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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
群像劇
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ある隊員の日記④

考えれば考えるほどできているかもしれない2人。

2人で同じTシャツを着ている日だってあったし、夜中に2人であまり物で夜食を作って食べている姿も目撃されてるし、仕事で外に出た時2人で行動することも頻繁にあるし、てか何でパンツ共有してんの?

割と黒寄りのグレーといった状況である。

いや、漆黒よりの黒か?

しかし、そんな噂にも、腐女子たちによる創作意欲にも終止符が打たれる日が来た。

四天王ができてから2年近く経ったある日、急にうどんが消えた。


その前にかなり大きな依頼をこなした後、うどん率いる機動隊は全体的に疲弊と怪我をしていた。

もちろんうどんも満身創痍なのだが、妖精を腹の中に入れてる分他の隊員より回復に時間は要さなかった。

だが、うどんは何故か負傷した仲間を本拠地に運び込むや否やすぐに出て行った。

それから誰もうどんの姿を見ていない。

数ヶ月の後、”きしめん”という新しい幹部がやって来た。

うどんは筋骨隆々で髪もショートヘアで、男らしく勇ましかったが、垂れ目と福耳が特徴のかわいらしさも兼ね備えていた。

あと、性格は豪快ではあったが、仲間思いで面倒見のいいところに人気があり、見た目は黙っていれば爽やかな好青年っぽさを演出できる雰囲気はあったので、性格が正反対で同じく好青年美男子の葵とで腐女子が湧いていたところはあった。

しかし、新しく来た幹部はどうだ?

筋肉質ではあるのだが、脂肪もしっかりとあり、例えるなら力士や大きさを売りにしているプロレスラーのような体型だ。

そして、頭はスキンヘッド。

持ってる武器も同じで、声も似てるし、垂れ目だし、福耳でもあるのだが、どうしてもうどんと同一人物とは思えない。

みんなが唖然としていると、うどんと葵の寮の部屋に入って行った。


それから魔王軍内では騒然としていた。

「先の戦いでうどんさんが死んだんだ」

「うどんさんが意思を引き継いであのきしめんという人に武器を託されたんだ」

「あの時仲間を運びに一瞬来たうどんさんは実は幽霊で、仲間を運び切ってから安心して旅立ったんだ」

と、実に様々な噂が広がっていた。

「なぁ、聞いたかスーベニア!うどんさんこの前の大きな任務で死んだって!」

「ああ、聞いたよ!」

周りと違いケロっとしている様子に仲間が驚く。

「え!?驚いたり悲しんだりしないのか!?あの魔王軍最強のうどんさんだぞ!?」

「うん。だってこれで葵さまに近寄る不届き者が1人でも消えてラッキーかなって思ってる」

『そういえばこいつ葵さまLOVERだった』と思わざるを得ない反応だ。

こういった反応は実は多く、葵LOVERの大半はそのうどんポジションを狙っていたのだ。

それに、幹部に聞いてみても誰もうどんの行方も安否、むしろ生死さえ知らないという。

葵もさすがに表には出していなかったが、不安そうではあった。

そして一番悲しんでいたのはうどんの部下たち。

「うどんさんは俺らを助けるために命を落とされたんだ!!」

「うぅ・・・うどんさんに会いたい!会ってお礼をたくさん言いたい!!」

めそめそと泣く仲間に「俺生きてるから!!」ときしめんとか言う幹部が言ったそうだ。

しかし、当然のことながら見た目が変わりすぎていて誰も信用しなかったという。


その次の機動隊の任務によって、部下たちに“うどん死亡説”を見事覆くつがえすことにに成功した。

きしめんの火力を目の当たりにした部下たちは思わず拍手するほどに強かったらしい。

うどんを超えるその火力のお陰で、すぐに魔王軍最強の座をきしめんが手にした。

それから、幹部たちもなぜか急にきしめんを”元うどん”と理解したが、機動隊と幹部以外は何一つ納得はしていない。

葵も以前のようにうどんと接する時・・・よりは少し壁を感じるが、だいたい同じように仲良くしている。

だが、しつこく悲しんでいたのは腐女子連中だった。

「好青年同士だったからよかったのに・・・」とのこと。

うどんの写真を飾り、花を添えて悲しんでいるところをきしめんに怒られたこともある。

「だから俺は生きてるって!!」

「きゃぁああ!!」

それからしばらくして、みんなもきしめんに見慣れたころ、また性懲しょうこりもなく一部の腐女子はきしめんと葵にいていたという。

日記の持ち主の女性隊員は少し、悔しかった。

まだ葵に振り向いてもらえないどころか、新しく来た元うどんを語るきしめんとやらにまた奪われて、自分の最大の恋敵が華やかなパルフェみたいな女性でなく、まさかこんな男臭い男になるとは思いもしなかったのだ。

頬を膨らませながら2人の背中を見ていた。


日記の持ち主も時間と共に葵が以前のうどんのようにきしめんに対して接することに慣れてきていた。

葵と時々話すチャンスを見つけては会話をし、他の女性隊員が葵と話していると悶々(もんもん)としていた。

そんな中、きしめんが葵と仲良く話している姿を見ると、それには何も思わないどころか、何なら少しホッとするというか、見守りたいというか、応援したいというか、尊いというか・・・。

『何なのだろう、この感情』と胸を押さえて自分でも思っていた。

そんな2人を見ていたら、背後から肩を叩かれた。

振り返ると、いつもの魔王軍腐女子軍団もとい、読書部のみなさんが笑顔で頷いてくれている。

ちなみに彼女たちは読書部として普通に魔王軍内の部活動で活動していたのだが、ある日部員の1人が「葵さまとうどんさんが2人でいる姿ってなんかかわいいよね!」と言った一言から、同人誌活動が始まったという。

部活動はストレス発散や体力、技術、知力などなどの向上のために認められていて、四天王が管轄しているが、特には顔を見せることも口出ししてくることも無い。

うどん(きしめん)だけは運動部に頻繁に混じっては全力プレーをしていたが、そんなのはこの単細胞幹部のみである。(時々葵も誘われて混じった際には、どこからか観衆が集まり黄色い声援が大きく響くこともある)

そしてこの読書部の管轄はそうめんなのだが、そうめんは葵を一番嫌っているので活動内容は絶対にバレてはいけないのである。

この肩を叩かれた日を境に、この日記の持ち主は読書部に入り、そのページから先は日々葵ときしめんが仲睦なかむつまじくしている様子の妄想日記と化した。


白いプルチネッラは首を大きく傾げてから日記を閉じた。

きっと、この隊員の日記から魔王軍で見つからなかった四天王の情報を得ようと目論もくろんでいたのだろうが、最後の変な展開に思わず首をひねらざるを得なかったのだろう。

日記をポケットに入れてから立ち上がり、どこかへと去って行った。

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