episode,ⅩⅤ:肉体バラバラ亡者
【登場人物】
*釘鎹聖綴(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。
*柊ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。
*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。
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「何かよく分かんねぇけど……オッサン、何て名前だよ? まぁでも聞いた所で分かんねぇとは思うけど」
柊ヴェルハルトがそう答える。
だが、その亡霊は名前を告げずに包まれた炎を舌の様に動かして、自分の身の上を話し始めた。
ただ彼は、ヴェルハルトと隣に立つ釘鎹聖綴の二人共を、死者の亡霊だと思い込んでいて、現世に知れると汚名になる様な事まで話し始めたと言う訳だ。
彼がその様に決心した矢先に、大僧正──即ち教皇ボニファティウス8世が反対派枢機卿と皇帝派を抑える為に、彼をモンテフェルトの領主にした。
その教皇の誘いに乗ってしまって後悔している事を、彼の亡霊はヴェルハルトに打ち明け出した。
そしてその亡霊は、自分の生前の罪業を語り始める中、ボソッとヴェルハルトが短く訊ねた。
「その話、長くなりそ?」
しかし無視して彼は言葉を紡いだ。
「私と言う人間が母親から授かった骨と肉で出来ていた限り、私のする事為す事は皆、獅子らしい所がなく狐の奸智狡計だった。回り道も抜け道も皆覚えていたし、権謀術策にそれ程長けた私だったから、その名前は津々浦々にまで広まった」
獅子とは暴力型で、狐は欺瞞型に見られていた。
するとふと、聖綴が呟いた。
「欺瞞は暴力よりも憎むに値する」
「──だってよオッサン。人騙さずに喧嘩上等の方がマシだって!」
するとその火だるまの亡霊はゆらりと揺れると、フラフラと二人の横を通過して行こうとしたのを、聖綴が引き止めた。
「なぁオッサン。話はもう終わりか?」
これにヴェルハルトはキョトンとする。
それにこの火だるまの亡霊はピタリと足を止めて、ゆっくり振り返って言った。
「……後悔は悪意の先に立たず……私が死んだ時、フランチェスコが迎えに来た。だが黒天使の一人が彼に言った。『連れて行くな。俺の権利を侵すのはやめろ。こいつの瞞着の助言をした以上、下界の俺の奴隷達の間に落ちるのが定めだ。あれ以来、ずっとすぐ後から付けて来たのだ。後悔しない奴を宥すわけにはいかない。また、後悔と悪意は誰が見ても矛盾だ。両方一緒に出来ようがない』と」
そう言い残すと、フラフラと向こうに行ってしまった。
「黒天使……」
聖綴は虚空を睨みつけつつ、そうポツリと呟いた。
「どうした聖綴」
ヴェルハルトが尋ねた。
「うん……ここまで来る間に、気付き始めたんだ。俺が……正確には本体の方のナムウドッグが知りたい情報を持っているのはこの、地獄ではなく天国の方なのではないかと、ね……」
「……あー、なる。……まぁでもよ。別に急いでねぇんだったらひとまず最下位まで行ってからでも、悪くねぇんじゃね?」
「ん、そだね」
ヴェルはルトの言葉に、聖綴ははたと顔を上げると、ニッコリ笑って首肯するのだった。
そしてあらゆる戦争犠牲者よりも残忍な仕打ちを受けている罪人達の刑場である、第八圏谷第九濠へと降りて行った。
聖綴とヴェルハルトが第九濠で最初に出会った亡者は、身体のど真ん中を縦に切り開かれて鼻から上にかろうじて繋がっていた。
小悪魔一匹がこの後に控えているがそいつが、聖綴とヴェルハルト達二人がこの苦痛の道を一回りする度ごとに、この一群の一人一人に剣の刃をまた当てて、今度は違う箇所に残酷無比な化粧をする。
一回りして小悪魔の前に差し掛かるまでに、傷口はみな閉じてしまうからだ。
これまで通過した地獄の霊魂達がそうであった様に、この亡者もヴェルハルトと聖綴が生きたまま冥土にいる事を不思議に思った。
これに聖綴が口を開く。
「我々は豊富な経験を積ませる為に来ている」
その亡者はそれでも不思議そうに視線を送りながら、二人の前を通過して行った。
次は腹を縦に裂かれ両足の間に腸がぶら下がっていた。
内臓が見えていた。
そして貪り食ったものから糞を作る所の悪臭を放つ、胃袋も見えていた。
そのグロさに、ヴェルハルトは直視出来ずにいるのに、その亡者は腸を足元で引き摺りながら通過して行った。
次に出会った亡者は、喉を刺され、鼻は眉毛の付け根まで削がれ、耳は片方しかない女だった。
「私は生前お前を日本の地で見た覚えがある。それともあまりよく似ているから、人違いしたのかな」
「……さぁてな」
聖綴はその亡者を見上げてから、あっさりと吐き捨てた。
これに少し驚いた様子で、呆然としつつそれっきり聖綴とヴェルハルトの前を通過して行った。
次に喉を刺された亡者がやって来て言った。
「あの最悪の二人の老女に伝えてくれ。地獄での予見に狂いがなければ、その二人は不実な暴君に裏切られ船から外へ駆り出され、近くの港で重し諸共海へ沈められる筈だ。フィリピンの海賊にせよ他の連中にせよ、こんな大罪を犯した試しは海神も見た事ない」
するとこれにヴェルハルトが答えた。
「そんな二人は知らねぇし、今のご時世裏切られて海に沈められるとか、何も珍しくも大した罪でもねぇ」
ヴェルハルトのこの発言に、その亡霊は愕然としながら通過して行った。
次にやって来たのは両手を切断され、腕の部分を上に上げている亡者だった。
その両腕の手首切断面から滴り落ちる血で顔を汚しながら、叫んだ。
「奴の事を覚えておけ! 俺は不覚にも口走った。『事が成ればそれで終わりだ』それが街の人々に禍の種を播いた‼」
「へぇ。うちのスラムではそんなの、日常茶飯事だぜ?」
ヴェルハルトの抑揚のない発言にその亡者は、唖然として通過して行った。
この第九濠は、分裂・分派の罪人の地獄だ。
そうして次々と肉体のどこかしらの箇所を失ったり切り刻まれている亡者達と言葉を交わした最後の亡者は、胴体から首を切断されしかも、髪の毛を掴んでその己の首を提灯の様に手にぶら下げて歩いて来て、その頭を突き出すと何と喋れて大声を上げた。
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