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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
群像劇
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70/110

ある隊員の日記③

グレーな2人の噂は絶えない。

ある時、葵が女性隊員たちに一気に囲まれて困っていた。

すると、遠くからうどんが「葵!」と呼びつける。

「あ、悪い。呼ばれたから行くよ!」と返事をして、そそくさとうどんの元へと行った。

そして、角を曲がってみんなから見えなくなったところで2人でグータッチを軽くする。

「助かったよ、うどん!」

「けっ!羨ましいことで!」

嫌味を言いつつ、2人で寮まで歩いて行く姿を他の隊員たちは見ていた。


さらに別の日のこと。

その日はうどんが武術の授業中にやたらと腰周りを気にしてもぞもぞと腰を動かしたり、手で触ったりしていた。

「どうしたんですか?腰痛いんですか?」

「いや、なんか今日腰回りがキツくて・・・」

訓練生に聞かれて答えていると、その内の1人が笑いながら冗談混じりに聞いてみる。

「もしかして、誰かのとパンツ間違えてるんじゃないですか?うどんさんあんま確かめないでしょ?」

「ばっか!そんなはず・・・あ!!」

道着を引っ張って中を確認すると、本当に違う人のパンツだった。

「え?本当に間違えたの?」

周りも騒然とする中、うどんは口元に手を当てて目を丸くしている。

「またやっちゃったよ!!おい!さっき教えた動きを反復練習しろ!すぐ戻る!!」

それだけ言い残すと走ってどこかへ行った。

「なぁ、“また”って言ったよな?」

1人が聞いた言葉にみんな頷いていた。

うどんが向かったのは葵が剣術指南をしている道場。

そこでは葵までも何やら腰回りを気にして触ったりしていた。

「葵!ちょっと来い!」

「はぁ?見たらわかるだろ?今、剣術の授業中なんだよ!」

不機嫌そうに答えるが、手が腰を触っている。

それを見て指差す。

「おい、わかってんだろ?」

指されて葵も腰に視線を落とし、うどんと同じように目を丸くして口元に手を当てた。

「・・・まさかまた!?」

「その通りだ。今のままじゃ、お互いベストパフォーマンスなんて出せない。そうだろ?」

振り返って訓練生たちに指導する。

「みんな!さっきの動きを反復練習で!すぐ戻る!!」

2人は走って自室に帰り、パンツを脱いで交換した。

「これ何回目だよ?」

「こっちのセリフだ!いい加減、確認してから履けよ!!」

葵がイラついた顔でパンツを渡す。

それを唇をとんがらせて奪うように受け取る。

「お前だって、わかりやすいように名前デカく書けよ!!」

「知ってるだろ!?俺のは名前書いたのから盗まれてくんだよ!!」

そう、葵ファンは男女問わずパンツを盗んで行く輩がいるので、名前を書くことを諦めたそうだ。

「へいへい、大層おモテでよぅござんすね」

嫌味ったらしく言いながら履いていると、何かに気づいて考える。

「あれ?葵のパンツを俺も履いてるから、俺のパンツも盗まれてるってことか?」

「うどんは勝手に俺のを履いてるだけだろ!それは俺のパンツであって、うどんのパンツは一枚たりとも盗まれてない!!」

葵は体操着のズボンを履きながら顔を赤くして怒っていた。

「それにしても葵のパンツちょっと小さいよな。俺のパンツ葵にはちょっとデカいだろ?」

「え?・・・まぁ、そうだな」

すると、うどんが嫌味ったらしく笑った。

「やーい、チキンレッグ!!」(※チキンレッグとは、上半身ばかり鍛えて下半身の筋肉が細い人のことを鶏の足に例えて揶揄やゆした言葉。主に男性がよくなる現象。デカくなる肩や胸、腕周りばかり鏡で見ては惚れ惚れして満足するので足トレが遠のき、次第に苦手となるのだが、女性は美脚やら美尻を目指すので下半身は意外とやるのだ。)

「な!!」

しかし葵も言い返せなかった。

後日、スクワットにレッグプレス、レッグカール、レッグエクステンション、ランジ、ブルガリアンスクワットなどなど、足トレに励む葵が多々目撃されたという。

10回で限界を迎える重量で×3セット行う、筋肥大をメインにしたメニューを組んで、極力有酸素運動は避ける。

果たして隠密部隊に高身長ゴリラは向いてるのだろうかと言う疑問は横に置いておく。

今回、パンツを無事に履き替えた2人は、外へ出て再び道場に向かった。

「もう二度と間違えんなよ!!」

「まあまあ!ちゃんと気づいて戻したんだからいいだろ?」

うどんは反省しているのか、していないのかわからないくらい飄々(ひょうひょう)としていた。

そして恒例のグータッチ。

それからお互いに別れて行ったが、噂は根深くなる一方であった。


だがしかし、こんな2人の仲にも終止符が打たれる日が来ようとは、誰も夢にも思わなかったはずだ。

あの日のことは、魔王軍全体にかなり大きな衝撃と悲しみに包まれた日となった。

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