表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅲ:悪の溜まり場地獄編
34/38

episode,ⅩⅩⅠ:裏切りと悪魔の餌食

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


☆気に入って頂けましたらお気に入り登録をお願いいたします‼



 釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(ひいらぎ)ヴェルハルトはボッカと別れて、アンテノーラの奥へ奥へと進んだ。

 すると一つの穴の中に二人の亡者が一緒に氷漬けになっている光景が目に入った。

 よく見ると、飢えた者がパンを貪り食う様に上になった亡者が、下になっている者の脳と襟首の間を噛み付いていた。

 その壮絶な光景を目にした聖綴は、噛み付いている亡者に向かって声をかけた。


「なぁ、そこのあんた。あんたはそうやって畜生の如く相手に喰らい付いて憎悪の念をぶちまけてるけど、その理由は何なのさ?」


 するとその罪人は残酷な食事をやめて口を上げ、相手の後頭部に生えた髪の毛で血に染まった口を、拭った。

 そして語り始めた。


「こいつの裏切りで、俺だけならまだしも、幼い子や孫四人までもを俺と一緒に、投獄されたのだ。幼子達は日を追うごとにパンをねだって泣き声を上げている。俺の心の気持ちをお前、考えてみるがいい。それで心が痛まなければお前は子供ながらにあっぱれなまでの無情な小僧だ。これで泣かなければ、一体何に泣くのだ? その辛さゆえに、悲嘆の余り自分の腕に噛み付いた。すると幼子達は、それが俺の空腹による行為だと思ったらしく、自分達の肉を食えばいいとまで言わせてしまった。よって俺は反省して噛み付くのをやめた。やがて幼子達は一人、また一人と餓死していった。栄養不足から失明した俺は手探りで子供達を探し、生死を確認するとそれら子供の名を連呼して泣いた。やがて俺も、餓死に敗れて死んだ‼」


 叫喚すると男は、再びその男の頭蓋骨に噛み付いた。


「うわぁ~……恨み憎しみ半端ねぇな。まさにウ〇-キングデッドを目の当たりにしている気分だよ」


 ヴェルハルトの言葉の次に、聖綴も喰われている方の亡者へと捲し立てた。


「何て事だ……お前は子供達をそうした刑に処すべきじゃあなかった! それらの子供達はこの十二歳の俺よりも年端もゆかず無邪気だった‼」


 そうしてこみ上げてきた涙を、聖綴は思い出して凍る前に慌てて拭い去った。

 そうしてキッと顔を上げると、ヴェルハルトを促した。


「次へ行こう。ヴェル」


 二人は第九圏谷コキュートスの第三区画アンテノーラよりも重罪人が閉じ込められている場所なのもあり、その責め苦も当然厳しいものになっていた。

 そこでは、顔を俯けず仰向けになったまま別の一群が、氷に手荒く締め付けられていた。

 涙すらもそこでは流す事が許されない。

 苦悩の涙は眼の端で行き澱み内に戻り更に苦悩さを増した。

 最初の涙は氷結して(かたま)り、まるで水晶のキャップのつばの様になっていた。

 目蓋(まぶた)が凍り付き目が閉ざされ視力を失っている一人の亡者が、聖綴とヴェルハルトを下層の地獄へ堕ちていく途中の亡者だと思い込み、二人へ話しかけてきた。

 

「ああお前等、地獄の最下層に割り当てられた極悪なる亡者よ。この俺の顔から堅い氷の膜をはいでくれ。俺の心中にわだかまる鬱憤(うっぷん)を涙がまだ凍る前に、少しでも良い。外へ流したいのだ。俺は修道士アルべリーゴ。犯した罪よりも重い罰を受けている!」


 すると聖綴は眉宇を少しだけ寄せてから、静かに口を開いて奇妙な質問をした。


「お前はもう、死んだのか?」


 この言葉に、隣に立っていたヴェルハルトも眉宇を寄せた。

 するとアルベリーゴは答えた。


「一体そうして俺の肉体が未だに現世に留まっているのか、学がないから俺には分からない。こうした特権をこの地獄第九圏第三円に有している。アトロポスが魂を飛ばす前に、この国にはしばしば魂が堕ちて来る」

 アトロポスとは、"運命の女神"の名だ。

 その女神が現世で命を奪う前に、魂だけが地獄に堕ちて肉体は現世に留まっていると言う訳だ。

 つまり、その地獄にいる亡者は生きながらにして地獄に堕ちているとの意味で、しかも地獄の最底層にいるので、現世も現世では最も重罪人として生き続けている人間。

 しかもこのアルベリーゴという亡者は、現世と地獄に同時に存在している事を"特権"だと虚栄を張っているのだろう。

 更にアルベリーゴは言葉を続けた。


「俺がやった様に裏切りを働くと肉体はすぐさま悪魔の手に取られてしまう。それから寿命が尽きるまで、悪魔が肉体を支配する。だからこの俺の後ろで寒い目に遇っている亡者の肉体の方は、多分現世で見かける筈だ」


 アルベリーゴの言う様に、極悪人は悪魔にとって格好の餌食と言う訳だ。

 どうやらアルベリーゴは客人を裏切って殺害すると言う罪を犯したらしく、その行為と同時に肉体は悪魔に乗っ取られ、魂はトロメーアの氷の池へと投げ込まれたのだ。

 アルベリーゴは、自分と同じ罰を受けているブランカ・ドーリアと言う亡者を紹介した。


「お前は俺を子供だからと、騙そうとしているんじゃないのか?」


 聖綴はそうシレッと述べた。

 すると修道士アルベリーゴは言った。


「そいつはその頃自分の代わりに悪魔を、自分の肉体ともう一人の男の肉体の中に置いて来た。そいつは親戚の枠で一緒に組んで裏切りを働いた」


 聖綴は、眼を覆っている氷を取り除いてくれと言う修道士アルベリーゴの願いを無視して、トロメーアをヴェルハルトを伴って去って行った。

 第九圏谷コキュートスは氷地獄なので、カイーナ、アンテノーラ、トロメーアの三つの区画に閉じ込められている亡者達は、全員氷漬けにされていた。

 だが、それらの亡者も身体の一部は氷の上に出す事が許されていた。

 しかし、最下層のジュデッカの亡者達は皆、凍り付いていた。

 その光景はまるでガラスの様に透けて見える。

 ある者は横たわり、ある者は起立し、ある者は頭で、ある者は爪先で突っ立っている。

 そしてある者は弓なりに顔と足を向け合っている。

 ジュデッカの亡者達は、地獄へ堕ちて来た姿のままで、全身が氷の中に凍結されていたのだった。



ここまで読んでくださったあなたに心からの感謝の祈りを!

大変ありがとうございます‼

良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。

「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ