マッチじゃダメだけど・・・
チョコの叫び声を聞いて駆け出すパーティ。
そしてチョコはというと、頭上に集まり落ちてくる水の塊から走って逃げる。
間一髪、最後は回転して逃げ切った。
大量の水が跳ね返ってチョコに襲いかかる。
チョコの体を包み込むように取り巻くと、口元を塞がれて息ができなくなってしまった。
必死に息を止めて耐えているところにパーティが来た。
「おい!お前、チョコに何してる!?」
アスタが指をさして叫ぶと、キャメリアが前に出てラエビガータを召喚した。
「ラエビガータ!!チョコの口元の水を取って!!」
ラエビガータが魔力を解放すると、チョコの口周りの水を奪おうとする。
だが、相手も奪われないように魔力を使って抵抗する。
そんな中、誰にも気づかれずに敵の背後に回ったシャロンが自慢のプリムトンの杖を振った。
魔法を使う用の杖にも関わらず、魔法は使わずに相手の頭を殴った。
「当たった!!」
どう見ても水分しかなさそうな敵に物理が効いたことに驚いている。
しかし、驚いていたのはシャロンだけではない。
むしろ、シャロン意外全員同じことを思った。
『そうやって使うんだ・・・』
敵も倒れながら思ったという。
色々と衝撃的すぎて人の姿に戻ってしまい、チョコも口元を覆っていた水が外れて仲間の近くに慌てて駆け寄った。
「何なんだお前!?一体何が目的だ!!なんでチョコを狙う!?」
アスタの質問に答える余裕がないくらい、さっきのシャロンの一撃が効いたようで敵は頭を押さえて四つん這いで必死に意識の回復を待っている。
しばらく無言だったのでチョコが代わりに説明した。
「この人、魔王軍と提携していた組織の一員で、魔王軍が無くなったから組織も解体されちゃったんだって!!仲間の多くは他の敵対組織に殺されたり、拉致されたりしたらしくて魔王軍を倒したって噂のある僕を逆恨みしているんだ!!」
みんなチョコの説明を頷きながら聞いていた。
「説明ご苦労。お礼にあの世に送ってやるよ!!」
立て直した敵がまた姿を変えようとしたら、アスタが手を突き出して制した。
「待て!さっきのその格好は何なんだ!?ただの組員にしても、人間離れしている!!まるで魔獣じゃないか!!」
「きしめんの部下にも状態を変化する門番がいたわ!あの部下たちと同じ一族とか・・・?」
キャメリアも聞いた。
「あぁ・・・一般人は見慣れてないか。俺の周りにはこういう奴らがゴロゴロしていたけどな。でもそれも、CHEVAL MARINの中でも実験に成功した者だけだけどな!」
「CHEVAL MARIN?なんだそれは?」
聴き慣れない言葉に傾げるアスタ。
「それも一般人は知らないのか。CHEVAL MARINってのはタツノオトシゴのことで、隠語だよ。魔王軍が攻め落とした土地で孤児を拾っては育てて作り上げたのが前まで世界を牛耳っていた魔王軍だが、その中でも魔王軍が拾い損ねた孤児を集めて魔王軍の真似事をそこらの組織が行っていたんだよ。魔王軍みたいに人体実験とかしてな!」
だんだんと語気に怒りが混じる。
「もっとも、魔王軍の真似事なんて技術が足りてないから失敗作だらけだけどな!!俺も水の魔獣との融合実験をされてできたが、魔王軍が行う完成度の半分にも及ばない!!だが俺はまだマシな方だ!!人間の形すら残ってない者もいるんだ!!」
残酷な話に思わずみんな息を呑んだ。
「さぁ、あの世への土産話は持ったな?・・・死ね」
一気に水の魔獣の姿となり、アスタたちを襲おうとする。
パーティの頭上に水の塊が集まり始める。
慌てて背を向けて走るが、その途中アスタが指示して方々に散った。
「な、なんで僕だけ狙われるの!?」
パーティはそれぞれに散ったにも関わらず、チョコの頭上に水が追いかけてきている。
「当たり前だ!!はなからお前しか狙ってないんだよ!!」
「チョコ!!」
アスタが振り向きチョコを見ると、すでに水が落ち始めていた。
「わぁぁぁあああああ!!」と叫ぶチョコにシャロンとキャメリアが動いた。
「グランク!!」
「ステファニア!!」
シャロンが水を固めて、ステファニアのツタで氷を砕く。
チョコはその下で頭を抱えてしゃがんだいたら、大きめな雹のような氷の粒が落ちて来た。
「ありがとう!」
「早く!逃げるわよ!!」
キャメリアに急かされて走って行った。
「ふん!どこに逃げようと、必ず見つけてやる!」
パーティは相手をまいたのを確認すると、みんなで話し合っていた。
「あいつの能力は厄介だな・・・」
「みんなが来る前は水に体を掴まれて、口元の水も張り付いてきて驚いたよ!!まるで水が意思を持ってるみたいだった!!」
「その水引き剥がすのに魔力を結構使っちゃったし、そう何度もできないわ!!」
「シャロンだって、大事な杖をあんな使い方したくない!!」
それにはみんな黙ってシャロンを見て、同じことを思った。
『それは自分が勝手にしたんだろ!!』
みんなに見られている間もシャロンは至って真剣な顔をしていた。
「とにかく!あいつを何とかしないとな・・・」
「どうやって?隠れ続けるにも寝込みを襲われたら終わりだし・・・」
不安そうに言うチョコにキャメリアが呟くように言う。
「うーん・・・本当、それこそ炎系の魔法を使えたらいいんだけど・・・」
「水に炎?あまり相性良くないんじゃないの?消されちゃいそう・・・」
シャロンが傾げて聞き返した。
「それもそうよね。私が思ったのはそれこそ、きしめんレベルの火力があれば水なんて蒸発させられるって思ったんだけど、炎系の魔法を持ってたとしても私たち程度の魔力じゃ、消されて終わりよね・・・」
アスタが少し考える。
「ん?・・・それだ!!」
アスタがポケットからマッチを取り出した。
「そうだよ!それだよ!!マッチ程度じゃ無理でも、いけるよ!その案!!」
キャメリアの肩を掴んでアスタが喜んだ。
「そこにいるのかぁ?」
今のアスタの声で敵に気付かれてしまった。
煽るような相手の声に冷や汗を垂らしたものの、アスタが急いで作戦を伝える。
「いいか?チョコがあいつを誘き寄せろ!!その間に俺とキャメリアが畑で準備する!!シャロンはチョコがヤバくなった時の援護を頼む!!」
「わ、わかった!!」
頷いた後、二手に別れて行った。




