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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
群像劇
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77/110

柊への期待感

イーストポートのターミナルに到着し、ひいらぎがあの格好のまま船長に交渉してくると言って葵の家族の元を離れた。

「ねぇ、どう思う?柊くん、交渉できると思う?」

高嶺たかねが2人の兄に問いかける。

「さぁ?希望は薄いだろうね」

紅玉はどこを見るでもなく答える。

「ま、交渉成功したらラッキーくらいで思っておけばいいんじゃないか?もし、失敗しても席予約なしで乗ればいいしさ。打ち合わせしづらいけど」

王林の言葉に高嶺も小さく鼻からため息じみた呼吸を吐いた。

「俺は失敗すると思うから、今のうちにチケット買って、並んでおいた方がいい気がするな」

高嶺は前屈みになって頬杖をついて言った。

「・・・一応聞くけど、なんで?」

「そうだ、一応。なんでだよ?母さんはあんなにも仲良くしてただろ?」

紅玉と王林に聞かれて母のフジを思い出す。

ホテルを出る前に一応柊のことは簡単に説明したのだ。


「母さん、この人は柊くんと言って、葵の友達で訳あって身を隠さないといけないみたいなんだ!」

「予定していた船がもう間に合わないんだけど、柊くんのご親戚の経営する船があるから、交渉してくれるみたいなんだよ!」

「それに乗れたら俺たちも間に合うし、一緒にターミナルまで行こうと思うんだけどいいかな?」

息子たちから一通り説明を聞いて、頷く。

「まぁ、そうなの?柊さん、よろしくね!」

「こちらこそ、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします!」

会釈をしていると高嶺に腕を引っ張られた。

「柊くん!急いで着替えて!!」

「は、はい!!」

そしてあの格好をさせられた。

「柊くん!鉢巻もまいて、これも被るんだよ!!」

「はい!」と受け取ったものを付ける。

廊下で待たせていた三兄の母フジの前にあのランウェイ仕様で現れた。

フジは柊をしばらく黙って見ていたが、すぐに笑顔で拍手を送る。

「すごいわ、柊くん!似合ってる!!モデルさんみたい!!」

「ありがとうございます!まぁ、顔見えないんで誰でもいいんですがね・・・」

そんな弱気なことを言う柊の肩を掴んで王林と紅玉が喝を入れる。

「何を言っているんだ!これはある程度の身長、体格あってこそ似合う服なんだ!!」

「そうだ!俺たちの今季の傑作の一つなんだぞ!!当然、町を歩く時はモデルがランウェイを歩くように堂々と胸張って歩くんだぞ!!」

「は、はい・・・」

3人の葵の兄たちに気圧けおされ、そのまま町に繰り出していたのだった。

という、これまでのやりとりを思い出し、三兄は口をつむいでベンチに並んで座っていた。


柊はというと、身分を名乗り、船長に会わせてもらっていた。

「失礼いたします!!柊です!!」

「ひ、柊さん!?その格好は一体どうなさったのですか!?」

かさと顔を隠していた布の鉢巻は外していたものの、ランウェイ仕様の服装に驚きを隠せない。

「こ、これは色々ありまして・・・。それより!私をここまで連れてきてくださった、恩人のご家族がいるのですが、どこか空いている部屋はありませんでしょうか?特等室とか!!」

御曹司の初めて見る格好に驚き、垂れ流した汗をハンカチで拭きながら答える。

「え、えぇ、部屋なら大丈夫ですよ!一等室になら空きがありましたので、ご用意いたします!」

「あと私にも!誰からも見えない場所で一部屋お願いいたします!!今、追われているのです!!」

『この格好と言い、訳ありすぎる!!柊さまに一体何があったんだろう?』

頭の先から爪先まで満遍まんべんなく見渡し、また汗を垂らして頷いた。

「わ、わかりました!VIPルームを用意いたします!!」

特には詮索しない理解ある船長だった。

「あと、着替えさせてください!!」

「は、はい!更衣室をお使いください!!」

更衣室を手で指す船長。

「すいませんが、服も何か・・・」

「予備の制服のパンツとシャツ、好きなだけ使ってください!!」

そう言って予備の制服を納めているロッカーの鍵を渡した。

「恩にきます!!」と一礼して出て行った。

その後、他の船員が船長に聞く。

「船長、あの人本当にウチの会社の御曹司なんですか?変な格好してましたよ?」

「バカ者!!あの方はれっきとしたご子息の柊さまだぞ!!私は一度会ったことあるんだ!あの気品!腰の低さ!礼節!あれは間違いなく柊さまだ!!」

しかし船員も納得しない。

「前もあんな格好を好まれる方だったんですか?まるで奇祭の神事の格好ですよ?それか仮装?あの格好も礼節的にどうなんですか?」

「う〜む・・・たしかに以前はちゃんと着物を召されていたが・・・だが、何かあるんだよ!追われてるとか言ってたし、きっと身分を知ったどこぞの悪人に狙われているのだろう・・・!!」

めちゃくちゃいい船長で、柊の全てを信じてくれた。

本当、ありがたい。

理解ある船長のおかげで柊はその薄すぎた期待感を裏切って、恩人である葵の家族を含めて船での席予約ができた。

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