episode,ⅩⅣ:火だるまの亡霊の身の上話
【登場人物】
*釘鎹聖綴(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。
*柊ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。
*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。
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地面に固定されている彼等は、道を塞ぐ様な形で並べられていたので、重い外套を着ている為に跳び越えられない亡者達からに、踏み付けられるしかなかった。
カヤパ達は全裸ゆえ身軽であったものの、他の罪人のそれらの重さを受けて、何倍も苦しむ事になっているのだった。
釘鎹聖綴は第五ボルジャの悪魔マレブランカ達が教えてくれた道を進んだが、疑問を覚えてきた。
聖綴は修道士亡者カタラーノに、この第六ボルジャから第七ボルジャに抜ける道を尋ねた。
聖綴と柊ヴェルハルトが濠の中へ降りた付近に登る事の出来る崖道がある事を、カタラーノから教えられて知った。
イエスが十字架上で死ぬ間際に叫んだ大声で、第六ボルジャに架かっていた岩橋は崩壊している。
崩れた岩石が濠の斜面に堆積していて、登る事が可能になっていた。
その事を知った聖綴は安堵した。
「仕方なく黒い小悪魔に頼まずに済む」
そう言ったものの、聖綴の内側にいるナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブは、小悪魔集団の頭目マラコーダが嘘をついて偽りの道を教えた事に激怒していた。
「戻れるものなら戻って、マラコーダを消し炭にしたい気分だよ……」
ナムウドッグの気持ちを、聖綴はそっと呟いて代弁した。
修道士カタラーノが、崩れた岩橋の残骸が積み重なっているので、そこをよじ登れば次の第七ボルジャに辿り着ける事を教えてくれたが、そこは岩が積み重なっているだけで道と言えるような場所はなかった。
だがそこを登らなければ次の地獄界には進めない。
聖綴はそれらの岩を慎重に調べて、登れそうな岩と経路を見付けるとヴェルハルトを、後ろから押し上げて登らせた。
「お前は大丈夫なのかよ聖綴。俺より小せぇのに」
ヴェルハルトの上からの言葉に、聖綴は不敵に笑った。
「ヤダなぁヴェル。俺を誰だと思ってるの?」
言うや否や、まるでカモシカの様にヒョイヒョイ身軽に登って来た。
「いいな、お前……ナムウドッグの身体能力」
そう呟いてヴェルハルトと聖綴は、狭く岩だらけの歩きづらい道を進んだ。
すると前方の第七濠の方から、言葉を形成するには不向きな声が聞こえてきた。
崖の上に架かったアーチ状の岩橋の天辺から下を覗いたが、暗くて何も見えない。
濠の崖は向こう側が低いので、橋を渡りきった第八番目の堤から下へ降りる事にした。
だがそこでヴェルハルトが見たものは、恐ろしく積み重なった蛇の山だった。
遥か昔、大地の不毛でその野はいかなる有用な作物の種も宿さぬ中で、大地はメデューサの腐汁から滴り落ちた毒液、狂暴な血から流れ出た恐ろしい滴を宿した。
その暑熱は威力を増幅させ、毒液を煮詰めて、脆い砂地に染み込ませた。
その大地で最初に滴り落ちた血の毒が、砂地から頭をもたげさせ永久に眠りを与えるコブラを出現させた。
だがメデューサの血から生まれた蛇はコブラに留まらない。
哀れな獲物の血が止まらぬようにさせる巨大なハイモッロイス。
また陸と海、二つの顔を持つシュルティスに棲まうケルシュドロス。
泡の煙を靡かせながら進む水蛇ケリュドロス。
常に真っ直ぐに這うケンクリスも生まれた。
また砂地と同色でそれと見分けのつかぬハンモデュテス、背を曲げて彷徨う角蛇ケラステス、霜尚残る地面に皮膚を付けて這う事の出来る唯一の蛇スキュタレ。
肌が乾燥したディプサス、前後に進める双頭の蛇アンピスバイナ、水を毒にするナトリクス、空飛ぶヤクレス、通り道に尾で溝を作って満足するパレスアス、泡吹く口を開ける貪欲なプレステル、肉もろとも、骨をも溶かす毒蛇セプスも生まれた。
地球上の一部の地域の全てを併せたよりも、多種多様で大量の蛇がこの第七ボルジャに棲息して罪人を罰しているのだ。
この凶悪無残な群れの中を身を隠す穴を見付ける当てもなしに、狼狽した素っ裸の人々が逃げ回っている。
捕った亡者は両手を背中で蛇でも以って縛られ、その蛇が股の間から尾と頭を擡げ、腹の前で絡みついてとぐろを巻いている。
すると聖綴とヴェルハルトが見ているすぐ目の前で蛇が一匹躍り出て、その男の首の付け根を噛み付いた。
刹那、男は忽ち火を発して燃え上がり、全身ことごとく灰と化して崩れ落ちた。
が、また元の姿に復元されたではないか。
その亡者は、恐怖だけが記憶に残った。
更にまた、その亡者は同じ拷問を永劫に繰り返し、受け続ける事になっていた。
何にせよ、蛇地獄第七ボルジャは生前、盗人であった亡者達が刑罰を受けていた。
ヴェルハルトは、聖綴に連れられ第七ボルジャ蛇地獄の断崖を、登り切った。
そして第八ボルジャの谷底を見下ろす事が出来る堤に到着した。
ヴェルハルトは土手の上から、第八ボルジャの谷を見下ろした。
すると眼下の谷一面に蛍の群れの様な灯りが見えた。
谷合を動いていく火の一つ一つは、それと同じだった。
更に堤の斜面を岩角につかまりながら降りるに従って、先が大きくなって炎である事が判明してきた。
更に近付くと、亡者一人一人、それぞれの炎で焼かれていた。
更に近付いて見ると、火が二柱になって燃えている所に来た。
中で亡者が焼かれていたのだが、誰なのかは判別出来なかった。
だが途端にその内の一人が火だるま状態で、語り掛けて来た。
「私は軍人だった。ついでにフランチェスコ会士となった。こうして腰に縄を巻けば、罪滅ぼしが出来るかと思ったのだ。事実、私の信心は全て叶えられないかも知れないが、呪われてあれ、あの大僧正が私をまた元の罪へ引き込んだのだ。何故か、どうしてか、私の言い分を君に聞いてもらいたい」
彼は自分自身を軍人であったが、フランチェスコ会士になったと、身分を明かしている。
そして縄を帯にして腰に巻いたのは、清算の尊さを説いた聖フランチェスコを祖とする教団の、特徴だったので彼も禁欲的な生活に、入ろうとした様だった。
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