規模感の差
柊の買い物も終え、ホテルに2人で戻った。
「きっと兄さんたちが手続きを済ませてくれてるから、受付に行けばいいと思うわ!」
「わかりました!フジさんはお掛けになっててください!私が行って来ますので!」
礼を言ってからフジがロビーのソファーに腰掛ける。
そして、柊が受付に向かった。
「すいません、王林さん、紅玉さん、高嶺さんの付添人の柊とフジさんの分の鍵をお願いします!」
スタッフが柊を見て表情を強張らせた。
「・・・?どうかなさいましたか?」
不思議そうに聞くと、スタッフが慌てて要人名簿の本を捲りだし、柊に見せつけた。
「ああああ、あの!この柊さまでしょうか!?」
「え?あ、はい!いつもお世話になっております!」
笑顔で返すと、スタッフの顔面が蒼白になっていった。
「すぐ、責任者を呼んで参ります!!へ、部屋!そう、部屋もロイヤルルームを用意し直しますので、お待ちくださいませ!!」
「いえ!今日は家族とではなく、友人と来てますので、他の方と同じく扱ってください!!変に思われます!!」
両手を突き出してスタッフを止めるが、相手も引けない。
「そ、そういうわけには・・・」
「本当に大丈夫ですので、お構いなく!!」
そうこうしている内にフジが気にして近づいてきた。
「どうしたの?何か問題があったの?」
「いえ!大丈夫です!ね?」
スタッフを見ると、ぎこちない笑顔を貼り付けて頷いた。
「えぇ、大丈夫です!こちらの鍵をどうぞ!」
そう言ってフジに一本渡すと、もう一本の鍵を改めてカウンター下から取り出し、柊に渡す。
鍵自体の見た目はほとんど変わらない、同じランクのものを渡してくれたのだと感じ、安心して受け取る。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
一礼するスタッフに見送られ、柊は部屋へと向かった。
エレベーターに乗ると、階を確認する。
「4階ね!」
「あれ?私のはもう一つ上ですね・・・」
柊の鍵を見せると515と書かれていた。
4階でフジと別れる。
そして5階に着き、エレベーターから降りて廊下を歩いていく。
その途中にもドアが間隔を開けて配置されて入るが、他の部屋とは違い角部屋として奥に515の扉があった。
用意された部屋の鍵を開けて、中へと入って行った。
部屋の入り口には廊下が伸びており、そこを突き進むと30平米(約15畳)ほどの部屋が2つあり、1つは寝室、1つは客間として広々としていた。
調度品も豪華目な物が多く、ソファーなんて牛革が張られていた。
クッションにも絨毯にも豪華な装飾やデザインが施されている。
そして、客間に入ると目の前に広がる大きな窓。
金の窓枠の上部に掛かっている赤いビロード生地に金の刺繍が入った厳かなカーテンとレースカーテンを開けると、このメリリーシャという街を一望できる。
しかし、そんな景色や調度品やらには目もくれず、柊は30平米の寝室に堂々と鎮座するクイーンサイズのベッドに突っ伏した。
疲労が勝ったから驚かないのではない。
この豪華さに何一つ反応しないのは”いつも泊まる部屋よりも狭く、ランクが低いから”である。
柊的には『これが一般客の部屋か』くらいにしか思っていない。
ちなみに、いつものロイヤルルームというのは、30平米×2部屋なんてものではない。
2階もあるのだ。
さらに50平米の客間は吹き抜けを見上げると、オペラ座の怪人を彷彿とさせるシャンデリアがこちらに向かって垂れ下がっている。
暖炉まである上に、何人で座るんだ?と言いたくなるような長いソファーがコの字に置かれている。
トイレは一般客用の一番ランクの低い部屋より広い。
それらを彩る調度品や絨毯などは各国から集められた最高級ばかり。
そして寝室には一部の選ばれしキーパー以外入ることができないという徹底したセキュリティの堅さ。(寝室とは眠る場所なので、ここに何か仕掛けられたら対処できないため、ロイヤルルームでは暗殺対策として宿泊する国賓とごく限られたキーパーしか入室が許されていない)
さらに、このロイヤルルームはいくら金を積んでも泊まれないのである。
何故なら、”ただの金持ち”ではなく”国賓”をもてなすための部屋だからである。
そこに毎度毎度当然のように宿泊している柊にとって、この旅はやや規模としては小さいものであった。
最後に言わせてもらおう。
柊はボンボンである。




