枯れ草の山を作る
パーティがギルド依頼のために郊外の農家まで出向いた。
午後から依頼書を探して、それから郊外の農家まで移動したので陽は傾いていた。
「こんにちは!ギルド依頼を受けました!よろしくお願いします!」
アスタが依頼主のおじいさんに挨拶をすると、笑顔で頷いてくれていた。
「君たちみたいな若い子が来てくれて助かるよ!今日は遅いから、説明だけで、明日の朝からお願いするね!」
「わかりました!」
「じゃ、早速こっちへ来てくれるかな」
そう言って家から少し離れた畑に案内された。
「ここが耕して欲しい畑だよ」
その畑は片田舎の小学校の敷地ほどの大きさがあり、思ったより広大だった上に雑草も好き放題に伸びている。
茫然と立ち尽くしていると、おじいさんが畑近くの倉庫を指差す。
「あそこに農具があるから。まずは休耕している間に伸びた雑草を刈ってもらって、その後にここを耕して、土地の栄養補給として石灰粉を混ぜたらそれで依頼終了さ!」
「え?ここを?4人で?」
目を丸くして指差すと、おじいさんは頷いていた。
「あぁ、こんなにも来てくれて助かったよ!体力仕事だからね!それじゃあ、頼むよ!」
そして背を向けて歩き始め、最後に一度振り返る。
「あ、何日かかってもいいからね!」
もうおじいさんは振り返ることはなかった。
それから、3人が真っ先に取った行動は、キャメリアを取り囲むことだった。
「キャメリア様、お願いします!!」
「ステファニア様のお力でこの雑草をなんとかしてくださいませ!!」
「ませ!!」
全員が地べたに座り込み、手を合わせて頭の上に掲げる。
キャメリアは得意気に腕組みをして鼻を鳴らした。
「ふんっ!仕方ないわね〜!見てなさい!!無能共!!」
調子に乗ったキャメリアは犬の張子を手に持ち、ステファニアを召喚した。
堂々たる出立ちのステファニアにみんなで頭を下げる。
「お願いします!!」と声を揃えて言った。
「さぁ、刮目の時間よ!!ステファニア!!この休耕地の雑草を全て片付けなさい!!」
ステファニアが魔力を解放すると、急激に雑草が伸びだした。
「伸びてんじゃねーか!!」
「どんどん茎がたくましくなってく!!」
「ブー!!」とシャロンは舌を鳴らして抗議する。
そんな愚かしい早計ボーイズ&ガールに指を立てて制した。
「まぁ、見てなさい!ステファニアの本領はここからよ!!」
見ていると、伸びきった草たちは次々と枯れていった。
「枯れた!!」
「さっきまで元気だったのに!!」
「なんで!?」
驚くみんなにドヤ顔を決め込んで答える。
「簡単なことよ!一斉に成長させたから土壌の栄養が足りなくなって、栄養失調になって枯れたのよ!!」
それを聞いて男子2人は拍手していたが、シャロンは傾げる。
「でもそれって、せっかく休耕地にした畑の栄養使っちゃってない?」
「・・・あ」
「本当だ」
「今すっからかんなんじゃ・・・?」
しばらく考えていたが、キャメリアが開き直った。
「ま、まぁ!大丈夫よ!頼まれたのは草抜いて耕して石灰混ぜるだけでしょ?休耕地の栄養を使っちゃいけないなんて聞いてないからいいわよ!」
「へぇ〜?いいんだ、そういう依頼書の裏突くみたいなことして?」
「うっ・・・」
アスタに詰められて背中を向ける。
「うそうそ!ま、大丈夫でしょ!石灰混ぜるまでが依頼だし!石灰を土に混ぜるのは栄養補給のためって依頼主も言ってたしよ!」
「何よ、アスタ!!大事なところ覚えてるんじゃない!!それならそんな意地悪く責めなくてもよかったでしょ!?」
キャメリアに怒られたが、アスタはニヤニヤとしながら答えた。
「いやいや、さっきのステファニア使うまでの高飛車な態度のお返ししただけだよ!!」
アスタはキャメリアに追いかけ回されていた。
その間にチョコとシャロンが土地を見渡す。
「これってさ結局草を抜かないといけないはいけないんだよね?明日する?」
「ちっ!ちっ!ちっ!チョコ!シャロンにお任せだよ!!」
すると、チョコから離れて杖を一振りして見せると、シャロンの周囲、直径3m程の枯れ草を一気に浮かせた。
「すごいすごい!シャロン!さすが!!」
チョコが拍手をしながら褒めていると、鼻を高くしたシャロンが調子に乗り始めた。
「ふふんっ!シャロンはすごいんだから!!えい!えい!!」
その辺を駆け回って杖を振り始めると、続々と枯れ草が抜けて中心に集まり始めた。
その際に追いかけっこをするアスタとキャメリアも共に枯れ草の塊に放り込まれることとなった。
「ぶはっ!!」
「シャロン!!」
「ごめん!つい!!」
キャメリアとシャロンの活躍により、枯れ草の山にしてまとめることに成功したのはいいが、自分たちの肩ほどの高さのある山となってしまった。
4人は並んでその枯れ草の山を見ていたが、シャロンはみんなに聞いた。
「ねぇ、この枯れ草どうする?みんなで少しずつ焼却炉まで運ぶの?」
「誰も炎系の魔法なんて持ってないしね」
「あればとっとと燃やせるんだけど・・・」
チョコもキャメリアも途方も無い作業を想像して呟くように言った。
アスタも腕組みして山を見ている。
「うーん・・・ま、明日にしよ!マッチ持ってきたらいいんじゃない?」
「そうだね!そろそろ陽も暮れてきたし!」
「気づいたら薄暗いわね!」
太陽が沈み、空の色が夜への準備を始めていた。
月もほんのりと明るく光っている。
その時、シャロンのお腹が音を立てた。
”ぐぅぅぅーーー”という威勢の良い様にみんな一瞬止まったが、それから盛大に笑った。
「さ、帰ろ帰ろー!」
アスタを先頭にパーティは畑を離れた。
しかし、その背中を覗き見る人物がいた。
「あれがチョコレート・リリー。魔王軍を滅した人物の1人か」
不気味な人物はチョコを睨みつけていたが、チョコはみんなと帰るのに夢中になって気づかなかった。




