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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
群像劇
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67/110

まあまあな真実

選手用出入り口からついに姿を現したブラックサレナ。

フードで顔が見えなかったが、ついに手をかけて脱ぐ。

その下にあった顔はチョコ・・・ではなく、大使館のロマだった。

「え!?別人!?」

勢いでシャッターを切ったものの、思わず顔を上げた。

そして、ロザの一族と共に観戦していた少年の1人に、チョコレート・リリーが混じっている。

「あれ!?こっちにチョコレート・リリーがいるぞ!?どういうことだ?ブラックサレナは別人がやってるってことか?」


その後、何度かシャッターを切り、出版社の暗室で現像し、再度確認するがやはりどう見てもチョコレート・リリーは観客側に混じり、ブラックサレナの衣装を身にまとうのは別人。

「お!それ今日撮ったのか?ブラックサレナが何大会目かぶりに出ていたもんな!」

「それがさ・・・これ、見てくれよ」

渡された写真を見て記者仲間が驚く。

「あ、あれ!?ブラックサレナの正体、別人じゃねーか!?」

「そうなんだよ。それと、その近くの少年たちを見てみろよ」

そう言われて近くに映る少年たちを見る。

「え!?ここにチョコレート・リリーがいる!?」

「そうなんだよ・・・せっかくここまで張ってたのに意味無ぇじゃねえか・・・」

頭を抱える同僚にあごに手を当てて考える。

「もうこのまま出すしかないんじゃないか?」

「え?このままって?」

呆気あっけに取られた顔で見てくるのに対して返す。

「ほんと、このままだよ。ブラックサレナ2号としてこの少年を祭り上げるんだ!それで、チョコレート・リリーは引退したことにすればいい!」

「えぇ・・・そんなの、読者は食いつくかな?あくまでこのチョコレート・リリーがブラックサレナだって真実をみんなが見たがっているんだぞ?第一、引退理由は何だよ?」

「そんなもん、勇者たちと旅に出たからだろ?いつまた旅に出るかわからないからブラックサレナを譲ったことにすればいいだろ!!」

記者の男は腕を組んで下唇を噛み、悩んだ。

「う〜ん・・・」

「それか、魔王討伐はそもそも別人だった・・・とか?生まれ育ったあすなろ荘を潰されてショックのあまり引退したチョコレート・リリーの敵討ちで友人の彼がブラックサレナを引き継いだ!かなりいいストーリーじゃないか?」

仲間の提案にまだ首をひねる。

「でもよ、締め切りやばいんだろ?」

「そうなんだよなぁ〜・・・」

それから大きなため息を吐いて頭を抱えた。


後日、”ブラックサレナの正体!!”と大きな見出しで週刊誌に取り上げられていた。

「チョコ!週刊誌出てたよ!!」

ロザの一族の館にロマと訪れた時にメアが雑誌を見せてくれた。

「どれどれ?」とロマが真っ先に見る。

「ここ最近、メリリーシャで噂になっていた復活したブラックサレナの正体に迫った!以前はチョコレート・リリーという児童養護施設あすなろ荘出身の少年であったが、なんと、昨今のブラックサレナは別人だった!!」

そして大きく写真が掲載されていたが、それは紛れもなくロマだった。

「くぅ〜〜〜!!」と嬉しそうに足をバタつかせる。

「僕、あのブラックサレナになったよ!!」

嬉しそうに大きな声で指差して言うロマ。

「嬉しそうだね、ロマ!」

「よかったね、雑誌に掲載されて!」

メアもチョコも苦笑いして見ていた。

「でもさでもさ!そのハンテンボクってノーティーエッグズ!すごいね!!見た目を丸々入れ替えちゃうんだもん!!」

イヴの言葉に得意気にハンテンボクを見せつける。


ノーティーエッグズ【ハンテンボク】

スタイリッシュなまつぼっくりみたいなノーティーエッグズの花弁を一つ取って真ん中あたりを押すと、本体を持っている人と見た目を入れ替えることができるよ!

花弁の数だけ入れ替われるから、みんなでシェアして同じ人に化けることもできるよ!!

複数人が1人に化ける時は、本体を持ってる人の見た目は変わらないから要注意!


「当たり前さ!このノーティーエッグズでアスタなんか魔王軍をあざむいて島を出て来たんだって!!」

「すごーい!!」とみんなが感心する中、一際ひときわ反応していたのはやはり弟子のイヴ。

チョコはコロシアムの当日、ロマとこのハンテンボクで見た目を入れ替え、衣装はいつものブラックサレナのままで参戦したのだった。

そして、コロシアム終わりにわざとフードを脱いだ姿を記者の前に見せる。

そうすることで、”歴戦のパーティと共に魔王を討伐した”という変な噂の立った状態のブラックサレナは別人であったことになるはずと見込んでのことだった。

「雑誌にも“魔王討伐のパーティに参加したとされるブラックサレナはチョコレート・リリーではなく、別の人の2号なのかもしれない”ってちゃんと書いてるね!!」

「周りの人のことも触れられてなくて良かったね!特にビストートのこととか!!」

「これでしばらくは安心して暮らせるね!」

スプライとピンピに笑顔でうなずき返す。

「うん!これで大使館にも迷惑をかけずに済んで一安心だよ!」

チョコはとりあえずトラブルを回避することができた。


・・・そう思っていたのだが、雑誌販売から数日後のこと。

雑誌の出版会社には大量の手紙や脅迫電話がかかって来ていた。

捏造ねつぞう写真だって!?」

「ブラックサレナ2号がいるはずない!?」

鳴り止まない電話、大量の抗議の手紙、極め付けは会社の窓に石を投げて割られた。

まあまあな事実を書いたというのにこの始末。

その後、すぐにこの雑誌は販売停止、自主回収までのさわぎとなった。

そして当の噂はというと、相変わらず“ブラックサレナはチョコであり、歴戦のパーティと共にかたきである魔王軍を崩壊させ、この街に再び戻って来た”が相変わらず有力視されている。

所詮しょせんはエンタメ感の強い週刊雑誌。

どれだけ真実に迫ろうとも公衆トイレの落書き程度にしか受け取られないのである。

ロマが悔しそうに腕組みをして膨れていた。

「もうコロシアム出るなよ!!」

「・・・はい」

チョコはマタリに強めに怒られたという。

世の中そう甘くないのだ、少年たちよ。

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