。俺も最初は目を疑った。けどしっかりとあれを見て、あの岩を背負って近付いて来る者をよく識別してご覧よ。後悔して胸を叩いている様が見える筈だよ」


 煉獄の第一環道では、傲慢の罪を浄化する霊達が岩石を背負って近付いて来た。

 膝と胸を密着させて霊魂達が背負う岩石の大きさと重さは、一人一人異なっていて、生前に犯した傲慢の罪の重さに比例していた。

 よって腰の曲がり具合にも事実、多少の差はあった。

 それがこの煉獄第一環道で浄罪手段の様だった。


 "祇王精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす"


 まさにそれである。

 人の力の栄えは空しいものだ。

 次に衰えた世が続くなら話は別だが、さもなければ梢が枝の上である時は、ほんの僅かの間だ。

 昨日までは、夜が明けると門前に馬や車が立ち並んで、賓客が列をなして訪問して遊びや舞に戯れ興じ、世間が何と言おうと傍若無人な振る舞いをする。

 近所の人達は声を出しては苦情を言わず、恐れていた。

 しかし一晩の間に状況は一変してしまい、盛者必衰の理法が目の前に現れる。

 "楽しみ尽きて衰来る"という意味が、霊達はよく理解出来た。

 それらを眺めながら、聖綴とヴェルハルトは第一環道の最後の区画まで進んだ。

 そこには、傲慢の罪を(いまし)める十三の代表的な事例が、彫刻で刻まれていた。

 それらは皆、出口を飾るに相応しい優れた出来栄えの彫刻だった。

 出口に到着した時、天使が一人現れて両腕と真白き翼を広げて言った。


「ここへ来るが良い。階段はすぐそこだ。これからは身も心も軽く登れる。こうして招かれる人は滅多にいない。おお人間よ。上に舞い上がる為に生まれながら、何故ほんの僅かな風にも堕ちてしまうのか?」


 その言葉は、煉獄と地獄と異なっている最も大きな相違点は即ち、地獄は"永遠の苦脳"と"永遠の悲嘆"が存在する"永遠の場所"だったが、煉獄は徐々に"楽々と登る"事が出来る世界なのだ。

 その天使は、聖綴の額にある七つの"P"のうちの一つを、翼で拭い消した。


「さぁ、先へ進むが良い」


 天使は述べるとそこを退いた。

 そこに、他の環道(ジローネ)からとても急勾配で上っている崖があり、その上の環道は第二環道だった。

 その環道に入った時、"心貧しき者は幸いなるかな"というとても美しい歌声が聞こえてきた。

 歌声を聴きながら前方を進んでいる時、ヴェルハルトが言った。


「その額の"P"の羅列……いつの間に刻まれたんだ?」


 これに聖綴は笑顔で答えた。


「それは寝ているヴェルを、ナムウドッグの姿に戻って抱き上げて煉獄の門を潜った時にだよ。本当なら君が刻まれたのを、俺が代理になった」


「え、そうなのか? じゃあその"P"、俺に写せ」


「え? 写すって?」


「一か八か、こうだ!」


 ヴェルハルトは言うと、自分の額を聖綴の額にくっ付けた。

 すると、ジュウゥとの音と共に、"P"の文字はヴェルハルトの額へと写った。


「へぇ、マジで写せた」


 ヴェルハルト本人も少し驚く。

 煉獄は変動する場所、地獄は永遠の場所という法則が明らかになる。

 地獄は"恐ろしい叫喚の間"を通り、一方煉獄は"歌声が流れる間"を通って進むようだ。

 更に地獄は下り坂なのに苦しく、煉獄は登り坂なのに軽やかだった。

 そして聖綴とヴェルハルトは第二環道へと進んだ。

 聖なる石段を以前よりも軽やかに登る事が出来た。

 そしていよいよ『嫉妬の罪』を浄める為の第二環道に辿り着くと、石段の上まで来た。

 登ると罪が取れ、身が浄まる山だが、ここでも山の中腹がまた抉られて環道が造られていた。

 そこには第一環道と同じ様に、一本の環道が山の周囲を帯を巻く様に通っていた。

 その環道の曲がり具合は前よりも急な弧を描いていた。

 そこには影も像もなく、見えるのは崖だけで、鉛色をした巨石の質素な道が通じていた。

 第一環道は、全体が純白の大理石で造られていて、立派な彫刻で建造されていたが一方、第二環道は鉛色の巨大な岩で造られた余分な飾りのない道だったが、煉獄の基本的形状はどの環道も同じだ。

 煉獄は、上に登るにつれて浄化される山であり、また一つ一つの環道は山の帯を巻いた様に設置されている。

 そして更に、その環道は上に行けば行く程急なカーブになるので、歩く距離も時間も短くなる。

 浄罪の霊魂達は、煉獄門の所で門衛天使によって額に七つの"P"が刻まれる。

 そして次に霊魂達が第一環道で傲慢の罪を浄め終えた時、今度は守護天使が翼にて文字を一つ消す。

 その場所を赦免の関所イル・パッソ・デル・ペルドーノと呼ばれている。

 この第二環道の霊魂達は、岩と違わない色のマントと馬の(たてがみ)で織った粗末な服を着ていた。

 そして、もう二度と嫉妬の過ちを犯さない様に、両目を塞がれている。

 一本の鉄の糸が目蓋(まぶた)を縫い合わせている。

 この煉獄にいる霊魂達は、この世で犯した罪の為に永劫の苦痛を受けているわけではなく、彼等はこの世の重い罪を浄めたり、回心した魂の浄化の為に煉獄界にいる信心深い霊魂達なのである。



ここまで読んでくださったあなたに愛の口づけを!w

大変ありがとうございます‼

良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。

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