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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
到着と
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92/110

水分

ギルド依頼を受けた翌朝一番から、パーティは農家に向かった。

アスタがマッチを擦って枯れ草の山に火をつける。

すぐに燃え上がり、あっという間に全体的に火が回った。

「炎系の魔法なくても大丈夫だったね!」

「マッチって偉大!」

シャロンもキャメリアも焼却炉にちまちまと運ぶ手間が省けたことに喜ぶ。

「この灰ってどうするの?」

「灰なんて土に混ぜちゃえば栄養になるだろ?石灰みたいなもんだよ!」

「そうなの?」とチョコも傾げる。

そして、さらにアスタに聞く。

「これから耕すけど、並んでやったら効率良いかな?」

それには人差し指を立ててチョコを制した。

「それについても考えがある!」

アスタがカバンから取り出したのはモチパペットのモグラだった。


ノーティーエッグズ【モチパペット】

餅のような触感の粘土を成形すると、地上を動き出すノーティーエッグズだよ!

とにかく触り心地良し!

ただし、水に弱くて濡れると溶けちゃうから要注意!


みんなで1匹づつ持ち、畑の前でしゃがみむ。

「せーの!」というアスタの掛け声でモグラを一斉に離す。

すると、モグラたちは4本の線を描き、反対側まで真っ直ぐに向かって行った。

パーティで目を輝かせて拍手をしたのも束の間、対岸に着いたあとはそれぞれに散った。

きれいなうねはできなかった。

「あちゃー!そう簡単にはいかないか!!」

アスタが頭を押さえて残念がる。

「どうせさ、石灰は自分たちで混ぜないといけなかったんだからさ、その時にきれいに整えたらいいよ!」

チョコが慰めていると、キャメリアが声をかけた。

「ねぇ、今のうちに石灰とかくわとか用意しましょ!」

「そうだな!」

みんなで何往復かして運んでいるうちにモグラたちは耕すのが終わっていた。

モグラが耕して柔らかくなった土壌を鍬などの農具で石灰と混ぜ合わせていく。

「フゥ〜!」と一息ついてアスタが体を起こしながら額の汗を手の甲で拭った。

「色々魔法だのノーティエッグズだので省けたのはいいけど」

「途方もない作業ね」

チョコもキャメリアもうんざりしたような口調と表情で言う。

それもそのはず、見渡せばまだ1割程度しかできていない。

それにも関わらずシャロンだけはまじめにせっせと石灰を混ぜている。

そんなシャロンのことは放っておいて3人は休憩に入った。

「僕、お水持って来るよ!喉渇いたでしょ?」

「ありがとう!」

「お願い!」

チョコは水を取りに行ってくれた。

その間、シャロンを見ていたら、石灰の袋をかついで運び、上を破いて混ぜようとしたら転かしてしまい、石灰を大量に土の上に出てしまった。

「わぁ!!」

「あーあー!何やってんだ!!」

「もー!!」

アスタとキャメリアが立ち上がって手伝いに近寄った。

「ごめーん!」とは言ったのも束の間、途端に真顔になり2人を見た。

「てか、みんなシャロンを置いて休憩してたよね?」

「う・・・」

2人はシャロンに「ねぇ?」と問い詰められながら顔を背けていた。


チョコは倉庫に置かれている飲料用の水を水筒に汲んで畑に戻ろうとした時、倉庫の外で男性に声をかけられた。

「チョコレート・リリー」

「え?誰?」

見知らぬ顔に呼び止められて驚く。

フードを被ったその相手は、見た目からしてチョコより少し年上くらいの青年だった。

相手の表情は憎悪の色を隠すことなく、全面に出してこちらをにらんでいる。

思わず身を硬直させ、固唾を呑んだ。

ポケットに突っ込んでいた手を出すと、相手の手にはナイフが持たれていた。

「いっ!?」

「死ね!!」

ナイフを持ったまま突っ込んできたので、慌てて避けると、倉庫の壁にぶっ刺さった。

その間にチョコが逃げる。

「な、何!?あの人!?なんで僕を狙ってるの!?」

ナイフが抜けた男は走ってチョコを追いかける。

「どうしよう!みんなのところに戻る前にどこかでまかないと!!」

そこで足を止めて振り返り、一つ大きく呼吸をした。

その途端にチョコの表情が変わり、鋭い目つきになる。

その場で軽くジャンプをして手を振り準備運動をする。

相手の姿が再び見えた時にはフードを被り、左手に水筒を握りつつ左半身を前に構えた。

「やんのか?」

「君のことまくよりさ、僕が直接叩きのめした方が早いかなって思ったんだ」

相手は気味の悪い笑みを浮かべてチョコの挑発に乗った。

「おらぁぁぁぁあああ!!」

ナイフを突き出したり、振り回してくるが全て避ける。

その内、見極めて水筒で受けた。

ナイフを持つ手首を上から掴み、引き寄せると同時に足を引っ掛けて転かす。

「目的は何?どうして僕を狙うの?」

悔しそうに睨みつける相手に問いかける。

「お前が・・・魔王軍を倒したって噂があるからだよ」

「そんなのただの噂だろ?信憑性もない・・・。それで?僕がもし本当に魔王軍を倒したとして、君に何か不都合でもあるの?」

「あるさ!俺は魔王軍と提携していた組織の一員だ!魔王軍が無くなったからウチの組織も解体されてしまった!!仲間の多くは他の敵対組織に殺されたり、拉致されたりした!!」

「ふーん。バックアップが無ければ簡単に解体されるほどの弱小組織なんだ。そんなの逆恨みもいいところだ」

チョコは自分に迷惑が被ったことへのイラつきからか、辛辣な言葉がけをする。

「うるっせぇ・・・お前に・・・何がわかんだよ!!」

立ち上がってまたチョコに向かうが、簡単にナイフを蹴飛ばされて手元から離れた。

ナイフはそのまま木の高い所に刺さった。

「あ!!」と刺さったナイフを見上げる。

「悪いけど、僕はそう簡単には戦闘じゃ負けないから」

また構え直して攻撃しようと踏み込んだ瞬間、男の様子がおかしくなった。

下を向いてうなり始める。

チョコは身の危険を察知して立ち止まった。

そして、顔を上げフードが外れた時には男の様子が違った。

外形は頭があり、首が見えて人間の形をしているのだが、向こう側が透けて見えている。

ゆらゆらと揺らめく様は水の塊だ。

「み、水人間!?」

「うぉぉぉぉおおおおお!!!」

モンスターのように凶暴な顔つきになり、手も鋭い大きな爪のような形になっている。

さらに周囲に湿り気を帯びて来たと思ったら、チョコの上に水の塊が局所的に集まって来ていた。

目を丸くしていると、一粒落ちたのを境目に、一気に塊が落ちて来た。

「ぅわあああああ!!」

チョコの叫び声は畑にまで響き渡り、3人がその方向を向いていた。

しばらくしてから、3人は動き始めた。

「チョコ!!」

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