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【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅳ:煉獄入界編
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episode,Ⅲ:霊魂達の祈り

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


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 煉獄前域アンティプルガトーリオにそびえた断崖を登り切った釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(ひいらぎ)ヴェルハルトは台地(バルツォ)に到着した。

 そして台地は、煉獄山の麓を周回する環状道路(チンギオ)になっていた。

 しかし登って来た道の険しさに心が萎えそうになったヴェルハルトは、聖綴につい弱音を吐いた。


「なぁ聖綴。俺らはどこまでの距離を行かなければならないのかを知りたい。何故ならこの山腹は、俺の目で見る限り登る事が出来ない程高くそびえ立っていやがるから」


 これに聖綴は、隣でげんなりした顔をしているヴェルハルトを見て、クスッと笑った。


「この山は、下の登り口に近ければ近い程登り辛く、上がれば上がる程苦が減るんだよ。だから最後には本当に快適で登りがいとも軽妙になって、つまりは舟で流れを下る様になる。そうなれば(みち)の終わりに着いた事になるんだ。そこで疲れを休める様期待していいよ」


「マジでか?」


「うん。大マジ」


「お前は本体がナムウドッグなお陰だからか、一切の疲れを見せないな。寧ろ足取り軽やかだ。足にも翼が付いてるんじゃねぇのか?」


「アハハ! だったら俺、アポロンになれるね!」


 すると近くの岩陰から、声が聞こえた。


「多分、天国(エデン)に着くより前に腰を降ろしたくなる感情を持つ事になるでしょうね……」


 ヴェルハルトは聖綴と共にそちらへ顔を向けると、六人の魂が(うずくま)り膝を抱え如何(いか)にもだらしがない。

 その一人は物憂げな様子で座り込み膝を抱きかかえ、(ひざ)と膝の間に頭を項垂(うなだ)れて(うつむ)いている。

 まるで怠惰(たいだ)と兄妹とでも言えそうな自堕落な格好をしている。

 すると男は頭を膝頭から動かし、聖綴とヴェルハルトを見上げて言った。


「元気のある君達は、今すぐ上へ行け」


 その男の名はベラックワといった。

 聖綴は彼に怠けて座り込んでいる理由を尋ねた。

 するとその亡霊は言った。


「おお……兄弟よ。上へ行っても無駄だ。門に座っている神の御使い──天使は俺を修験道へ行かせてくれない」


 修験道──(すなわ)ち煉獄本道の事だ。


「罪滅ぼしはまだ駄目だ。入る前に俺が現世にいた同じだけ年月が経つのを門の外で待たされている。俺はクズで末期にやっと後悔の溜め息を吐いたからだ」


 三途の川の渡し守カロンの舟に乗せられた死者は地獄へ運ばれ、地獄の判官ミノスの判決によって定められたら最後、永遠にそこの拷問から逃れる事が出来なかった。

 だが、天使が操舵する舟で煉獄に連れて来られた死者は、早い遅いはあるにせよいつかは天国へ昇る事が出来る。

 ただ問題なのは、どのくらい早いのか、またどのくらい遅いのかは、生前に犯した罪業の種類と軽重によって変わるらしい。

 ベラックワの場合、彼が現世にいたのと同じだけの年月を煉獄前域で留まらなければならなかった。

 すると後方から新たな霊魂達の一団が"ミセレーレ"を歌いながら近付いて来た。


「~♪神よ、貴方の慈しみによって、私の不義をことごとく洗い去り、私の罪から私を清めてください。私は自分の(とが)を知っています。私の罪はいつも私の前にあります♪~」


 一団は聖綴とヴェルハルトの元まで来た時だ。

 この二人に影が出来ているのを見て驚愕し、その中の二人の代表者が近寄って来た。

 これに警戒を覚えた聖綴が、口を開いた。


「帰って君等を派遣した諸君に報告してくれ。我々の体は本物の肉で出来ている。どうやら影を見て諸君等は立ち止まった様子だけど、それならばこの答えに納得がいく筈だ。御利益があるかも知れないよ? 我々に敬意を表したらいい」


 すると二人の霊魂は仲間の一団の方へ戻って事情を話すと、彼等は皆連れ立って聖綴とヴェルハルトの元へ駆け寄って来た。


「おい聖綴。お前が余計な事言うからだ。連中こっちに向かって来やがったじゃねぇか」


「あー……つい、咄嗟に……」

 

 御利益があると言われたからには、是が非でもそれに縋りたい。

 霊魂達は話を聞いてもらう為に、順番に近寄って来た。

 最初にやって来た霊魂は、ヤコポ・デル・カッセロと名乗った。


「もし君が折り合ってロマーシャとシャルルの領地に挟まった国へ行くなら、どうかファーノの(まち)で皆に鄭重(ていちょう)に頼んで、私がこの重い罪を浄める事が出来る様、私の為に祈りをあげてもらうよう取り計らってくれないか」


「う~ん……出来たらな」


 ヴェルハルトはそう答えると、耳の穴をかっぽじった。

 ヤコポの次に来た霊魂は、ボンコンテと名乗った。


「ああ、あの山頂まで君の望み通り君が上がれると良いのだが。君も優しく憐みの心で私の望みに手を貸してくれ。私はモンテフェルトロの出、ジョヴァンナも誰も私を構ってくれないから、この人達に伍して私は面を伏せて行く」


 彼──ボンコンテは、フィレンツェ教皇派軍とアレッツォ皇帝派との対決で皇帝派を助けて、アレッツォから教皇派を一掃した。

 しかし、何だかんだで戦死したのだが、ボンコンテの亡骸は戦場には見つからなかったらしい。

 喉を刺されたボンコンテは、徒歩で逃げ野を血で染めついぞ出血多量により目も見えなくなり口も利けなくなって、マリアの御名を唱えて死んだ。

 その場に彼は倒れ彼の肉体だけが残った。

 (やが)て彼は、迎えに来た天使と悪魔の奪い合いになり結局、魂は天使に、肉体は悪魔の物となり(もてあそ)ばれる事になったそうだ。

 次にやって来た男は、ソルデルロと名乗ると、尋ねてきた。


「あなたは地獄から来たのですか? どんな回廊の中から来られたのか、私に教えてください」


 これに聖綴が答えた。


「悲しみの王国の全ての圏谷を越えて、やって来てここにいる」


 煉獄前域にも夜の帳が下りようとしている。

 聖綴はソルデルロに煉獄本土に登る道を尋ねた。

 だが夜の闇が気力と能力を奪うので、身動きが取れなくなると教えられた為、一夜をそこで明かす事にした。



ここまで読んでくださったあなたに歓喜の祈りを!

大変ありがとうございます‼

良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。

「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです♪

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