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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
群像劇
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ある隊員の日記①

あるところに、魔王軍本拠地が破壊された後、どういう経緯か隊員の日記が落ちていた。

きっとこの隊員は魔王軍消滅時に運命を共にしたことだろう。

その時、誰かが拾って中身をめくった。

拾ったのは謎多き人物、白いプルチネッラ。

日記の中を読むと、持ち主は女性で、葵より少し年下だった。

この女性隊員は葵のことを思っていたらしい。

自らがんばって近寄るが、なかなか振り向いてもらえないもどかしい日々がつづられていた。


毎日、葵のことを遠目から見る女性隊員。

葵の凛々しい表情などに目をとろけさせる。

それから、勇気を出して葵に近寄った。

「あの、葵さま!」

「ん?なんだ?」

葵が振り向くとつい、心臓が止まりそうなくらい大きく一度高鳴る。

顔が熱くなり、頬も紅潮する。

「か、幹部候補生になられたそうで!!おめでとうございます!!」

そう伝えると、優しく微笑み返してくれた。

「ありがとう!幹部になれるようにがんばるよ!」

それから、さらにもう一歩勇気を出した。

「あ、あの!幹部になられた際は・・・あ、葵さまの元で配属されたいです!!そのためにも私、訓練をがんばります!!」

「嬉しいよ!俺も期待に応えられるよう、共にがんばろう!」

葵は言い終えた後、背を向けて歩を進めて行った。

まさに夢見心地の気分である。

特に、憧れの葵が近くで微笑み、会話ができただけでなく、「共にがんばろう!」と励ましてくれた。

これはもう脈ありでしょ。(気が早い)

一部のうどん信者の男性隊員からは「断然うどんさんだよな!」「葵さまよりうどんさんの部下になりたい!」なんてことを言う輩もいると聞くが笑止千万!愚か者共め!

大半の女性隊員は葵の部下を狙っているのだ。

中にはカモフラージュのため「そうめんさまが良い〜」とか「パルフェさまよね〜」なんて言う者もいるが、しっかりとチャンスあらば葵に話しかけている姿を見る。

敵は多いのだ。

葵との会話を脳内で反芻はんすうするように繰り返していると、つい、廊下に突っ立ったままほうけてしまっていた。

その先では葵は数歩歩いては同じようなことを男女問わず言われまくっていたので、コピペのように同じ回答をする。

もしかしたらこの女性隊員の脳内の葵の声は現在進行形の声かもしれない。

さらに、そうすることで自分と同じように廊下に突っ立ったままの者であふれ返っていた。

こんなギャグ漫画なのか、恋愛漫画なのか、もはやわからない展開を作れるのは葵の美貌あればこそなのだろう。


ある日のこと、全体集会が行われた。

まだ今狙っている大陸での魔王軍は育成途中で、幹部がいない状態だ。

なので、他の大陸の魔王軍から派遣してもらい、こちらの軍の育成や教育、まとめ役を行ってもらっている。

今日のまとめ役の方はかなり筋骨隆々な体育会系の方だ。

「じゃあ、次の文章を、うどん!お前が読め!!」

「はい!!」と勢いよく返事して立ち上がる。

しかし漢字に自信の無いうどん。

周りのリーダーや年上たちは、武術にけていて、幹部候補生にまで最速でなったうどんをうとましく思っている連中がニヤニヤと失敗を今か今かと待っている。

この教官は厳しい方で、漢字の読み間違いをすると竹刀でみんなの前で叩かれるのだ。

強くて男の憧れとも言えるうどんにも当然ファンはいる。

みんなの前で叩かれでもしたら、それこそ恥は他の者より計り知れないものになる。

うどんが立ち上がり、資料を持ち上げて大きな声で読み上げる。

「我が魔王軍は、それぞれ隊員の個性に合わせた能力を・・・」

早速読めない字がきた。

眉間にシワを寄せて首を少し傾げる。

”育む”という言葉に『いくむ?』と迷う。

「なんだ、聞こえないぞ?それとも、読めないというのか?」

睨まれ、冷や汗を垂らす。

「まさか、本当に読めないのか?教育部と連携して習った漢字だけを入れてるんだが・・・?」

わざと間を置いて威圧する。

冷や汗の量が増えた。

見かねた葵が背後から小声で「はぐくむ」と伝えた。

はぐくむよう、授業の選択肢を与えている!」

その後も「謙虚」や「豪放磊落ごうほうらいらく」など都度、葵が後ろから教えていた。

座ってから振り向き、脇腹付近から拳を突き出して葵と軽くグータッチしていた。

それを何人もの隊員が見ていたという。

「やっぱあいつら仲良いよな」の噂はもちろん広がった。


またある日のこと、剣術の教官として葵が指導をいつもしているのだが、時々武術の教官補佐としてうどんの武術の授業に参加することもあった。

男女混合で武術の授業を行うので、葵と接するチャンスなのだ。

しかし、大体は女子は女子、男子は男子で組むし、見本や稽古相手に葵もうどんも男子を選ぶ。

仕方ないと言えば仕方ないのだが、腑に落ちない。

「じゃあ、さっき見本を見せた寝技の練習だ!やってみろ!」

一斉に「はい!」と返事をする。

「スーベニア、よろしくな!」

「は、はい!」

葵は1人余っていたスーベニアと組むこととなった。

「スーベニアはまだまだ寝技は始めたてだったよな?」

「は、はい!!お手柔らかに・・・お願いします!!」

緊張しすぎるスーベニアに笑って見せる。

この授業では下で寝転ぶ相手に両足を絡めて、脇の下と首に腕を回して固める縦四方固たてしほうがためを行う予定だ。

本来ならば訓練始めたてや、武術の苦手な者が受ける基礎の技なのだが、教官に葵がいるのを知った他隊員たちが集まってかなり大勢の授業となってしまった。

少数派としてうどんファンがいるが、全体的には葵をチラチラと盗み見る者が多いので、葵ファンの圧勝である。

が、当の本人は気付いていない様子。

それも仕方がない。

視線が多すぎて一つひとつが全く気にならないのだ。

スーベニアが葵の上にまたがり、足を絡める。

「そうだ!足首でしっかりと相手の足を固定するんだ!」

「は・・・はい!!」

一幕一章25・26話に出て来たスーベニアであるが、お忘れかもしれないが葵さまLOVERなのである。

寝そべる葵に跨る時点でいっぱいいっぱいのスーベニアは足を絡めて腰が密着した時点で大量の鼻血を出した。

「大丈夫か!?」と言う危機迫った葵の声に反応して普段仲の悪いうどんさえも駆け寄る。

「大丈夫か!?うわ!血塗ちまみれじゃねーか!!」

うどんは他の隊員に命令する。

「すぐに医務室に連れてけ!!」

「邪魔しないでください!!」

さっきまで気絶していたくせに、勢いよく顔を上げて威嚇するスーベニア。

「邪魔って・・・その出血量ダメだろ・・・」

「いえ、いけますので!!」

「無理するな」と心配した葵も声をかけるが、それにも毅然きぜんと対応する。

「いけます!!邪魔しないでください!!」

「邪魔って・・・」

その後、首と脇の下に腕を回して固めるのだが、スーベニアは葵の胸に顔を押し付けて抱きつき、さらに贅沢なことに葵吸いまでしていたのだ。

葵は胸の上で頻繁に鼻血をすすりながら深呼吸をし続けるスーベニアに、手を挙げてうどんを呼んだ。

「なんか体格差があったみたい!全然肩まで届いてません!」

「よし、交代だ!スーベニア!!」

うどんと交代した途端にちゃんとできるスーベニア。

「できんじゃねーか!俺と葵は同じ体格だぞ!!」

「・・・けっ!」とそっぽ向いてねていた。

これにより、スーベニアは葵LOVERたちと対立を深めるのだが、こういう男子はスーベニアに限ったことではない。

時々、葵LOVERは男女問わず葵本人の知らないところで対立していた。


葵が幹部に昇進した時のこと。

新幹部は”四天王”と名付けられた。

それから編成が始まるのだが、その時も大変なトラブルが発生し、多くの女子が葵に詰め寄ったことがあった。

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