間に飛んできた矢
パーティがギルドで依頼を探している時のこと。
葵は街中を散策するという名目で東の大陸からつけ狙う者を捕獲しようとしていた。
街中では至って普通の振る舞いを努める。
『やはり視線は感じる。・・・だが、殺気は無い。観察しているだけなのだろうか?』
店を見たり、時折立ち止まって本屋の雑誌や店の物を手に取ったりして反応を見る。
視線は感じるのだが、殺気も無ければ近寄ってくる気配もしない。
相手の目的がいまいち掴めない。
結局、今日のところは相手が何か仕掛けてくることは無かったので、帰ることにした。
『予想通り、人目が多いから何も仕掛けて来なさそうだな・・・』
帰り道も相手の視線や気配に気をつけながら歩いていると、人通りの少ない通りで声をかけられた。
「わぁ!!」
「あおあお、葵さまぁ!!」
まるでシスターが2人いるかのようなその反応をするのは、葵教(非公認)信者のジャトロファとソルガム。
彼らは今のところ、教会に通うたった2人の葵信者なのだ。
葵は思わず目が座った。
「何だ?」
「ここ、こんなところに御降臨されておられたんですね!!」
「いつから天界からこちらに!?」
『この言い回しは何なのだろう?』と思いながらあしらおうとする。
「天界って・・・俺は常に地上にいるし、こんな所とか言うけど、東西合わせた大陸一番の大都市だからな、ここは!」
ツッコミを入れると、背を向けた。
「じゃあな」
「葵さま!」
「お待ちを!!」
葵にすがりつく2人を振り払おうとしたら、途端に殺気を感じた。
神経を研ぎ澄まして方向を感知する。
『こっちだ!!』
殺気の出所の方向を見ると、矢が飛んできていた。
「危ない!!」
2人の胸ぐらを掴んで引き寄せる。
勢いで倒れ込み、尻餅をつく葵に2人が覆いかぶさった。
「イテテ・・・」と呟く葵に2人が体を起こして驚く。
「大丈夫ですか!?葵さま!!」
「お怪我はありませんか!?」
ジャトロファが手を差し出して立ち上がらせる。
ソルガムは矢を拾った。
「葵さま・・・これは一体?」
「今、俺は狙われている!あまり近づくな!!」
強く言われて2人が驚く。
「そんな!!一体誰に!?」
「何故狙われているのですか!?」
なんて聞いてみたものの、2人は直感的に同じことを思いついた。
「もしかして魔女狩りしときながら!」
「元魔女信仰の者たちを根こそぎ奪っているからですか!?」
しかもこの分割して一文を言ってくるあたりの仲の良さがまたムカつく。
「誰も改宗行為なんかしてないわ!!・・・てか俺はお前らのやってる宗教活動を一切認めてないからな!?」
「そんなぁ!!」と声を揃えて嘆く。
「いいから行け!俺に近づくな!関わるな!!」
そう言って去ろうとしたが、再度振り返る。
「そうだ!シスターには絶対言うなよ!!あの人に知れたら絶対に俺を見張って犯人探しをしようとするからな!!」
「それの何がいけないのです?」
「そうですよ!シスターだけじゃない!我々だってお手伝いをします!!」
真剣に心配をして申し出てくれるが手を突き出して制する。
「いや、だめだ!今のを見ただろ!!命の危険性がある!!俺だけでなんとかする!!」
「なら尚更協力させてください!!」
「我々だって魔法による能力を持ち合わせています!!力になれるはずだ!!」
葵が言葉に詰まる。
「こういう危険な状況ほど、1人で戦わないでください!」
「あなたは優秀な方だからいつも1人でなんとかされて来たのでしょうが、それは得策ではないともわかっているはずです!」
少し考えたが、やはり首を横に振る。
「それでもダメだ!」
「何故です?1人よりも複数人の方が有利に決まってる!!どうして葵さまは俺たちを避けるのですか?」
「そうだ!俺たちはこんなにも葵さまのことを大切な存在だと思っているのに!!」
それに対して葵も強い言葉で言い放った。
「わからないのか!?俺だって大切に思っているからだ!!失いたくないんだよ!!」
この予想していなかったロマンチックなセリフに、思わずときめきを覚えて口元を両手で押さえる2人。
その途端に、3人の間に矢が飛んできて地面に刺さった。
3人が無表情でそれを見つめる。
「葵さまが恋人に言うようなセリフ吐くから何か飛んできましたよ」
ジャトロファが淡々と言うと、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「と、とにかくいいな!?俺に近寄るな!!俺は大丈夫だから!!」
葵はそれだけ言うと、さっさと立ち去ってしまった。
残された2人はしばらく葵を見送った後、お互いに目を合わせた。




